一正蒲 Research Memo(5):2024年6月期は本社第二工場の稼働などにより売上総利益が大幅増。利益は急回復
2024年11月18日 15:05
*15:05JST 一正蒲 Research Memo(5):2024年6月期は本社第二工場の稼働などにより売上総利益が大幅増。利益は急回復
■一正蒲鉾<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0290400?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><2904></a>の業績動向
1. 2024年6月期の業績概要
2024年6月期の連結業績は、売上高34,487百万円(前期比5.1%増)、営業利益1,271百万円(前期は193百万円の損失)、経常利益1,247百万円(前期は146百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益957百万円(前期は84百万円の利益)と、増収となり利益は急回復した。前期は原材料・エネルギーコストの上昇や消費者の買い控えなどにより営業損失となったが利益転換した。水産練製品・惣菜事業で前期に実施した価格改定の効果が表れたこと、消費者にも価格が浸透し販売数量が増加したことや、スティックタイプのカニかまの拡販効果が奏功した。きのこ事業は減収となったが、それを水産練製品・惣菜事業がカバーし、事業全体で増収となった。ただ暖冬の影響でおでん商材やまいたけの販売数量が伸び悩み、計画の37,800百万円には届かなかった。損益面においては主原料のすり身価格の上昇が一服し、2023年4月より稼働した「サラダスティック」の専用工場である本社第二工場が年間で寄与したことで、売上総利益率が20.7%と同4.3ポイント上回った。カニかま発売50周年に向けた販促費の投入や販売数量増に伴う物流費増加、昇給を含めた人件費の増加などで販管費は同4.8%増加したが、売上総利益の増加によりこれらを吸収し、営業利益は大幅に改善した。
なお、2024年6月期より有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更したため減価償却費が412百万円減少し、その分各段階の利益がそれぞれ増加している。本社第二工場の稼働にあたり使用方法に照らした減価償却方法を再検討した結果、設備の安定稼働が見込まれるため耐用年数期間にわたって均等に費用配分することが適切と判断したことによる。
営業利益の増減分析では、カニかまの拡販による販売数量の増加で7.7億円、2022年9月と2023年3月の価格改定効果で9.1億円、本社第二工場で導入したコージェネレーションシステム、太陽光発電の寄与、政府補助金によるエネルギーコスト減少で2.6億円、合理化投資による省人化などのコストダウンで1.9億円の計21.3億円の利益拡大となった。一方、すり身価格は上昇が一服したものの高騰時の在庫を使用しているため高止まりしており、原価コストアップとして1.7億円、カニかまの販促費・物流費用・人件費の増加など販管費全体の増加で5.0億円の計6.7億円の減益要因となり、営業損益は前期比12.7億円の大幅増益となった。
2.事業セグメント別動向
(1) 水産練製品・惣菜事業
売上高は30,304百万円(前期比6.5%増)、セグメント利益は1,309百万円(前期は288百万円の損失)と、増収となり、セグメント利益は急回復した。2023年秋は気温の高い日が続いたためおでん商材の動きが低調だったが、春夏商材の需要が長く続き、拡販に努めた「サラダスティック」は金額・数量とも前期の120%近く成長した。生産性を追求した「サラダスティック」専用工場である本社第二工場が2023年4月より稼働し、20%増産を実現できたことも要因となった。2022年3月と同年9月に続き2023年3月に3回目の価格改定を実施したが、以降は消費者の節約志向から大容量商品や徳用商品などの購入が伸びる傾向にあり、低価格商品ラインや徳用商品での売上が伸長した。「小判てんぷら」は、長い賞味期限と冷凍保存を可能とする商品設計が消費者の節約志向にマッチし、売上を大きく伸ばした。2023年のおせち商品は、店頭展開時期の早期化及び早出しに取り組み、売上は前期と同水準ながらも過去最高となった。商品のなかでは、2023年12月に販売した「国産原料100%おせち『純』シリーズ」が金額ベースで前年同月比106%となった。利益面では、本社第二工場のフル稼働による生産性向上、自動化・省人化のコスト削減、主原料であるすり身価格の上昇の一服のほか、エネルギーコストが想定を下回ったことにより増益となった。
(2) きのこ事業
売上高は3,790百万円(前期比4.0%減)、セグメント損失は157百万円(前期は14百万円の利益)と、減収・損失決算となった。まいたけのすべての商品の表記を「ビタミンD 舞茸」にリニューアルしたほか、大容量商品の提案による販売強化を行ったが、2023年の酷暑・暖冬が影響し、販売数量が伸び悩んだ。競合他社の増産供給過多により崩れていた相場は各社の生産調整により回復傾向となったが、販売単価改定の交渉が販売数量の減少時期と重なり単価を上げきることができなかった。加えて原材料や労務費の増加も響いた。
(3) その他
売上高は392百万円(前期比6.5%減)、セグメント利益は110百万円(同52.8%増)と、減収増益となった。運送事業は、主に輸入青果物の定期輸送便の一部終了などにより減収減益となった。倉庫事業は上期に庫腹がひっ迫した状況があったものの、期を通じて前期を上回る入庫数量を確保したほか、収益性改善に向けた倉庫の効率化やコスト上昇分に応じた料金改定を実施した結果、増収増益となった。
3. 財務状況と経営指標
2024年6月期は、税金等調整前当期純利益1,402百万円に加えて、原材料などの在庫が1,148百万円減少したことにより必要運転資金が大きく減少し、営業活動によるキャッシュ・フローは5,198百万円の収入となった。投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産の取得による支出2,059百万円などにより1,743百万円の支出となり、フリーキャッシュ・フローは3,454百万円の収入と、前期の4,967百万円の支出に比べて大きく改善した。そのため、長短借入金をネットで1,104百万円返済し、財務活動によるキャッシュ・フローは1,648百万円の支出となったが、現金及び現金同等物の期末残高は前期比1,812百万円増の3,183百万円となった。
また、親会社株主に帰属する当期純利益957百万円から配当支出222百万円を差し引いた735百万円が利益剰余金として増加するなど、純資産合計は前期末比924百万円増加した。
キャッシュ・フローの改善で借入金が減少するなど負債合計は前期末比210百万円減少し、その結果自己資本比率は46.2%と前期末を1.9ポイント上回った。同時にD/Eレシオも0.7倍と前期比0.1倍低下し、財務の安全性・健全性はさらに高まった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)《MY》