相場展望11月7日号 米国株: トランプ勝利要因は、物価高させたバイデン政権への不満 日本株: トランプ勝利は、日本株にとって「良し悪し」
2024年11月7日 11:29
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)11/4、NYダウ▲257ドル安、41,794ドル
2)11/5、NYダウ+427ドル高、42,221ドル
3)11/6、NYダウ+1,508ドル高、43,729ドル
【前回は】相場展望11月4日号 米国株: トランプ氏と議会選で共和党勝利⇒一時的株高⇒後、金利高で株安? 日本株: トランプ氏は同盟国にも関税10%適用⇒日本は輸出減・円安
●2.米国株:トランプ氏勝利の要因は、インフレで物価高させたバイデン政権の不満
1)トランプ氏、当選確実を受け、米国株式市場は大幅高
・米国主要株式指数は大幅続伸。
NYダウ +3.57%高
ナスダック総合 +2.95%高
S&P500 +2.53%高
半導体株(SOX) +3.12%高
ラッセル2000 +5.91%高
・主要3株価指数(NYダウ、ナスダック総合、S&P500)は最高値を更新した。
2)米国選挙「トリプル・レッド」、共和党が大統領・上下両院で勝利だと強力政権に
・すでに共和党は、大統領選で勝ち、上院議会でも過半数を獲得した。下院議会選では民主党と接戦している状況にある。
3)トランプ氏・共和党勝利の要因は、インフレで物価高させたバイデン政権への不満
・今まで民主党支持だった庶民は、生活苦をもたらした民主党・バイデン政権への不満が大きく、今回の大統領選・議会選で共和党に投票した。
・インフレ率が高く物価が高騰した半面、賃金上昇率がいつも下回ってきたため、実質賃金のマイナスが長期間続いた。このため、庶民は食料を買うために他の消費支出を切り詰めてきた。それでも今まで買てきた食料品が高騰したため、質を切り下げざるを得なかった。
・生活苦に陥った庶民が、大統領選でトランプ氏への投票に向かうことになった。とりわけ、黒人男性の投票行動の変化が特徴的だった。古くから移民で米国に居住してきた人々から、既得権を守るために移民規制強化を掲げるトランプ氏への投票が流れたこともある。
・なによりも、ハリス候補が副大統領として4年間で目立った成果を上げていなかったことにつきる。それが期待値を高められず、支持率を上げられなかった理由だろう。要するに、民主党は高齢で不安のバイデン氏から若いハリス氏へ大統領選候補者を差し替えたが、新鮮さに欠ける人選をした結果だったといえる。しかも、米国社会は、男尊女卑の風土の強い国である。米軍の最高指揮官に女性を選ぶのは抵抗感がある。民主党の人選ミスといえよう。
4)トランプ勝利は、バイデン政権・パウエルFRBの失敗が要因
・新型コロナ禍で落ち込んだ回復策としてバイデン政権は必要以上の景気浮揚策を実行してしまった。
・バイデン政権発足直後の超大型財政支援。
・米連邦準備理事会(FRB)の必要以上の超金融緩和策(政策金利の大幅な引下げ、あふれるばかりの量的緩和で資金供給)
・結果、インフレが高騰し、物価高は米国民の生活を直撃した。ところが、賃金の上昇率が物価高を下回った。ために、実質賃金はマイナスとなり、食品を切り詰めるなど生活苦となった。バイデン政権の施策・パウエルFRBの金融政策でも、物価高を上回る賃金アップは実現できなかった。バイデン政権が賃金を引上げる直接的な政策は実施しなかった。無策無能だった。労働組合員を基盤にした民主党だったが、その期待を大きく裏切ってしまった。
・FRBは政策金利を引下げる・市中の余剰資金を回収するなど、インフレ退治策を実施した。このため、インフレ率は直近で前年比+2.1%上昇まで抑え込みつつあった。
・そうして、大統領・上下両院選挙を迎えた。しかし、米国の庶民の生活苦を救済するには至らない状況下での選挙となった。その結果、生活苦を招き、解消できなかったため選挙ではバイデン・民主党は敗退することになった。
5)民主党に投票してきた支持者・無党派層からも見放された民主党・ハリス副大統領
・インフレに伴う物価高で生活苦に追い込まれた米国民の反発で現・民主党政権に対する不満が大きく作用したと思われる。賃金は上昇したが、それを上回る物価高に見舞われた。しかし、民主党政権、しかもその副大統領に対する嫌悪感が民主党支持者の離反を招いたとみられる。
3.米国大統領選挙、ハリス氏は演説で敗北認める(NHK)
1)7つの激戦州のうち5つの州でトランプ氏勝利確実。
●4.ボーイング、4年間で38%の賃上げでスト終結、11/6にも生産再開へ(ロイター)
●5.米国ホワイトハウス、ウクライナ支援残高の支出急ぐ、トランプ氏就任前まで(ロイター)
1)使用されずに残っているウクライナ向け軍事支援額は60億ドル超。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)11/4、上海総合+38高、3,310
2)11/5、上海総合+76高、3,386
3)11/6、上海総合▲3安、3,383
●2.中国の婚姻数、1~9月は474.7万組で前年比▲94万組減少(ロイター)
1)景気先行き不透明感の高まりや、生活コスト上昇により、多くの若いカップルが結婚を遅らせざるを得なくなっているほか、独身にとどまることを選ぶ若者も多い。
2)中国は最近、婚姻届の提出手続きを簡素化する一方で、離婚申請を厳格化する改正法案をまとめた。1~9月の離婚数は196.7万組で、前年同期比▲0.6万組減少した。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)11/4、祝日「文化の日」の振替休日のため休場
2)11/5、日経平均+421円高、38,474円
3)11/6、日経平均+1,005円高、39,480円
●2.日本株 : トランプ勝利は、日本株にとって「良し悪し」
1)トランプ勝利を先買いする海外投機筋
・短期筋の海外投機家は、株価先物主導で日経平均を強引に買い上がった。注目すべきは海外投資は大幅な売り越しをしており、買い戻したにすぎないことにある。
・したがって、今後とも買い進めるという保証はない。
・よって、米国大統領選後の米国株上昇を受けて、日本株も連れ高すると連想するにはリスクがある。11/6の日経平均の大幅高に対して、提灯買いがどのような買いにつながるか海外投機筋はみていると思われる。
・11/6の極端な大幅高の後だけに慎重に対処したい。なお、米国でもトランプラリーがあってNYダウなども急騰したため、日経平均はNYダウと比べて「割安感」はあまりない状況にある。海外投機筋の動向によっては、いつでも売り浴びせされる可能性がある。
2)トランプ勝利は、日本株にとって「良し悪し」
・「円安」進行は、輸出関連企業にとって業績向上を見込めるとあってプラス。
・しかし、トランプ氏の同盟国であっても「関税引上げ」はマイナス。
3)トランプ氏の「関税引上げ」
・トランプ氏は米国の製造業を保護するため、同盟国の日本・EU諸国を含めた全ての国からの輸入に対して10~20%の関税を課す方針を示している。
・日本の自動車は米国に2023年に年間で150万台輸出され、輸出額は約5兆8,000億円と、対米国輸出の約3割を占める最大の品目となっている。
・日本企業は、関税を価格転嫁すれば価格面で競争力を失う。値上げが出来なければ企業利益が減少する。米国生産を増加すると、日本の生産は減り雇用が失われる。対米国輸出のため労務費が安く・米国への低関税の恩恵を受けられるメキシコに生産拠点を増強してきたのが日本企業である。そのメキシコまでが「関税10~20%」引上げるというのがトランプの方針でである。日本企業はそういった大きなジレンマにたっている。
・半導体分野についても、トランプ氏が対中国規制強化を実施すれば、日本の半導体製造装置メーカーも業績悪化は避けられない。売上の半分程度を中国向けとなっている企業もあるため、影響は大きい。
●3.ヤマト、4~9月期営業損益▲150億円の赤字転落(前年は123億円黒字)(ロイター)
●4.三菱重工、9月中間売上高・利益とも過去最高(時事通信)
●5.川崎汽船、3月通期経常利益が前期比+81%増の2,400億円、自己株900億円取得(日本海事新聞)
●6.ヤハマ発動機、12月通期営業利益2,600⇒2,350億円に引下げ、市場予測も下回る(ロイター)
●7.IHI、通期営業利益見通し1,100⇒1,450億円に上方修正、期末配当20円増(ロイター)
●8.トヨタ、4~9月期営業利益▲3.7%減、通期世界販売は▲10万台下方修正(ロイター)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・7269 スズキ 業績好調。
・9706 日本空港ビルディング 業績好調。
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