ポールHD Research Memo(3):事業間シナジーによる事業拡大サイクルを実現(2)

2024年10月18日 16:03

*16:03JST ポールHD Research Memo(3):事業間シナジーによる事業拡大サイクルを実現(2)
■ポールトゥウィンホールディングス<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0365700?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><3657></a>の会社概要

2. 事業内容
同社グループは、ゲーム、ネット、EC、アニメ、テクノロジー等を主要対象領域としながら顧客のサービスやプロダクトのライフサイクルに応じたソリューションを提供するサービス・ライフサイクルソリューション事業を手掛けている。「サービス・ライフサイクル」は、全てのサービスが生まれてから廃止されるまでに共通して発生する5段階のステップ、と定義されている。具体的には川上から「SS:戦略(設計、開発、実装などの方針を定義する段階)」、「SD:設計(実際に設計、開発する段階)」、「ST:移行(テストを行い、開発から本番運用状態へリリースする段階)」、「SO:運用(変化する環境に対応しながらサービス提供を継続する段階)」、「CSI:継続的サービス改善(サービスの有効性及び効率性を継続的に改善する段階)」の各段階で構成されている。川上から川下まで全工程に対応できるリソースやナレッジを1社で有する企業は少ないのが現状であり、各段階でアウトソーシングのニーズが発生している。例えば、「SS:戦略」では「アイディアはあるが経験がなくどのように設計・開発するべきか分からない」、「SD:設計」では「PMやエンジニアやデザイナーといった設計に充てる人材が足りない」、「ST:移行」では「サービスリリース可能な品質なのか確認・判断ができない」、「SO:運用」では「ユーザー対応やサーバーをチェックする人手が足りない」、「CSI:継続的サービス改善」では「日々の業務に追われサービスの改善まで手が回らない」などがある。こうしたニーズや課題に対して同社は、グループ一丸となって価値あるソリューションを提供している。

サービス・ライフサイクルの観点から同社が提供しているソリューションの一例を挙げると、川上から「プロデュース(制作)」の段階ではゲーム・アニメ・音楽の制作、舞台の企画、ウェブサイトの制作、システムの開発、「チューニング(調整)」の段階では難易度調整、「デバッグ(検証)」の段階では品質検証、システムテスト、セキュリティ診断、ユーザーテスト、「モニタリング(監視)」の段階では監視・広告審査、インフラ運用、サーバー監視、「サポート(支援)」の段階では運営サポート、カスタマーサポート、アクセシビリティチェック、「ローカライズ(地域化)」の段階では翻訳、多言語音声収録、ローカライズQA、「プロモーション(宣伝)」の段階では販売施策・Webサイト構築、PV作成、イベント企画、グッズ制作、などの各種ソリューションを提供している。

同社グループでサービス・ライフサイクルの川上から川下まで一気通貫でソリューションを提供できる体制を整えていることは、顧客にとって利便性があるほか、同社の業績にもプラスの影響がある。例えば、メディア・コンテンツ事業で創出したIP(知的財産)を起点に、アニメ制作、ゲームパブリッシング、海外進出支援などの受託につなげることによってグループ内で新たな収益機会を創出・獲得できる。同社は各事業間での連携とクロスセルによる事業拡大サイクルの創出を重視しており、買収後のシナジーとしてクロスセルを創出できるかという観点でM&Aを実施する方針だ。

以下、業務区分ごとにそれぞれの内容を概観する。

1) 国内ソリューション
2025年1月期第2四半期の売上高に占める割合は50.5%(前期は51.6%)であり、同社の主力事業となっている。ポールトゥウィン、(株)MRAIt Service Design、(株)Ninjastars、(株)ADOORなど国内子会社において、ゲーム分野、Eコマース分野、Tech分野の顧客に各種サービスを提供している。ゲーム市場向けにはデバッグ、カスタマーサポート、ローカライズ、海外進出支援に関するサービスを、Tech市場向けにはソフトウェア第三者検証、環境構築、サーバー監視、データセンター運営、キッティングに関するサービスを、Eコマース市場向けにはモニタリング、カスタマーサポートに関するサービスを提供している。企業活動においてDXによる生産性向上ニーズが高まるなか、近年はTech分野の業績拡大に注力しており、特に第三者検証とシステム開発を伸ばす方針である。システム開発を受託・納品した後に、第三者検証の受注につなげるといったクロスセルによる事業拡大サイクルの創出を期待できるためだ。実際、2025年1月期第2四半期(単体ベース)においては、Tech分野の増収率が前年同期比2ケタ増と大きく伸びており、同社の戦略が順調に業績に反映されている。

2) 海外ソリューション
2025年1月期第2四半期の売上高に占める割合は37.2%(前期は33.5%)であり、国内ソリューションに次ぐ事業規模となっている。PTW International Holdings Limitedを中心に各在外子会社を通じてサービス・ライフサイクルの全工程を一気通貫で手掛けている。具体的には、デバッグ、ローカライズ、音声収録、カスタマーサポート、製品開発サポート、グラフィック開発などの各種サービスを提供している。国内のゲーム市場は2兆円超(経済産業省の調査による)と大きな規模ではあるものの、世界のゲーム市場規模はさらに大きく、成長性も相対的に高いことから、今後、海外ソリューションを積極的に伸ばす方針だ。この方針の下、営業人員の増員やM&A推進責任者の設置とあわせて、新規事業の取捨選択、事業基盤の再構築などを実施している。営業人員の増員によって大型案件の積み上げも順調に進んでおり、今後の業績拡大に期待がかかる。また、2024年9月にはゲーム開発アウトソーシング事業を運営するGhostpunch Games, LLC(アメリカ、フロリダ州)の事業を譲受し、サービス・ライフサイクルソリューションの提供領域をさらに拡充している。

3) メディア・コンテンツ
2025年1月期第2四半期の売上高に占める割合は12.3%(前期は14.9%)となっている。国内ソリューション、海外ソリューションに次ぐ新たな収益基盤として、2015年から本格的に開始された比較的新しい業務だ。(株)HIKE、(株)アクアプラス、(株)しいたけデジタル、Palabra(株)などの国内子会社において、アニメ制作、ゲームパブリッシング、グラフィック開発、マーケティング支援、バリアフリー字幕・音声ガイド制作などに関する各種サービスを提供している。メディア・コンテンツにおいては、IPの創出・獲得と360°メディアミックス(アニメ、ゲーム、MD)による収益機会の最大化を戦略として掲げている。これは、創出したIPを起点に、アニメ化、グッズ化、ゲーム化、海外展開などへとつなげることにより、新たな収益機会をグループ内で生み出すものだ。また、制作の受託に加えて、制作出資も積極的に推進することにより、収益性が高いライセンス収入を拡大する方針も掲げている。ライセンス収入に関しては、ヒットの如何によってばらつきがあるものの、出資・元請け制作タイトルとして劇場アニメ「数分間のエールを」、TVアニメ「この世界は不完全すぎる」などの実績がある。今後も実績を上げるなかでヒット作品創出に関するノウハウがグループ内に蓄積されていけば、ライセンス収入の安定した伸びが期待できる。収益性の高いライセンス収入の増加に伴って、メディア・コンテンツの収益性が上昇する可能性も十分にあると弊社は見ている。

同社は事業ポートフォリオマネジメントの方針として、市場で安定した地位を築いている国内ソリューションを中心に生み出したキャッシュを市場拡大の余地が大きい海外やメディア・コンテンツといった新規事業に振り向ける戦略をとっている。今後も、既存事業をしっかりと成長させながら、成長余地の大きい市場への投資を進めることで、業績のさらなる拡大を実現する構えだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)《HN》

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