【QAあり】マクニカHD、投資家向けに「よくわかる マクニカのしくみ」を社長が解説 独自性と成長性はどこから?
2024年10月20日 15:20
スピーカー
原一将氏(以下、原):みなさま、こんにちは。代表取締役社長の原です。本日はお忙しい中、たくさんの方にご視聴いただいており、誠にありがとうございます。
約1時間というプログラムとなりますが、みなさま、どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いします。
はじめに
はじめに、統合報告書の概要について、ご説明します。
当社は昨年、初めて統合報告書を発行し、説明会も開催させていただきました。大変多くの方に統合報告書をお読みいただき、また説明会をご視聴いただくことで、マクニカのことを知っていただく良い機会になったと思っています。あらためて、御礼申し上げます。
おかげさまで株主・投資家のみなさまとの面談機会がかなり増えましたが、面談の中でみなさまから事業の構造や当社の役割、ビジネスの強みなどに関するご質問を多くいただきました。
編集方針:制作メンバーの想い
そこで、今回の統合報告書の制作にあたっては、「よくわかる マクニカのしくみ」をコンセプトとして、当社が創出する価値と目指す姿、経営資本や各事業のしくみなどを詳細に解説しています。
特に半導体事業とネットワーク事業に関しては、それぞれ13ページにわたって掘り下げており、あまり他社では見られないような詳細な解説を記載しています。統合報告書をお読みいただければ当社ビジネスの構造的な強みや独自性、そして今後の成長性をご理解いただけるのではないかと思います。
また、今年は22名の制作プロジェクトメンバーを中心に、各事業部門や本社部門の関係者が半年間にわたって議論を重ねており、マクニカのビジネスモデルをよりわかりやすくお伝えすることを意識して制作しました。
最前線の現場メンバーを含めて、作り上げた統合報告書だからこそマクニカ全体の動きと現場の実態を、統合された情報としてまとめることができました。
本統合報告書が「マクニカのLIMITLESSな成長のための現場の活動」として当社への理解を深めていただく一助となれば幸いです。
タイトル・表紙について
また、すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、このたび、マクニカは新たなブランドコミュニケーションを開始しました。こちらがキービジュアルです。この空から降っている球体は、「タネ」です。
マクニカ創業以来の企業理念、「足下に種を蒔き続ける」から着想を得て、ブランドのビジュアルアイデンティティとしました。ロゴマークも刷新し、「i」の点の部分を大きくして、2色にすることでタネに見えるようにしました。
そして、キャッチフレーズは、「先端技術をみんなのものに。」です。マクニカは、創業当初から半導体、ネットワーク、そしてITセキュリティに代表されるような先端技術を世界中から見つけ出し、みなさまが使いやすいように社会に実装してきました。
どれだけ革新的な技術であったとしても、その技術をみなさまが使えるかたちにし、かつ、みなさまに幸せをもたらすものでなければ意味がありません。それが、「先端技術をみんなのものに。」に、込めた思いです。
今後もマクニカは、いち早く未来の“タネ”を見つけ、そのタネを実装し、社会の価値に変えることで、世界中にテクノロジーの恩恵を届けていきます。
みなさまにもぜひ、“先端技術をみんなのものに。タネまく、マクニカ”と覚えていただければと思います。
統合報告書の構成
こちらは今回の統合報告書に掲載した項目になります。構成としては、昨年から大きく変わっていませんが、大きく3つの構成になっています。
1つ目に当社がなぜ先駆けられるのか、当社の価値創造プロセスをお伝えし、2つ目に当社の中長期戦略として、半導体・ネットワーク事業のしくみを詳細に解説しています。
そして3つ目には、変化への対応力として、ガバナンスやリスクマネジメント強化などの取り組みを記載しています。
本説明会の目的
そのため、本日の説明会では、大きく二部構成に分けて、マクニカの“しくみ”と“変革”を知るためのポイントを厳選して解説します。
第一部では、統合報告書の最大のポイントである半導体・ネットワーク事業の“しくみ”についてご説明し、第二部では、当社が今後目指す姿や現在の取り組みを“変革”をテーマに解説します。
“しくみ”を知ることで、マクニカの“独自性”をご理解いただき、“変革”を知ることで、マクニカの“将来性”に共感いただければ幸いです。
LIMITLESS 2024のポイント解説
さっそくですが、第一部のご説明に入ります。
半導体事業のしくみ 〜提供価値〜
まずは半導体事業のしくみに関して、ご説明します。当社は、創業以来50年、主に外国系の半導体を中心に取扱い、現在では170社以上の国内外の半導体メーカーの代理店として、グローバルにビジネスを展開しています。
左の表は世界の半導体市場の約80パーセントを占めるTOP21社の半導体メーカーを記載しています。ご覧のとおり、当社はこれら世界のTOP企業のうち、16社と代理店契約を締結しています。
右のグラフは、半導体商社における国内とグローバルでのシェアを表していますが、当社は国内シェア第1位、グローバルシェア第5位のポジションを確立しています。
このように、半導体メーカー、お客さまの双方から信頼を獲得してきましたが、では、なぜマクニカが仕入先・お客さまから選ばれ続けるのか、本日は現在のポジションを確立したしくみを解説していきます。
半導体事業のしくみ 〜提供価値〜
半導体商社であるマクニカは、仕入先である半導体メーカーとお客さまの間に入り、最先端の半導体をお客さまに届けることが基本的な役割となりますが、ただ仕入れて売るだけではなく、双方に付加価値を提供しています。
そして、この付加価値は、他社とは異なる競争優位性やそれを実現するための経営資本をもっているマクニカだからこそ、提供できるものであり、この付加価値こそが、マクニカが半導体メーカーやお客さまから選ばれ続け、現在のポジションを確立することができている理由の1つです。
半導体事業のしくみ 〜半導体メーカーへの提供価値〜
まず、半導体メーカーに提供している付加価値ですが、近年、半導体メーカーは、自社製品の競争力を高めるために、M&Aを活発に行ってきました。
半導体メーカーのM&Aが行われると、基本的に商圏は買収した側の代理店に一本化され、買収された側の販売代理店は契約打ち切りとなるケースが多くありますが、マクニカは半導体メーカーの商流再編においても、選ばれ続けています。
半導体メーカーは、もちろんマーケットシェアの拡大に期待して代理店を選定しますが、マクニカのもつ①技術実装力、②顧客基盤が他社との競争優位性となり、ビジネスを拡大してきました。
マクニカは商社でありながら、従業員の3分の1をエンジニアが占めており、メーカーごとに専任のエンジニアを有しています。
これにより、メーカー同等水準の技術サポートをお客さまに提供することができる一方、半導体メーカーにとっては、お客さまへの技術サポート負荷を軽減することができます。
技術サポートをマクニカのエンジニアが担うことで、半導体メーカーにとっては、大きなメリットとなり、これが半導体メーカーから選ばれる1つの要因となっています。
また、当社は産業機器・車載市場を中心として、国内外に幅広い顧客基盤を有しています。特に産業機器市場のお客さまは、さまざまな製品分野がある上に、お客さまの数も非常に多いという特徴があります。
そのため、半導体メーカーにとって産業機器市場は、数多くのお客さまに対して、直接営業をかけ、手厚い技術サポートを提供することが難しい領域となります。
マクニカのもつ技術実装力が半導体メーカーの技術サポート負荷を軽減することに加えて、幅広い顧客基盤を有しているマクニカを代理店にすることで、半導体メーカーが手の届かない顧客層にもアプローチすることができるようになります。
エンジニアによる技術実装力とこれまでに蓄積した幅広い顧客基盤を掛け合わせ、半導体メーカーに付加価値を提供することができるマクニカだからこそ、半導体メーカーから選ばれ続けているということです。
半導体事業のしくみ 〜顧客への提供価値〜
次にお客さまへ提供している付加価値についてですが、お客さまからはマクニカのもつ①技術実装力と②世界有数の半導体メーカー製品の取り扱いをご評価いただいています。
技術実装力については、先ほども申し上げたとおり、メーカーごとの専任エンジニアをはじめ、当社では品質を包括的にサポートするエンジニアも多数在籍しています。
また、170社を超える半導体メーカーの代理店として多方面から情報を獲得し、世界の最先端技術情報をはじめ、市場トレンドや各社の製品情報など、半導体に関わるあらゆる情報、インテリジェンスを保有しています。
これにより、製品の企画・構想段階から、保守・メンテナンスにわたるまで一貫してマクニカが価値を発揮することができるようになっています。
加えて、CPUやFPGAなどの製品開発の核となる半導体を取り扱っていることで、基板上に使われる、たくさんの周辺デバイス・部品についても同時に提案することができます。
左下の写真は、ある電子機器の基板上において、どのような半導体が使用されているかをお示ししています。この1枚の基板だけでも、非常に多くの種類の半導体が使用されていることをご理解いただけるかと思います。
マクニカは、他社に比べ圧倒的に幅広い製品ラインナップを持つことで、お客さまに最適なデバイスを提供できることが付加価値となっています。
このように世界有数の半導体メーカーをはじめとする幅広い製品ラインナップや技術実装力があるマクニカだからこそ、お客さまをワンストップでサポートすることができています。
半導体事業のしくみ 〜グローバルでの調達・供給を支える体制〜
そしてまた、多種多様な半導体を、グローバルでシームレスに、調達・供給ができる点も仕入先・お客さまの双方からご評価いただいています。これを支えるマクニカのオペレーション体制も、生産性を向上させ、収益性を高めることにつながっている、当社の強みとなっています。
マクニカの半導体事業は、国内の4つの主要カンパニーに加えて、国外に10社の子会社を有し、18ヶ国76拠点で営業を展開しており、それぞれの国や地域に、多くの仕入先やお客さまがいらっしゃいます。
そのため、数々の仕入先やお客さまの要望にお応えしつつ、グローバルでの調達・供給を行うには、高効率なオペレーション体制やシステム体制が必要不可欠となりますが、このオペレーションやシステム体制こそが、近年の急激な事業拡大を支えています。
半導体の需要は、シリコンサイクルと呼ばれるように、市場環境に応じて変動するため、今までは、担当者による経験値を基に需要予測を行っていましたが、システム化をすることで、精度の高い需要予測を行い、効率化を進めています。
また、何万点もの製品を取り扱う新子安のロジスティクスセンターでは、自社製の倉庫管理システムを採用することにより、入出庫業務を一元的に管理し、オペレーションの自動化・標準化・省人化を実現しています。
これらオペレーションの優位性は、マクニカのチャレンジ精神旺盛な人財によって実現できたものであり、他社には模倣できない確固たる強みとなっています。
そして、このオペレーション体制は、今後、さらに仕入先やお客さまが増加したとしても対応できるしくみとなっており、グローバルで、このオペレーショナルエクセレンスを構築していくことで、さらなる事業の拡大と収益性の向上に対応していきます。
ネットワーク事業のしくみ
続いて、ネットワーク事業についてご説明します。
ネットワーク事業はこの5年間でCAGR18.5パーセントの成長率となっており、他のIT事業者と比較しても高い成長率を誇っています。
また、今後、より高成長な高付加価値が見込める事業であり、本日の説明会では、このしくみについて、解説していきます。
ネットワーク事業のしくみ 〜ビジネスモデル〜
ネットワーク事業では、サイバーセキュリティ関連商品を中心に、世界中のスタートアップと代理店契約を締結し、一次代理店である“ディストリビューター”という立場でビジネスをしています。
ビジネスの流れとしては、ITベンダーと呼ばれる仕入先から最先端ITソリューションを仕入れ、製造業、情報通信業、金融機関、官公庁などの最終顧客、エンドユーザー顧客に提供しています。
商品・ソリューションの販売を拡大するにあたっては、二次代理店と呼ばれるパートナーと協業しています。
これらのパートナーはシステムインテグレーターなどを指しており、エンドユーザー顧客のシステム設計や運用を担っています。
ここまでのビジネスモデルに関するご説明に加え、ここからはネットワーク事業における事業環境についてお話しします。
ネットワーク事業のしくみ 〜事業環境〜
IT市場は、規模の拡大とともに技術も激しく変化しています。一つひとつのプロダクトでみると、新しい先端技術が誕生し、最初は先進的な技術を積極的に採用する企業での利用になりますが、それが一般化して多くのみなさまが保有するものになり、やがて他のかたちで補完されたり、IT環境が変わるにつれて必要なくなったりしていくというサイクルを経験します。
スライドの図のとおり、実際にプロダクトの売上高でみると、最初に市場に投入されてから、導入期には金額としてはゆっくり拡大し、ある時点から急激に成長することが多くあります。
もちろん、その中には成長期にたどりつけないケースもありますが、マクニカでは特に導入期・成長期とその前段階であるソーシング期を重要視しており、各段階に応じた戦略を実行しています。
また、当社がプロダクトを扱う中で、何度もこのサイクルを繰り返し経験してきましたので、とりうる戦略も熟知し、経営資本の積み上げも進んでおり、ビジネスの成功確度が高い状態が作れています。
ネットワーク事業のしくみ 〜高成長・高付加価値の仕組み〜
戦略について、簡単にポイントを解説します。まず、グラフのポイントAにあたる導入期では、新規のプロダクトを市場に展開した直後のフェーズで、顧客のほうでは、課題自体が顕在化しておらず、このプロダクトの存在も知られていません。よって、需要も極めて限定的です。
ただ、世の中には、自分の組織の課題を深く理解して、新しい先端技術を使って解決したいと考えているイノベーター顧客が存在します。イノベーター顧客は、各企業の文化による新しいものを受け入れる素地の違いもありますが、多くの場合は、新しい先端技術を積極的に採用して「変革したい」という考えを持った顧客企業です。
マクニカは、これまでに先端技術を中心に取り扱ってきましたので、イノベーター顧客基盤が構築できており、どの企業のだれに紹介すれば良いかすぐにイメージできます。そしてそのイノベーター顧客に、その組織の潜在的な課題の解決のために先端プロダクトを導入してもらうと、それが事例となって、他の企業に横展開しやすくなります。
そして、このような事例、ユースケースを早期に獲得することが、今後の展開における優位性につながっていきます。
このようなことは、外資のスタートアップのITベンダーには非常に困難です。そこでマクニカは、過去の知見やヒューマンネットワークなどの経営資本を活かしながら、新しい技術を持つ新興ITベンダーと一緒に先端プロダクトを成長の軌道に乗せるための活動をしています。
その後、導入期から成長期に移行すると、さらなる認知拡大や拡販のための販売チャネルの構築がITベンダーの抱える課題に変わります。また、この段階では、市場の拡大とともに競合製品や新規代理店の参入が相次ぎ、競争が激化します。
よって、このフェーズでは、市場への拡販につなげるため、より戦略的なマーケティング活動やシステムインテグレーターなどをはじめとするパートナーとの協業が、必要不可欠となります。
マーケティングにおいては、商品の特長や利点・導入時のリスクなどを広く伝える導入期のマーケティングとは異なり、具体的な活用事例や他の商品やサービスと比較した上でのメリットなどをお伝えすることで、導入期に獲得した知見を提供しています。
また、当社は独立系ディストリビューターであるため、さまざまなパートナーと協業することが可能であり、過去からも幅広いパートナーとの協業実績があります。
パートナーには、拡販していく上で必要となる営業・技術トレーニングやエンドユーザー顧客に対するサポート体制を支援していきますが、導入期での経験があるからこそ、このような支援を提供することができます。
こうすることで、マクニカが市場をリードするデファクトスタンダードを確立し、競合製品や新規の代理店が相次ぐ中でも、他社に先駆けたスピードで成長を実現しています。
そして、このように最先端技術を他社に先駆けて取り扱い、チャネルを使った拡販体制をいち早く構築することによって、市場占有率を高めることが、高成長・高付加価値を実現するしくみとなっています。
ここまでが、高成長・高付加価値を実現するためのしくみに関する解説ですが、マクニカではそもそもこのような最先端技術・ソリューションをどのように見つけ出しているのか、マクニカが重要視しているソーシング期におけるしくみも解説します。
ネットワーク事業のしくみ 〜新たなビジネスを生み出すしくみ〜
マクニカが最先端技術を他社に先駆けて見つけることができる理由は、ヒューマンネットワークがあるからです。
これまでにビジネスをゼロから立ち上げ、ITベンダーと共に成長する成功体験が、マクニカのブランドと仕入先との信頼関係をさらに強固なものにしています。
人財の流動性が高いIT市場では、元仕入先担当者の転職先から声がかかるケースや仕入先の経営者が新たに創業するケース、イノベーター顧客から紹介されるなど、さまざまなケースがあります。一緒に体験した成功や経験を通して築いた信頼関係が、マクニカの社会関係資本をさらに増強させ、まだ知られていない新たな技術のソーシングにつながっています。
このようにマクニカのビジネスは、1つの先端プロダクトの成功が次の最先端プロダクトの成功確率を向上させるというしくみになっており、これによって、ネットワーク事業の高成長・高付加価値が実現できています。
詳細については、ぜひ統合報告書43ページをご覧ください。
LIMITLESS 2024のポイント解説
ここからは、半導体・ネットワーク事業のしくみをご理解いただいた上で、マクニカが目指すVisionとその実現に向けた“変革”についてご説明します。
長期経営構想 Vision2030
マクニカは、2030年に「豊かな未来社会の実現に向けて、世界中の技と知を繋ぎ新たな価値を創り続けるサービス・ソリューションカンパニー」になることを掲げており、長期経営構想の「Vision2030」では、社会的価値と経済的価値の両立を目指しています。
社会的価値については、事業を通じて3つのマテリアリティに関連する社会課題の解決に取り組み、未来社会の発展を牽引することを目指しています。経済的価値については、2030年の目標数値として、売上高2兆円以上、営業利益1,500億円以上、営業利益率7.5パーセント以上、そしてROE15パーセント以上の実現を目指しています。
ビジネスモデル変革
この「Vision2030」の実現に向けて、マクニカでは、ビジネスモデルの変革に着手しています。
長年、半導体・ネットワーク事業の成長を支えてきた高付加価値ディストリビューションモデル(VAD)の拡大に加えて、マクニカ自身が自社製品・自社サービスを開発するサービス・ソリューションモデルへの変革を目指していきます。
サービス・ソリューションは、半導体・ネットワークで培ったサイバーとフィジカルの強みを活かして、仕入先やお客さまをはじめ、研究機関や行政機関などのパートナーと共創することで独自価値のあるサービスやソリューションを創出するビジネスモデルです。
そして現在では、この新たなビジネスモデルを中心にCPSソリューション事業を推進しています。
CPSソリューション事業
CPS(Cyber-Physical-System)とは、実世界(フィジカル空間)にある多様なデータを収集し、仮想空間(サイバー空間)に取り込んでデータの分析・知識化を行い、そこで創出した情報や価値によって産業の活性化や社会課題の解決を図るシステムです。
マクニカのCPSソリューション事業では、6つのテーマを軸に事業を進めており、最終的にはこれらの領域で自社サービス・ソリューションを提供していくことを目指しています。
各テーマにおいては、マクニカのホームページにも取り組みの詳細が掲載されていますので、そちらをご参照いただければ幸いです。
IT・DX戦略
そして、ビジネスモデルを変革していくためには、基盤となるコーポレート機能の強化も必要不可欠となります。
IT・DX戦略では、Visionの実現に向けて戦略的なロードマップと、変革・成長・基盤の3つの施策に取り組んでおり、これらの具体的な取り組みが統合報告書に紹介されています。
半導体事業のセクションでご説明したように、マクニカはIT・DXを活用したビジネス展開でも他社と異なる競争優位性をもっています。
これらの取り組みを推進する中で、DX人財を育成していくとともに、最終的には収益性の向上や直接的な利益貢献につながることを目指して、引き続き、邁進していきます。
取締役会変革
また、当社は2024年6月から監査等委員会設置会社へ移行しました。今回の機関設計変更は、特に企業としての競争力を高めるための選択でしたが、権限移譲による執行機能の強化や監督機能の強化、そして監督と執行の分離を明確にして、“建設的な対立構造”を築くことがポイントとなっています。
マクニカの企業文化である執行側への権限委譲を進めることで意思決定の迅速化を図る一方、取締役会は中長期的な企業価値の向上に資する議論に集中していく体制としました。
取締役会の変革によって、企業としての変革を加速させ、競争力を高めていきます。
対話を通じた企業価値向上
IR活動においても、昨年度は、「JPXプライム150指数」や「日経インデックス400」銘柄に選定され、当社を評価していただくステージが変わってきたことを実感しています。
私自身も昨年度は100件を超える投資家面談に出席し、自ら株主・投資家のみなさまと対話をしたことで、多くの気づきが得られました。
引き続き、経営トップがIRに積極的に参加することで、投資家視点の客観性を持つとともに、マクニカの魅力と成長性をお伝えできればと思っています。
最後に
本日の説明会で、マクニカは2030年に向けて、「ビジネスモデルを変革し、サービス・ソリューションカンパニーを目指す」とご説明しました。
今までは、企業向けのBtoBのビジネスモデルがメインであり、知る人ぞ知るマクニカで、十分だったかと思いますが、ビジネスモデルの変革とともに、自治体、官公庁向けのサービスやソリューションといったビジネスが拡大していく中で、一般生活者の方々にも、当社のことを知っていただくことが重要となっています。
冒頭でもお伝えしたとおり、新たに始めたブランドコミュニケーションですが、ブランドコンセプトをもとにブランドムービーも作成し、先日、マクニカ初のテレビCMを放映しました。
ほんのわずかな露出ではありましたが、目にした方からは、「メッセージに共感できた」「何を目指しているのかがわかった」などのうれしいお声をいただいています。
今後は、さらに“先端技術をみんなのものに。タネまく、マクニカ”という企業メッセージを深掘りし、多くの方々がマクニカを知り、その未来のビジネスに期待していただけるように、さまざまな発信をしていく予定です。
ステークホルダーのみなさまにも、こうした価値創造の情報を共有し、共に企業価値向上を行っていきたいと考えていますので、ぜひともご期待いただければと思います。
本日は、マクニカのためにお時間をいただき、ありがとうございました。本日の説明会が、当社をより深く知っていただく機会となれば幸いです。
質疑応答:半導体の市況と今後の見通しについて
司会者:「半導体の市況と今後の見通しを教えてください」というご質問です。
原:みなさまのご関心の高い話題だと思います。現在は、10月28日に予定している第2四半期決算発表前のサイレント期間ということもありますので、当社の業績や今後の見通しについての詳細コメントは差し控えさせていただきます。
半導体の世界的な市況情報に関しては、大きく2つの流れがあります。1つは、AIに関わる半導体市場と、もう1つは、日本が特に得意とする産業機器市場や車載市場となります。
半導体市場全体としては、AIに関わるビジネスが好調に推移し、AI向け高性能サーバー向けのGPUやメモリーなどの販売が回復しています。今後も、PCやスマホにAIの機能が追加されていくことになりますので、より一層需要は伸びていくことが予想されています。
もう1つの産業機器市場や車載向け市場のうち、車載市場については、車の生産台数自体は大きく増加していないものの、より安全、高度に車をコントロールするための機能などが、どんどん追加されてきています。
これらを実現するために、多くの新しい半導体が採用されていますので、車載市場向けの半導体の需要は、堅調に推移しているところです。
そして、産業機器市場ですが、足元では、中国経済の低迷やお客さまの在庫調整などもあり、世界的に需要が落ち着いている状況となっています。一部、半導体製造装置関連では、回復の兆しがあるものの、しばらくこの低迷は続くものと予想しています。
一方で、2025年から2027年の3年間に、過去最高の4,000億ドルとなる設備投資が、AIやデータセンター向けデバイスの開発投資向けに見込まれているというような明るい話題も出てきていますので、来期中の回復を期待しています。
いずれにしても、半導体の市場は、幅広いアプリケーションで使用され、我々の生活になくてはならない重要な製品となっています。
コロナ禍の特需を経て、中国経済の低迷の影響もあり、昨年からは一次的な需要の停滞もありましたが、今後は、確実に需要が戻ってくると期待しています。
質疑応答:為替変動の業績への影響について
司会者:「為替変動の業績への影響について教えてください」というご質問です。
原:ここ2年ほど、大きな為替の動きがありましたので、みなさまご関心あるご質問かと思います。結論を先に申し上げると、当社の経常利益においては、影響は限定的かと思います。
まず当社は、多くの取引において為替水準に応じた販売価格で取引をしているため、中期的には当社利益に対する為替影響は小さいです。
一方で、昨今のように短期的に為替レートが変わると当社の業績にさまざまなかたちで影響します。
例えば急速な円安は、半導体事業にはプラス、ネットワーク事業にはマイナスに作用し、それぞれの影響が相殺されるかたちになります。比較すると、半導体事業の規模のほうが大きいため、急速な円安は業績にややプラスとなる傾向があります。
逆に急速な円高はややマイナス傾向となりますが、当社では、これら為替変動による影響を小さくするため、為替ヘッジを行っていますので、総じて、経常利益への影響は限定的と言えます。
質疑応答:M&Aに対する考え方について
司会者:「M&Aに対する考え方を教えてください」というご質問です。
原:当社は、将来の成長に向けて積極的に投資を行っており、M&Aも有効な手段と考えています。
現在、「Vision2030」に掲げた「サービス・ソリューションカンパニー」になるという目標の実現に向けて精力的に活動していますが、CPSソリューション事業において、まだ足りていない組織能力、「ミッシングケイパビリティ」があると考えています。
統合報告書のCEOメッセージでも記載していますが、それらにはプロジェクト・マネジメントやソフトウェア開発、顧客と協力して社会課題を理解し解決する力などさまざまなものがあります。これらを補完するのに有効な対象先があれば、M&Aは選択肢になるかと思います。
半導体事業・ネットワーク事業に関しては、M&Aの対象は主に海外になるかと思います。これは当社が海外のより高い市場成長を取り込むと同時に、主要な仕入先に選ばれ続けるには、各国のローカル顧客の数や取引規模が重要になると考えているからです。
当社は、これまでも海外の同業者の買収により、グループとしての力を強化してきましたので、これを継続していきたいと考えています。
質疑応答:株主還元の方針について
司会者:「株主還元の方針を教えてください」というご質問です。
原:株主還元については、将来の事業展開と経営体質の一層の充実・強化のために必要な内部留保を勘案するとともに、株主のみなさまに対しては安定した配当の継続に努めることを基本的な方針としています。
2022年度から始まった現中期経営計画においては、各事業年度の連結業績や長期経営目標であるROE15パーセントなどを勘案しながら、連結自己資本配当率(DOE)4パーセントを目安として安定的かつ継続的な配当を実施するとともに、機動的な株主還元の手段として資本効率や市場環境などを考慮の上で、自社株買いを実施し、総還元性向30パーセントから50パーセントを目指しています。
2023年度については、1株あたり200円の年間配当額に加えて、50億円を上限とする自社株買いを実施しており、この結果、DOEは5.4パーセント、総還元性向は35.5パーセントとなりました。
また、2024年度の配当予想については、1株あたり210円の年間配当を予定しています。
なお、こちらは株式分割前の金額となります。
質疑応答:統合報告書のおすすめ記事について
司会者:「統合報告書の中で原社長のおすすめ記事を教えてください」というご質問です。
原:非常に悩ましいところですが、個人的には最後のページである「マクニカの原点」がおもしろいかと思います。
私も、「マクニカとはどんな意味?」とたまに聞かれるのですが、この記事には、マクニカの社名の由来について書いています。
実はマクニカは、前身のジャパンマクニクスをベースにしたものなのですが、そもそも「マクニクス」自体が造語で、「Masters of Advanced Concept in Electronics」からとったものです。
要するに、エレクトロニクスの先端技術のプロフェッショナル集団を指していて、創業者の神山自身がエンジニアだったことから、海外の仕入先との交渉の際には説得力を持ったようです。
また、「ジャパン」とわざわざ社名に入れているところも味わい深く、これも最初から米国の新興半導体メーカーと契約することを想定していましたので、創業の1970年代当時、高成長であった日本のエレクトロニクス市場向けに販売していくというビジネス機会を想像させたということです。
そして、このベンチャースピリットやこれらの経験を通して生まれた強みは、50年以上経ち、グループ規模が大きくなった今でも受け継がれています。
マクニカの原点や社名の由来をご理解いただいた上で、統合報告書を読んでいただければ、当社の大事にする価値観や文化がよりイメージしやすくなるかと思いますので、おすすめさせていただきました。
原氏からのご挨拶
冒頭でも申し上げましたが、この統合報告書は、マクニカのLIMITLESSな成長に向けた現場を表現する活動だと考えています。
「よくわかる マクニカのしくみ」をテーマに制作したこの統合報告書が「Vision2030」に向けて変わり始めている当社にとっての変革の軌跡となっていきます。
ぜひお読みいただくことで、当社へのご理解を深めていただくとともに、今後の期待を膨らませる一助となれば幸いです。
本日はご清聴ありがとうございました。
アンケート
司会者:原社長、ありがとうございました。
最後にみなさまにお願いがあります。
今後のIRに関する取り組みや、サービスの向上につなげるため、最後に、アンケートのご協力をお願いします。ぜひみなさまの忌憚のないご意見や、ご要望などを頂戴できますと幸いです。
アンケートはこちらから:
https://forms.office.com/r/RhD9Zityt8