マーケットエンタープライズ、株主優待拡充で株価急反発、25年6月期は大幅増収増益予想で業績も好調

2024年12月23日 12:14

 マーケットエンタープライズ<3135>(東証プライム)は、持続可能な社会を実現する最適化商社を目指して、ネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開している。中期経営計画では、個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。なお12月19日に株主優待制度拡充を発表した。25年6月期は大幅増収・大幅増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は安値圏でモミ合う形だったが、株主優待制度拡充の発表を好感して急反発している。出直りを期待したい。

■持続可能な社会を実現する最適化商社

 持続可能な社会を実現する最適化商社を目指し、ITとリアルを融合させたリユース事業を中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。

 24年6月期セグメント別(調整前)売上構成比はネット型リユース事業58%、メディア事業3%、モバイル通信事業39%、営業利益構成比はネット型リユース事業41%、メディア事業25%、モバイル通信事業34%だった。

 なお、大株主だったYJ1号投資事業組合から信託期間満了により保有株式売却の意向が寄せられたことに伴い、市場売却による株価形成への影響を避けるため、22年9月14日付でSBI証券と差金決済型自社株価先渡取引に係る契約を締結した。そして22年9月15日付の立会外終値取引(ToSTNeT―2)によって、YJ1号投資事業組合が保有していた同社株式40万株をSBI証券が取得した。会計上の取り扱いとしては、各四半期末時点で時価評価を実施し、前四半期末との差額を営業外収益または費用に計上する。そして24年9月には、差金決済型自社株価先渡取引の先渡期間延長および先渡価格変更を発表した。

■「高く売れるドットコム」と「おいくら」

 ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンターにおける買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。

 また「高く売れるドットコム」と日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」(19年2月に事業譲受)のシステム連携・送客も強化している。24年6月には出張買取専門サービス「買いクル」などを展開するRCが「おいくら」と業務提携した。リユースセンターについては23年9月に広島リユースセンター、大阪リユースセンター東住吉店(大阪府内としては吹田市に続く2拠点目)を開設し、全国16拠点となった。

 24年3月には「Yahoo!オークション Best Store Awards 2023」において、家電部門、PC・スマホ部門、楽器・器材部門の3部門で部門賞1位を受賞し、約2万ストアの中から総合賞4位に選出された。

 地域社会における課題解決を目的として地方自治体との取り組みを推進しており、リユースプラットフォーム「おいくら」を導入した自治体の不用品リユース事業は、24年10月に福岡県行橋市、鹿児島県志布志市、徳島県阿波市、滋賀県長浜市、新潟県小千谷市、福岡県福津市、山形県米沢市、岩手県八幡平市、愛媛県東温市、高知県香美市、千葉県習志野市、沖縄県うるま市、24年11月に福岡県うきは市、大阪府阪南市、愛知県高浜市、徳島県鳴門市、岡山県井原市、愛知県小牧市、佐賀県嬉野市、埼玉県吉川市、愛媛県伊予郡松前町、茨城県日立市、24年12月に東京都稲城市、京都府亀岡市、大阪府枚方市、東京都杉並区、埼玉県日高市で導入され、導入自治体数は全国で209となった。

 また24年10月には静岡県に位置する磐田市、袋井市らと6者間連携のリユース事業協定を締結した。24年12月には成田国際空港と、空港内で発生する不用品のリユースに関して業務提携した。

■中古農機具

 中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材の取り扱いを拡大している。子会社MEトレーディングは20年5月に中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。

 21年10月にマシナリー(中古農機具)ビジネス加速に向けて北関東リユースセンター(茨城県結城市)を開設、21年11月に北関東リユースセンターから中古農機具のEU向け輸出を開始し、中古農機具の取扱量拡大・EUへの輸出強化、拠点での対面販売による新規就農者支援などを推進している。22年4月にはファーマリーが展開する中古農機具の買取・販売事業を譲り受けた。

 なお販売商流の多様化を目指し、カーチスホールディングス<7602>のグループ会社で中古車輸出のアガスタと業務提携した。そして22年12月には、海外向け中古車販売サイト「PicknBuy24.com」を通じて、アフリカへの販路開拓を目的とした中古農機具のテスト販売を開始した。

 23年3月には就農者支援と新規就農促進を目的として中古農機具を用いたリユース連携を開始した。第1弾として福島市と連携した。中古農機具市場の活性化を促進することで、農業の観点からも持続可能な社会形成を目指すとしている。24年6月にはバリュークリエーション<9238>と業務提携した。バリュークリエーションが運営する解体工事プラットフォーム「解体の窓口」を通じて中古農機の仕入を強化する。

■メディア事業とモバイル通信事業

 メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。

 モバイル通信関連のメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノ売却・処分関連のメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノ修理関連のメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」、農業に特化した「農業とつながる情報メディアUMM」などを運営している。

 なお「中古農機市場UMM」は、20年4月設立した子会社UMMが、20年5月国内最大級のインターネット中古農機具売買事業「JUM全国中古農機市場」を譲り受け、20年6月に名称を「中古農機市場UMM」に変更した。

 モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を公表(21年12月24日付で提出、24年3月18日付で更新)した。中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

 24年9月30日には24年年6月末時点での計画進捗状況を公表した。流通株式時価総額については基準を充たしていないため、引き続き、中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

 24年12月には日興アイ・アールの「2024年度全上場企業ホームページ充実度ランキング」において総合部門「優秀サイト」に選出された。同ランキングにおいて19年から6年連続でランク入りしている。

 なお中期経営計画については23年8月14日付で新3カ年中期経営計画(24年6月期~26年6月期)を公表し、目標値に26年6月期売上高300億円、営業利益20億円を掲げている。主に個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。

■25年6月期大幅増益予想

 25年6月期の連結業績予想は、売上高が24年6月期比21.0%増の230億円、営業利益が134.3%増の7億円、経常利益が6億50百万円(24年6月期は40百万円)、親会社株主帰属当期純利益が3億30百万円(同4億76百万円の損失)としている。なおデリバティブ評価損益については算定困難なため見込んでいない。

 第1四半期は売上高が前年同期比比33.7%増の54億92百万円、営業利益が69百万円(前年同期は1億54百万円の損失)、経常利益が25百万円(同2億63百万円の損失)、親会社株主帰属四半期純利益が48百万円の損失(同3億25百万円の損失)だった。

 ネット型リユースとモバイル通信の拡大が牽引して大幅増収となり、一時費用の発生などを吸収して営業利益と経常利益は黒字転換、純利益は損失縮小した。なお営業外ではデリバティブ評価損(SBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約に基づくデリバティブ評価損益)が73百万円減少(前期は評価損1億04百万円、当期は評価損31百万円)した。

 営業利益+2億23百万円の増減分析は、増益要因として増収要因で+5億13百万円、生産性向上による販管費比率改善で+2億28百万円、前期の拠点開設・移転関連一時費用解消で+78百万円、減益要因として本社移転関連一時費用で▲68百万円、粗利益率低下で▲56百万円、売上増に伴う販管費増加で▲4億72百万円だった。

 ネット型リユース事業は、売上高が16.6%増の28億05百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が19.8倍の2億04百万円だった。売上高の内訳は個人向けリユースが26.7%増の21億88百万円、マシナリー(農機具)が10.5%減の5億70百万円、おいくらが11.8%増の46百万だった。マシナリーは海上運賃急騰に伴う買い控えの影響で一時的に減収となったが、個人向けリユースが大幅伸長し、おいくらも順調だった。

 メディア事業は、売上高が21.3%減の1億38百万円、利益が11.0%減の72百万円だった。Google社が実施した検索エンジンにおけるコアアルゴリズム変更の影響が継続して減収減益だった。

 モバイル通信事業は売上高が67.0%増の25億78百万円、利益が95.5%増の1億25百万円だった。新規回線獲得が順調だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。販管費における拠点開設・移転費用1億07百万円や、特別損失における減損損失1億90百万円の発生を見込むが、生産性向上施策の進捗と24年4月以降の増員効果などにより大幅増収増益予想としている。第1四半期が順調であり、通期ベースでも積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度を拡充

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、24年6月末対象から新設し、毎年6月末時点で100株以上保有株主を対象として500円分のクオ・カードを贈呈するとしていたが、12月19日付で株主優待制度の拡充を発表し、拡充後は毎年6月末日と12月末時点で、それぞれ500株以上保有株主に対して、2万5000円分のデジタルギフトを贈呈することとした。25年6月末より適用する。

■株価は急反発

 株価は安値圏でモミ合う形だったが、株主優待制度拡充の発表を好感して急反発している。出直りを期待したい。12月20日の終値は964円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS61円84銭で算出)は約16倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS164円84銭で算出)は約5.8倍、そして時価総額は約51億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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