【コラム】日産、半期決算にみる経営不振は危機的状況 来年の通期決算報告では役員総入れ替えも!?
2024年11月24日 14:55
日産自動車が経営危機に陥っている。11月7日に発表した2024年9月半期中間決算で、営業利益が前年同期比90.2%減の329億円となるなど、業績の不振が続いているためだ。世界での生産能力を2割減らし、グローバルで9000人の人員削減をすると発表した。
中間決算によると売上高は前年同期比で1.3%減の5兆9842億円、純利益は同93.5%減の192億円。世界販売は同3.8%減の158万5千台と2年ぶりに減少。とくに米国で販売の主軸となっているハイブリッド車(HV)を投入しておらず、苦戦を強いられた。さらに熾烈な販売競争で、インセンティブ(販売奨励金)を増やしたことも業績悪化を招いた。
発表した2024年9月中間決算では、米中の2大市場に加え本業の日本でも不振が続いていることなどから大幅な減益となった。かつてカルロス・ゴーン氏が敷いた米中市場に対する拡大路線の修正が旨く機能しなかった模様。今後、人員や生産能力の大幅な削減を進める。資金調達も急務だ。が、しかし短期間で反転攻勢・成長へ向かわせるのは難しそうだ。
日産の内田誠社長はオンライン記者会見のなかで「厳しい状況を迎えていることは痛恨の極み」だと述べ、業績不振の責任を取り、今月から役員報酬の50%を自主返納すると明らかにした。また、保有する三菱自動車の34%の株式のうち、10%を上限として三菱自動車に約686億円で売却し、財務の改善を図る
決算報告をみると本業のもうけを示す営業損益や純損益は9割以上減ったものの、どうにか黒字を確保した。だが、自動車ローンなどの金融事業を除くと、営業損益は1161億円の赤字となっている。
加えて、この春に発表した中期経営計画で示した販売目標も大幅に下げ、今回100万台におよぶ下方修正となった。そして、今年度1年間の業績見通しについても下方修正し、売上は14兆円から12兆7000億円に、営業利益を5000億円から1500億円へと引き下げ、最終的な利益は現時点では算定が困難だとしている。
同社がこのように過剰設備と人員を削減せざるを得ない状況に追い込まれた大きな要因は、先に述べたゴーン氏の拡大路線を目指した北米事業の悪化だ。また、EVシフトが進む中国市場でも販売が落ち込んだことも大きな要因となった。
日産の商品構成は他社と比べると、HVに弱く、SUVにも量販モデルがない。この原因をひと言でいうと、魅力的な商品開発力の低下だ。自動車メーカーとして備えるべきいちばん大切な能力が欠如していると言える。
内田誠社長はこの12月で就任丸4年だ。だが、この4年間で商品&市場戦略などで斬新かつ有効な手立てを打ち出せなかった。その意味で、一部アナリストの憶測かもしれないが、4年間の経営責任をとって、内田氏を含めて経営陣をすべて入れ替える処置が必要ともいえる。ただ、内田氏の後継たる人材が社内にみつけられないなか、日産の経営はこの先も暗澹たるものに思えてならない。
業績が回復し、ゴーン氏が去って、一旦は経営が落ち着いたはずの日産。しかし、市場環境の変化への対応の遅れや、成長戦略の失敗から、厳しい状況に置かれている。(編集担当:吉田恒)