相場展望12月16日号 米国株: 心理的節目の大台乗せで、高値警戒・金利上昇・インフレに視点移る 日本株: 円安進行も、輸出関連株に追い風吹かず

2024年12月16日 13:26

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/12、NYダウ▲234ドル安、43,914ドル
 2)12/13、NYダウ▲86ドル安、42,828ドル

【前回は】相場展望12月12日号 米国株: FRBは「金利引下げに前のめり」、インフレ上昇には鈍い反応 日本株: 日米金利差が拡大し、円安が進行⇒日経平均には追い風  ボックス圏の高値にあり、海外投機筋に翻弄されない備えを

●2.米国株:心理的節目の大台乗せで、高値警戒・金利上昇・インフレに視点移る

 1)心理的節目の大台を達成し、高値警戒感から下落か
  ・NYダウの45,000ドル、ナスダック総合の20,000の大台に乗せ、史上最高値を更新した。
  ・しかし、NYダウはその後、過熱感と高値警戒を意識し反落に転じた。
            史上最高値    直近      下落幅  下落率
    NYダウ  12/4 45,014ドル ⇒ 12/13 43,828 ▲1,186安・▲2.6%安
  ・ナスダック総合 12/11 20,034 ⇒ 12/13 19,926 ▲ 108安・▲0.5%安

 2)米国金利が低下から上昇に反転
  ・金利の推移    12/6   ⇒ 12/13  上昇幅   上昇率
    02年債券利回り 4.104%    4.245 +0.141%高・+3.4%高
    10年債券利回り 4.153     4.342 +0.189  ・+4.5
  ・米国FRBの利下げペースが緩やかになるとの見方が強まり、金利上昇に切り返している。

 3)NYダウが続落、長期金利上昇が重荷
  ・インフレの再加速を意識して金利が上昇している側面がある。
  ・FRBは12/17~18で開催するFOMCで▲0.25%の政策金利引下げ観測が根強いが、来年1月のFOMC会合では据え置くとの見方がある。「金利据え置き」観測が高まることで、米国の市場金利は上昇することになる。
  ・金利上昇局面では、株価は相対的に割高感が強まり、株価は反落する。
     
 4)トランプ次期政権で、インフレが加速⇒金利がさらに上昇する懸念が強まる方向
  ・懸念材料
    ・関税の大幅上昇で、輸入物価が上昇。
    ・大規模減税で、消費支出が増し、物価上昇。

  ・トランプ次期大統領は、麻薬成分フェンタニルの対米国搬入禁止が緩いとの理由で関税引上げ方針を示した。
    ・フェンタニルは、ヘロインの50倍、モルヒネの100倍の効用があるとされ、副作用も大きい。
    ・フェンタニルによる米国での死亡者は7万人を超えるという。
    ・米国では州によって大麻を合法化しており、トランプ氏はその見直しを含めた取締り強化を実施する必要がある。

  ・トランプ氏のフェンタニル規制を目的とした関税引上げは、メキシコ・カナダで+25%増、中国には+10%増だ。中国は最終的に合計で+70%関税になりそうだ。

  ・米国の関税引上げは、輸入物価上昇に跳ね返る。米国の総輸入額に占める割合は上記3火国だけで43.6%に達する。
    ・メキシコ 15.4%、中国 14.4%、カナダ 13.8%。
     (ちなみに、日本は4.9%)
   関税引上げは、最終的に米国消費者の負担となる。

 5)トランプ氏の関税引上げは、報復措置を招き、米国のGDP減少につながる
  ・同盟国にも関税+10%引上げ、中国も米国に報復措置として+60%関税を課した場合、米国の国内総生産(GDP)は▲5%強減じる可能性も指摘されている。
  ・つまり、過度の関税引上げはブーメラン効果で米国に大きなマイナスをもたらすことになる。
  ・トランプ氏の関税引上げは、単なる「脅し」であり、「ディール(取引)」に持ち込むための交渉の一部のようにも見える。

●3.カナダを「51番目の州」と揶揄したトランプ氏、今度は痛い目に遭った(江南タイム)

 1)カナダは、米国最大の石油供給国であり、特に米国中西部の製油所はカナダ産重質原油への依存度が高い。また、米国が使用しているウランの約4分の1の供給と、主要なカリウム肥料の供給国でもある。
 2)カナダは、ウランと石油の「輸出関税カード」をちらせつける対抗姿勢。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/12、上海総合+29高、3,461
 2)12/13、上海総合▲69安、3,391

●2.バイドゥ出資の中国EV企業「極越」破綻か、値下げ競争が影響(時事通信)

 1)ほぼすべての従業員を解雇する構えで、事実上、経営破綻したもよう。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/12、日経平均+476円高、39,849円
 2)12/13、日経平均▲378円安、39,470円

●2.日本株:円安進行も、輸出関連株に追い風吹かず

 1)日経平均は12/12、一時40,000円台を回復、約2カ月ぶり
  ・ただ、40,000円台回復後は上値の重い展開となり、終値では大台を割った。

 2)円安が進行も、輸出関連株に追い風吹かず
  ・円相場の推移    12/6   ⇒  12/13  円安幅  円安率
    円・ドル     149.8円     152.8  ▲3円安・▲2.0%安
  ・輸出関連銘柄の株価推移
    トヨタ自動車   2,629円    2,697円  +68円高・+2.5%高
    ホンダ      1,286     1,293   + 7円高・+0.5%高
    三菱商事     2,556     2,551   ▲ 5円安・▲0.2%安
    三井物産     3,125     3,240   +115円高・+3.6%高

 3)株価先物の特別清算(SQ)を12/13に終えたため、今後の動向に注意

●3.日銀、12月の利上げ見送りを検討、米国経済不透明、賃上げ動向確認(共同通信)

●4.日銀短観、小売や飲食で悪化が目立つ、「値上げによる客離れを懸念」(朝日新聞)

 1)製造業は改善したが、非製造業は悪化した。非製造業のうち「卸・小売」「宿泊・飲食」は悪化した。
 2)雇用状況は依然として不足状態が続き、人件費の増加や値上げが続く懸念をする声が聞かれる。

●5.西武、「赤プリ」跡地の商業ビルを4,000億円で米国ブラックストーンに売却(ロイター)

 1)売却益は約2,604億円。
 2)今回で得た資金で、財務改善・主要ホテルの改装・増配・自社株を最大700億円実施するなど株主還元にも充当する。

●6.王子、株主還元を拡充、2026年度末までに自己株を1,000億円取得の方針(朝日新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6861 キーエンス     業績堅調。
 ・8113 ユニ・チャーム   業績堅調。 
 ・9616 共立メンテナンス  業績好調。

関連記事

最新記事