馬の頑固さに由来するポピュラーな英語イディオム2選
2024年11月14日 10:14
前回に引き続き、今回も「馬」に関連するイディオムを取り上げたい。今回紹介する2つの表現は、どちらも「相手にその気がなければいくら示しても無駄だ」というニュアンスを含み、日常のさまざまな場面で使われている。どちらも馬の頑固さに由来しているが、それぞれの意味や使い方を詳しく見ていこう。
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■You Can Lead a Horse to Water, but You Can't Make Him Drink
「You can lead a horse to water, but you can’t make him drink」を直訳すると、「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」だ。
由来をたどると、イギリスで16世紀なかばに登場したことわざ集のなかにすでに認めることができる。
当初は「A man maie well bring a horse to the water, But he cannot make him drinke without he will」という形だったが、19世紀なかばごろに現在の形に定着したようだ。
要は、外からの強制ではなく、本人の意思が重要だということを示すことわざである。現在でも、目の前にチャンスがあっても自ら行動しない人や、助けを受け入れない人に対して使われることが多い。
・I gave her all the information she needed to pass the test, but you can lead a horse to water, but you can't make him drink.
(テストに合格するための情報はすべて提供したが、やるかやらないかは彼女次第だ)
■A Nod Is as Good as a Wink to a Blind Horse
「A nod is as good as a wink to a blind horse」というイディオムは、直訳すると「うなずきは盲目の馬にとってウィンクと同じ」という意味で、暗示やヒントをいくら与えても効果がないことを表している。
相手にわかる気がない場合、いくらわかりやすく示しても伝わらないという意味でよく使われるイディオムだ。
日本語のことわざ「馬の耳に念仏」に近い。ただ、このイディオムには、賢い人や状況を十分に把握している人に対しては、ほんの少しの合図でも意図が伝わるというニュアンスも含まれている。
このイディオムは、18世紀にイギリスで使用され始めたようだ。当時のオペラや文学作品において使用が認められる。19世紀になると風刺文学や演劇などで軽妙な表現としてさらに広まり、次第に一般的なイディオムとして定着していった。
現代でも非常に一般的なイディオムで、さまざまなジャンルでこれにちなんだ言い回しが確認できる。
たとえば、ロックファンにはおなじみだが、イギリスのバンドFacesが1971年に発表した名盤のタイトルが『A Nod Is As Good As a Wink... to a Blind Horse』だった(邦題『馬の耳に念仏』)。また、イギリスのコメディ『モンティ・パイソン』の1969年のスケッチ「Nudge Nudge」において、「A nod’s as good as a wink to a blind bat」という少し異なる形が使われた。この形は今でももユーモラスな言い回しとして親しまれている。
例文
・I tried giving him a hint, but a nod is as good as a wink to a blind horse when it comes to him.
(彼にヒントを与えようとしたけど、彼には何を言っても無駄だよ)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)