京写は調整一巡、25年3月期大幅営業増益予想、割安株価水準で投資機会に
2024年10月28日 08:31
京写<6837>(東証スタンダード)はプリント配線板の大手メーカーである。成長に向けて6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。25年3月期は自動車関連を中心に需要が堅調に推移して大幅営業増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は反発力が鈍くモミ合う形だが、低PERや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。なお10月31日に25年3月期第2四半期決算発表を予定している。
■プリント配線板の大手メーカー
プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を柱として、実装治具関連事業も展開している。販売先は自動車関連、家電関連、事務機関連など、幅広い顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得している。
プリント配線板は独自のスクリーン印刷技術をベースとして、防塵対策基板、熱伝導放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持っている。そして高温工程で繰り返し使用可能なノンシリコーンタイプ粘着キャリア、電子部品の急速な小型化に対応した業界初のスクリーン印刷法による0603チップ部品対応片面配線板、伸縮性のある材料にスクリーン印刷で直接回路を形成するストレッチャブル基板(プリンタブル基板)などの受注拡大が期待されている。
プリント配線板の生産は国内、および中国、インドネシア、ベトナムに展開している。片面プリント配線板は世界最大の生産量を誇っている。メキシコ子会社では実装搬送治具を製造している。
ベトナム子会社は両面配線板のグローバル生産拠点として21年1月に販売開始、23年8月に第2生産ラインが稼働開始して生産能力が2倍に拡大した。自動車関連向けを主力としている。なおベトナム子会社には自動車関連電子部品実装のエヌビーシー(岐阜県大垣市、05年から資本業務提携して協力関係)が出資している。24年3月には同社を割当先とする増資を行い、増資後の出資比率は同社94.12%、エヌビーシー5.88%となった。
また21年5月にはメイコー<6787>と資本業務提携した。ともにプリント配線板事業を主力としているが、得意とする製品が異なるため棲み分けができている。中国やベトナムで事業拡大を進めるなど共通点が多く、グローバルに協業することで相互補完が可能な状況にあるとしている。経営資源の相互活用などでシナジー創出を図る方針だ。
■自動車関連が主力
24年3月期の地域別セグメント業績は、日本の売上高が105億29百万円で営業利益が1億97百万円、中国の売上高が130億74百万円で営業利益が6億98百万円、インドネシアの売上高が21億28百万円で営業利益が80百万円の損失、メキシコの売上高が1億31百万円で営業利益が3百万円、ベトナムの売上高が38億44百万円で営業利益が2億69百万円だった。
製品別売上高は片面板が101億14百万円、両面板(多層板、銀スルーホール基板含む)が111億82百万円、実装関連が25億59百万円、その他が7億23百万円だった。両面板、実装関連は過去最高の売上高となった。
用途別売上高は自動車関連が113億06百万円、家電製品が45億32百万円、事務機関連が26億02百万円、電子部品が15億円、電気機器が6億88百万円、その他(映像機器、音響機器、アミューズメント等)が13億93百万円、実装関連が25億59百万円だった。また、実装関連の用途別構成比は産業機器46.0%、航空機14.2%、通信機器9.4%、自動車8.8%、電子部品5.7%、その他15.9%だった。
■独自の印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカー目指す
中期経営計画では目標値として、最終年度26年3月期売上高300億円、営業利益16億円、営業利益率5.3%、ROE10%、配当性向25%を掲げている。
製品別売上高の計画は片面板が101億円、両面板が127億円、金属基板が26億円、実装関連が32億円、新事業が10億円(超厚銅基板が8億円、プリンタブル基板が2億円)、その他が4億円としている。また地域別の売上構成比の計画は日本が41%、中国が22%、ASEANが26%、北米その他が11%としている。製品別では両面板と金属基板の拡大、地域別ではASEAN(ベトナム)の売上拡大を図る方針だ。
6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。
グローバル生産・販売戦略では最適な供給網の再構築(ベトナム工場第1期フル稼働、両面事業・営業拠点の再編)や片面シェア拡大による利益確保など、企業間連携戦略ではEMSメーカー・商社との連携マーケティングによる製品開発・販路拡大や同業他社との相互補完関係構築など、効率化戦略では自働化・IT化による生産効率向上やDX活用による業務効率化推進など、技術戦略ではプリンタブル関連基板の事業化や0603対応微細基板の技術提案など、財務戦略では自己資本強化や持続的・積極的な株主還元など、人財戦略ではマネジメント人材の育成やESG・SDGsへの取り組みなどを推進する方針だ。
なお22年7月には「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に登録した。自社の保有する技術を用いて環境への貢献を目指す。24年10月には地域社会の発展に向けて、京都サンガF.C.サポートカンパニーHOMETOWN(地域貢献)活動および京都学生祭典への協賛を発表した。
■25年3月期大幅営業増益予想
25年3月期の連結業績予想は売上高が24年3月期比1.7%増の250億円、営業利益が20.3%増の13億円、経常利益が6.4%増の9億70百万円、親会社株主帰属当期純利益が5.8%増の6億40百万円としている。配当予想については24年3月期比1円増配の11円(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は24.8%となる。
経常利益は24年3月期の営業外収益に計上した海外投資補助金収入2億12百万円が剥落するため小幅増益だが、生産ラインを増設したベトナム子会社において引き続き旺盛な自動車需要が期待されるほか、中国における高付加価値の金属基板の増加や、国内における実装関連の堅調推移も寄与して大幅営業増益予想、そして連続増配予想としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比2.2%増の62億46百万円で、営業利益が5.1%増の3億59百万円、経常利益が12.0%減の2億39百万円、親会社株主帰属四半期純利益が30.0%減の1億40百万円だった。
小幅増収・営業増益だった。国内では自動車向けプリント基板の受注回復が遅れたが、実装関連が産業機器や航空機向けに好調に推移し、海外ではベトナムにおいて北米向け自動車分野の受注が拡大したほか、中国におけるコスト削減や高付加価値の金属基板の増加も寄与した。なお経常利益と四半期純利益は、営業外での為替差損益の悪化(前期は為替差益4百万円、当期は為替差損39百万円)により減益だった。
地域別のセグメント業績(内部取引含む)は、日本の売上高が1.0%減の25億87百万円で営業利益が19百万円の損失(前年同期は68百万円の利益)、中国の売上高が6.7%増の33億99百万円で営業利益が42.2%増の2億92百万円、インドネシアの売上高が6.9%増の6億32百万円で営業利益が0百万円(同18百万円の損失)、メキシコの売上高が23.3%増の37百万円で営業利益が3百万円の損失(同2百万円の利益)、ベトナムの売上高が57.1%増の11億77百万円で営業利益が52.8%増の1億13百万円だった。
製品別売上高は片面板が7.7%増の27億66百万円、両面板(多層板、銀スルーホール基板含む)が3.9%減の26億04百万円、実装関連が9.9%増の7億08百万円、その他が10.7%減の1億67百万円だった。用途別売上高は自動車関連が3.2%増の27億78百万円、家電製品が7.3%減の11億22百万円、事務機関連が17.6%増の7億97百万円、電子部品が11.4%減の3億35百万円、電気機器が0.5%増の1億86百万円、その他(映像機器、音響機器、アミューズメント等)が0.9%減の3億20百万円、実装関連が21.79.9%増の7億08百万円だった。実装関連の用途別売上高構成比は産業機器が50.5%、航空機が15.5%、通信機器が5.4%、自動車が7.5%、電子部品が2.2%、その他が18.9%だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。第1四半期の進捗率は売上高が25%、営業利益が28%、経常利益が25%、当期純利益が22%だった。第1四半期は国内の自動車向けプリント基板の受注回復が遅れたため小幅営業増益にとどまったが、ベトナムにおける自動車分野の受注拡大などで営業利益進捗率は順調だった。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
株価は反発力が鈍くモミ合う形だが、低PERや1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。10月24日の終値は337円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円34銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の11円で算出)は約3.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS569円55銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約49億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)