丸運 Research Memo(5):2025年3月期予想は運賃・料金改定等の寄与で増益見通し

2024年10月1日 13:45

*13:45JST 丸運 Research Memo(5):2025年3月期予想は運賃・料金改定等の寄与で増益見通し
■業績動向

1. 2024年3月期の業績概要
2023年3月期の連結業績は、営業収益が44,992百万円(前期比3.4%減)、営業利益が509百万円(同15.9%増)、経常利益が704百万円(同15.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が416百万円(同31.7%増)となった。新型コロナウイルス感染症の5類移行によって社会活動の正常化が進んだものの、原材料・燃料・食料の価格高騰、欧米諸国における急激な利上げ、中国経済の低調等、依然として不透明要因が多く、とくに、国内では個人消費の伸び悩みから、全体的に荷動きが低調となっている。

燃料費の高騰については、料金の改定やサーチャージの導入によって対応している。さらに、2024年問題に象徴されるドライバー不足に伴う労務費の上昇に関しては、顧客の多くが理解を示したことから、運賃改定がスムーズに進み利益面での堅調さにつながった。また、これまで収益を圧迫する要因となっていた基幹システムの導入費も、落ち着きつつあることも増益要因になった。基幹システムの導入は、稼働したことによってビジネスの効率化が進展するため、今後は業績へのプラス要因になることを付け加えておきたい。

分野別で見ると、一般貨物はBtoBビジネスであることから、コロナ禍に伴う社会活動制限の影響を受けたが、行動制限の緩和とともに、一部の既存貨物は上向きに転じた。他方、半導体不足によって、自動車・家電等が減産となった影響や、物価高騰の影響で個人消費が伸び悩み、一部の素材物流が停滞したことが減収要因として大きい。とりわけ、中国経済の減速から同国向け輸送全般が低迷している影響も受けている。

(1) セグメント別動向
a) 貨物輸送
貨物輸送の営業収益は22,433百万円(前年比3.8%減)、セグメント利益は64百万円(同37.9%減)となった。高機能半導体の輸出減などによって、素材物流が全般的に低調だったことが伸び悩みの背景にある。また、一部の物流拠点において大規模修繕費用が発生したことも収益を圧迫した。

b) エネルギー輸送
エネルギー輸送の営業収益は15,611百万円(前年比1.4%増)、セグメント利益は452百万円(同63.2%増)となった。石油部門では、石油輸送事業が石油製品の内需が減少傾向にある中で暖冬などのマイナス要因も重なり、輸送数量が前年比2.2%の小幅減少となったほか、潤滑油・化成品事業も、溶剤などの内需が減少しており、自動車関連のプラス分はありながらも、トータルで同1.5%の小幅減となった。しかしながら、運賃改定効果に加え、車両投資の一巡による減価償却費の減少や基幹システム導入費用の減少により、全体としては増益を確保した。

c) 海外物流
海外物流の営業収益は5,134百万円(前年比15.0%減)、セグメント利益は65百万円の赤字(前期実績は55百万円)となった。半導体原料の輸出減、中国における日欧自動車メーカーの販売不振で部品メーカーの稼働が低下したなどの影響から苦戦を強いられた。一方で、中国から日本に向けての大型設備輸送業務の一貫受注やベトナムにおけるレジャー用品取り扱い増など明るい材料もある。

d) テクノサポート
テクノサポートの営業収益は1,785百万円(前年比0.5%減)、経常利益は49百万円(同49.0%減)となった。製油所関連で産廃排出業務、荷役業務などの取扱数量が減少したほか、前期に計上した関係会社での退職金制度変更に伴う引当金の戻し等がなくなったことで減益となった。

(2) 財務状況
2024年3月期末の資産合計は前期末比799百万円減少し36,886百万円となった。このうち流動資産は627百万円減少し、このうち、現金及び預金に関しては260百万円減少、営業未収入金及び契約資産は207百万円減少となった。また、固定資産は172百万円減少した。他方、負債合計は前期末比1,324百万円減少し11,881百万円となり、純資産合計は同525百万円増加し25,004百万円となった。

財務体質は良好である。有利子負債を抑える傾向にあり、財務面は安定している。2024年3月期においては、短期借入金が前期末の1,444百万円から1,000百万円に、長期借入金が前期末の1,070百万円から370百万円にそれぞれ減少した。その結果、2024年3月期末の自己資本比率は67.1%(前期末は64.1%)と改善が進んでいる。

2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績予想については、営業収益で前期比1.8%増の45,800百万円、営業利益で同64.9%増の840百万円、経常利益で同33.4%増の940百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同36.9%増の570百万円を見込んでいる。会社側では、ドライバー確保の為のコストアップや引き続き貨物輸送需要は素材メーカーの減産を背景に伸び悩みを想定しているものの、前期に引き続いて、適正運賃・料金の収受がプラス要因となることで大幅増益となる見通しだ。

コロナ禍に伴う行動制限が解除されたことにより、日常生活が戻った格好だが、引き続き消費鈍化の影響から素材メーカーの物流が鈍く、国内の総貨物輸送量は依然として厳しい状況が続きそうだ。海外事業については、主力の中国が景気停滞となる一方、日本において既存顧客の輸出量が減少しており、楽観視はできない。そうした中で丸運<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0906700?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><9067></a>は海外事業では運賃の改定に取り組むほか、国際間の一貫物流に力を注ぎ収益アップを図る考えだ。

一方、再び原油価格の高騰により燃油費がさらに上昇した場合、収益を圧迫する可能性があるものの、サーチャージ制を導入しているほか、料金の改定の浸透によって、カバーできるものと想定できそうだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)《EY》

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