相場展望10月17日号 米国株: 半導体関連の中で業績が、製造装置と人工知能とで2極化 中国株: スタグフレーション「不景気、デフレ進行、食品が上昇」に陥る 日本株: 10月の日経平均の強さの要因
2024年10月17日 10:55
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)10/14、NYダウ+201ドル高、43,065ドル
2)10/15、NYダウ▲324ドル安、42,740ドル
3)10/16、NYダウ+337ドル高、43,077ドル
【前回は】相場展望10月14日号 米国株: インフレ鈍化が止まり、金利引下げどころが引上げの可能性増す 日本株: (1) 自民党選挙公約とコメント (2) 上値が重くなる日経平均
●2.米国株:半導体関連の中で業績が、半導体製造装置と人工知能とで2極化
1)米国株高要因
・決算シーズン
・大統領選による大統領候補者発言による景気刺激策が支え。
2)10/15のNYダウ▲324ドル安の要因
・半導体製造装置大手ASMLが▲16.2%安で半導体株指数(SOX)が▲5%超下落。ASMLの決算内容と見通しが嫌気され、売りが波及した。
・米国政府による先端半導体の輸出規制の検討が伝わった。
・原油先物価格が下落に伴い石油関連株が売られた。
3)10/16のNYダウは+337ドル高の要因
・銀行大手の好決算発表を好感。
・小型株の大幅上昇。
・前日に大幅下落した半導体株指数(SOX)が小康。ただ、半導体製造装置大手ASMLは前日に26年ぶりとなる▲16.2%安したが、10/16も▲6.4%安と下落が続いている。その特に、受注の大幅減が明らかになったことが大きい。半導体関連の中で人工知能(AI)のエヌビディアの業績は好調であり、業界の中で2極化しきていることが、新たな局面になりつつある。
・10/16の関連株価指数の前日比の伸び
NYダウ +0.79%高
ラッセル2000 +1.68%高 : 小型株指数
S&P500 +0.47%高
ナスダック総合 +0.28%高
SOX +0.21%高 : 半導体株指数
●3.選挙前の米国株高で「ハリス大統領誕生」の確率は80%以上との見方(Forbes)
●4.蘭ASMLの10/15株価▲16%安、受注低迷や2025年見通しの下方修正がサプライズ(ロイター)
1)オランダの半導体製造装置メーカー。
2)1日の下げ幅は1998年以来、最大。
●5.金融政策は依然インフレ抑制に効果を上げている=サンフランシスコ連銀総裁(ロイター)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)10/14、上海総合+66高、3,284
2)10/15、上海総合▲83安、3,201
3)10/16、上海総合+1高、3,202
●2.中国株:中国経済は、スタグフレーション「不景気の中、デフレ進行・食品が上昇」に陥った
1)中国はデフレが進行し、経済成長に赤信号が点滅
・中国経済成長が低迷し、賃金が減少、失業率が上昇、競争激化で価格低下。しかし、食料品は上昇という状況にある。国民の生活にとって厳しい状況が続いている。
・中国の9月消費者物価指数(CPI)は予想を下回る上昇、生産者物価指数(PPI)は24カ月連続の下落。
前年同月比 予想
9月消費者物価指数 +0.4%上昇 +0.6%上昇
食品・燃料除くコア +0.1%上昇
9月生産者物価指数 ▲2.8%下落 ▲2.6%下落:2年連続の前年割れ
9月食品全体の物価 +3.3%上昇
9月生鮮野菜価格 +22.9%上昇
2)家計資産の7割を占める住宅投資が価格下落で、家計は守りの姿勢が強まる
・家計資産の7割を占める住宅投資は、住宅価格は下落し、売りたくても売れない状況が続いている。中国全体の「空き家」は9,000万戸と住宅過剰が深刻である。そのうち、5,000~6,000万戸が投機目的の購入と言われている。住宅は損失覚悟で売りたくても、地方政府の売却価格規制があって売りに売れないというジレンマに陥っている。
・一方、食料品価格は急伸している。
生鮮野菜:9月は前年同月比+22.9%、8月は+21.8%上昇と急騰している。
豚肉も+16%上昇と高い。
・家計支出は抑えても、食料品は買わざるを得ない。その食料品が大幅上昇しており、庶民の生活苦が広がっている。
・上海政府は5億人民元(約103億円)の一時金を配布すると明らかにしたが、1人当たりにすると雀の涙ほどの少額である。これでは、消費拡大にはつながらない政策といえよう。上海政府でさえ財政状況が逼迫していることを示唆しているかもしれない。
・新車の値下げ競争による自動車販売店が受けた今年1~8月の損失は1,380億元(約2兆8,000億円)に達したと、中国自動車流通協会が9月下旬に政府に報告書を提出している。自動車メーカーも政府の補助金で支援されてきたが、経営は苦境にある。
・この状況は、日本の1970年代のオイルショック後の状態に匹敵する。
3)中国の経済成長を牽引した4つの成長エンジンの失速続く
(1)不動産の低迷 消費者景況感が冷え込み、住宅購入意欲が低下。
地方政府財政の4割を土地売却益が担ったが、不動産バブル崩壊で地方財政を直撃。
結果、
インフラ投資の減退。
中国のインフレ投資は地方政府が主体で実施してきていた。
給与の減額。
公務員の給与カット、支給の遅延。
解放軍に支給してきた手当の減額。
年金基金の枯渇化が深まる。
年金支給の減額、遅延で家計を圧迫。
(2)製造業の輸出減速 中国製品の安値・大量流入で諸国は貿易障壁を引上げ。
中国の輸出は減少傾向。
9月輸出は予想を大きく下回り、成長牽引役にブレーキ。
前年同月比 予想 8月
輸出 +2.4%増 +6.0%増 +8.7%から9月低下
輸入 +0.3%増 +0.8%増
(3)インフラ投資 地方政府の債務・財政悪化が直撃し大幅ダウン。
(4)消費者支出 家計資産の7割が不動産、不動産の下落で家計財布の紐を締める。
給与カット、失業増で家計収入が減少。
食料品価格の高騰で、その他支出は節約。
中国経済の低迷を裏打ちする「原油輸入」の減少
・燃料需要が低迷し、9月は前年比▲0.6%減少と、5カ月連続の前年比減少。
・1~9月の輸入量は前年比▲2.8%減少。
4)世界銀行は10/8、「中国経済は近隣諸国にプラスとなっていたが、今後は重し的な存在に転じるだろう」との見通しを示した。そして、「中国経済は短期的効果のある財政支援ではなく、構造改革が不可欠」だと指摘した。
5)中国は国債6兆元(約126兆円)発行予定も、中国経済立て直しには少額すぎる
・地方政府傘下の融資平台だけで負債総額が2,000兆円も抱えているという。日本が不動産バブル崩壊の立て直しに100兆円投入した。GDPでは中国は、日本の約5倍である。
・中国の不動産部門のGDPに占める割合は、家電・建材分野も含むと3割を占めるといわれている。6兆元は中国経済の規模から、中国経済の立て直しには「あまりにも少額」といわざるを得ない。
・しかも、中国経済の成長エンジンの4つのうち、まだ元気なのが「輸出」。その輸出も、西欧諸国の関税引上げを受け、減速してきた。アジア・アフリカなどの諸国に輸出増加させているが、遅かれ早かれ貿易摩擦に見舞われるだろう。成長エンジンの4つともが止まる危機に瀕している。
・中国経済は国務院を中心に首相が担ってきた。ところが、李克強・首相の退任に代わって李強・前上海市長が新首相に就任した。李強氏は上海市長時代にゼロコロナ政策を徹底に邁進し、上海経済を徹底的に低下させた人物であり、過去経歴をみても経済に疎いようだ。李国強という経済官僚の首相から、イデオロギー中心の首相に交替した。かつ、その首相の権限は縮小され、共産党に一部権限が委譲・強化された。
・中国経済は、景気後退とデフレが共存するという極めて困難なスタグフレーションに陥った。加えて、家計収入は減るのに、食料品価格は上昇している。この重症のスタグフレーションから抜け出せるか?日本は「失われた30年」と言われたが、中国は「失われた50年」と言われないようにしてほしい。手腕を問われる。
●3.中国、9月の新規銀行融資は+1.59兆元増加、予想+1.87兆元は下回る(ロイター)
1)8月の+0.9兆元よりは上回ったが、昨年9月の+2.31兆元からは下回った。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)10/14、祝日「スポーツの日」で休場
2)10/15、日経平均+304円高、39,910円
3)10/16、日経平均▲730円安、39,180円
●2.日本株:10月の日経平均の強さの要因
1)10月の日経平均の強さの要因
・米国株高(四半期決算シーズン)期待。
・衆院選で経済マイナス要因は封印。
・日経平均は、8/5を底にした上昇線を下回ることなく伸びを維持。
・米国エヌビディアの決算発表を前に、半導体株を中心に日本企業の業績上向くとの期待の高まり。
・2月期や8月期企業の好決算発表。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4661 OLC 業績回復期待。
・6383 ダイフク 業績向上期待。
・7581 サイゼリヤ 好業績。
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