巴工業、25年10月期も増収増益・増配予想、機械製造販売事業の大幅伸長が牽引
2024年12月23日 12:16
巴工業<6309>(東証プライム)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開している。成長戦略として海外事業拡大、収益性向上、SDGsや脱炭素、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率改善、持続的成長に資する投資などに取り組んでいる。24年10月期は大幅増益で過去最高だった。そして25年10月期も増収増益・増配予想としている。化学工業製品販売事業が販管費増加で微減益だが、機械製造販売事業の大幅伸長が牽引する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は反発力の鈍い形だが、低PERや高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開
遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。22年4月には欧州市場における各種化学工業製品の卸売を展開する100%子会社としてTOMOE Advanced Materils s.r.o.を設立した。24年9月にはインド駐在員事務所を開設した。一方で、事業ポートフォリオ見直しとして24年2月に巴ワイン・アンド・スピリッツ(TWS社)の全株式を売却した。
24年10月期セグメント別業績は、機械製造販売事業の売上高が130億04百万円で営業利益が11億87百万円、化学工業製品販売事業の売上高が391億15百万円で営業利益が35億16百万円だった。
機械製造販売事業の売上高の内訳は、分野別には官需が45億15百万円、民需が36億26百万円、海外が48億62百万円、製品別には機械が29億22百万円、装置・工事が15億77百万円、部品・修理が85億04百万円だった。化学工業製品販売事業の製品別売上高は合成樹脂関連が45億23百万円、工業材料関連が65億92百万円、鉱産関連が63億29百万円、化成品関連が96億33百万円、機能材料関連が72億04百万円、電子材料関連が46億79百万円、その他(洋酒)が1億51百万円だった。
収益面の特性として、機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。
なお24年3月には、三菱化工機<6331>とのJVで沖縄県名護市より、し尿受入施設整備事業建設工事(契約金額12億89百万円、工期23年12月~25年12月)を受注した。24年10月には神奈川県綾瀬市に固定資産(工場用地)を取得すると発表した。遠心分離機の板金溶接加工を行う巴マシナリーを移転予定(竣工予定27年3月)で、総投資額は約22億円の見込みとしている。
■中期経営計画最終年度目標を上方修正
持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、23年12月に資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針を決議するとともに、中期経営計画の最終年度業績目標値の上方修正、配当方針の変更と配当予想の上方修正、および株主優待制度の変更を発表した。
中期経営計画「For Sustainable Future ~持続可能な未来のために~」で掲げた最終年度25年10月期の目標値を、初年度23年10月期にほぼ達成したため、上方修正した新たな目標値に25年10月期売上高540億円(機械事業150億円、化学品事業390億円)、経常利益44億円、当期純利益31億円、ROE8.0%を掲げ、PBR1倍の達成を目指すとした。さらに、この計画を24年10月期に前倒し達成したため、最終年度25年10月期の計画は売上高が570億円、営業利益49億60百万円、経常利益50億円、当期純利益36億20百万円に引き上げた。
現行の中期経営計画で取り組んでいる重点施策(機械事業での生産改革推進による採算性向上、海外事業の拡大、再生エネルギー分野への展開など、化学品事業での海外事業の拡大、新たなサプライヤーの発掘、パワー半導体分野への商材提供など、全社ベースでのDX推進、資本効率の改善、持続的成長に資する分野への投資・経営資源投入など)に加えて、新たな重点施策(成長戦略)として、化学品事業ではEV用等で世界的需要が拡大しているパワーデバイス市場での商権確立、ライフサイエンス分野等の新規事業立ち上げ、機械事業では海外展開の拡大(東南アジア全体のネットワーク化)、第2の柱とすべくバイナリー発電装置の販売、第3の柱となる海外製品の探索・販売権確保などを推進する。
株主還元は、新たな配当方針として「配当性向40%以上を目標として安定的な配当を実施」を打ち出した。株主優待制度は、対象株主を「継続して1年以上保有する株主」に変更するとともに、優待区分を保有株式「100株以上300株未満」および「300株以上」とした。
またIR活動の強化については、23年11月にIR・SR活動を担うIR推進PT(プロジェクトチーム)を設置し、取り組みを強化するための体制を整備した。そして24年4月には経営企画部内にIR・企画課を新設した。
サステナビリティ経営に関しては、22年4月に、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、主力のサガミ工場(神奈川県大和市)で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えている。
■24年10月期大幅増益・大幅増配、25年10月期も増収増益・増配予想
24年10月期連結業績は売上高が23年10月期比5.0%増の521億19百万円、営業利益が16.2%増の47億03百万円、経常利益が16.0%増の47億75百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が32.3%増の36億16百万円だった。大幅増益で過去最高だった。機械製造販売事業、化学工業製品販売事業とも順調だった。配当(6月7日付で第2四半期末3円、期末3円、合計6円上方修正、12月11日付で期末19円上方修正)は、23年10月期比35円増配の145円(第2四半期末63円、期末82円)とした。大幅増配で配当性向は40.0%となる。
機械製造販売事業は売上高が横ばいの130億04百万円、営業利益が43.1%増の11億87百万円だった。売上高の内訳は需要先別には官需が1.5%減の45億15百万円、民需が23.7%増の36億26百万円、海外が12.0%減の48億62百万円で、製品別には機械が33.8%減の29億22百万円、装置・工事が36.9%増の15億77百万円、部品・修理が13.7%増の85億04百万円だった。大幅増益だった。収益性の高い部品・修理が伸長し、海外案件について前期からの繰越案件があったことも寄与した。
化学工業製品販売事業は、売上高が6.9%増の391億815百万円、営業利益が9.2%増の35億16百万円だった。製品別売上高は、合成樹脂関連が全般的な伸び悩みで14.6%減の45億23百万円、工業材料関連が建材・耐火物用途材料の好調で14.9%増の65億92百万円、鉱産関連が自動車・電子デバイス用途材料の好調で12.4%増の63億29百万円、化成品関連がコーティング用途材料の好調で12.4%増の96億33百万円、機能材料関連がパワー半導体をはじめとした半導体製造用途材料の好調で16.4%増の72億04百万円、電子材料関連が半導体組立用途材料の伸び悩みで4.7%減の46億79百万円だった。その他の洋酒が38.6%減の1億51百万円だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が121億38百万円で営業利益が11億20百万円、第2四半期は売上高が144億42百万円で営業利益が18億38百万円、第3四半期は売上高が132億20百万円で営業利益が9億11百万円、第4四半期は売上高が123億19百万円で営業利益が8億34百万円だった。
25年10月期の連結業績予想は売上高が23年10月期比9.4%増の570億円、営業利益が5.5%増の49億60百万円、経常利益が4.7%増の50億円、親会社株主帰属当期純利益が0.1%増の36億20百万円としている。増収増益で連続過去最高の見込みである。配当予想は24年10月期比1円増配の146円(第2四半期末73円、期末73円)としている。予想配当性向は40.2%となる。
セグメント別計画は、機械製造販売事業の売上高が20.0%増の156億円、売上総利益が19.8%増の57億50百万円、営業利益が23.8%増の14億70百万円で、化学工業製品販売事業の売上高が5.8%増の414億円、売上総利益が5.6%増の91億80百万円、営業利益が0.7%減の34億90百万円としている。
機械製造販売事業の売上高の内訳は、需要先別には官需が13億円増の58億15百万円、民需が10億22百万円増の46億48百万円、海外が2億74百万円増の51億36百万円で、製品別には機械が16億98百万円増の46億20百万円、装置・工事が9億16百万円増の24億93百万円、部品・修理が19百万円減の84億85百万円としている。
化学工業製品販売事業の製品別売上高は、合成樹脂関連が星際グループ解散の影響で102億円減の44億21百万円、工業材料関連が首都圏再開発案件等のコンクリート混和剤の好調で73百万円増の66億65百万円、鉱産関連が樹脂向け添加剤の好調で11億52百万円増の74億81百万円、化成品関連が前期に新規獲得した商権の寄与やコーティング用途材料の好調で3億42百万円増の99億75百万円、機能材料関連が自動車向け材料や半導体向けセラミック材料の好調で4億74百万円増の76億78百万円、電子材料関連が半導体組立用途材料の拡販で4億10百万円増の50億89百万円としている。
化学工業製品販売事業が販管費増加で微減益だが、機械製造販売事業の大幅伸長が牽引する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度(24年10月末より変更)はワインを贈呈
株主優待制度(23年12月14日付で変更を発表、詳細は会社HP参照)は、毎年10月末日時点で100株以上を継続して1年以上保有する株主を対象として、ワインを贈呈(当社関連会社取扱商品、100株以上300株未満保有株主に対してワイン1本、300株以上保有株主に対してワイン2本)を贈呈する。なお24年10月末日の基準日より実施するが、株主の不利益を軽減するため、24年10月末日の基準日に限り、100株以上を継続して6カ月以上保有する株主を対象として実施した。
■株価は調整一巡
株価は反発力の鈍い形だが、低PERや高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。12月20日の終値は3795円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS362円79銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の146円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3943円70銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約400億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)