Aoba-BBT Research Memo(11):法人向け人材育成事業等を成長ドライバーとして飛躍(2)
2024年9月24日 14:11
*14:11JST Aoba-BBT Research Memo(11):法人向け人材育成事業等を成長ドライバーとして飛躍(2)
■今後の見通し
(2) インテンシブコース
Aoba-BBT<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0246400?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><2464></a>のUniversity事業では、市場環境の変化に伴いBBT大学及び大学院の本科コースの入学者数が減少傾向となっている。BBT大学に関しては、コロナで一時的に盛り上がったオンライン教育に対する需要が沈静化したこと、また大学院ではコロナ対応としてオンラインサービスを提供するビジネススクールが増加し、コロナ後も同サービスを継続していることから、競争環境が従前よりも激化していることが要因だ。また、最近はMBAの取得ニーズも以前よりも低下していることも要因となっている。こうした環境変化を受けて、同社ではリスキリング需要を取り込む格好でインテンシブコース(短期集中講座)に注力する戦略を打ち出している。
インテンシブコースは3ヶ月の短期集中講座(料金は税込33万円)で、時代のニーズに合ったプログラムを開発し、個人や法人向けに提供している。2024年3月期はBBT大学で新規開講した「デジタルファーストキャンプ」や「ファイナンスドリヴンキャンプ」がいずれも好評で、2025年3月期も継続して開講する予定となっている。プログラムの特徴は、実務に直結する内容を集中的に学ぶことができることや、受講生がアウトプットし講師や他の受講生と多くディスカッションすることで、理解するだけでなく実践できるスキルを身に付けることができる点にあり、競合サービスとの差別化要因となっている。また、講師やラーニング・アドバイザーなどの体制が充実しており、手厚いフィードバックやサポートを受けられる点も特徴となっている。さらには、受講生の熱量が高いこともあり、受講生同士のネットワークが構築できる点も魅力の1つと言えるだろう。
受講生の平均年齢層は40代後半で、中高年齢層のリスキリング需要を上手く取り込めている。厚生労働省の給付金対象プログラムとなっているため個人での申込が過半を占めるが、法人経由での申込も2期生以降は増加する傾向にある。2024年3月期の売上高は1億円弱となり、BBT大学の売上高が4.3億円だったので約2割を占めたことになる。2025年3月期は大学院でも講座を開講する予定にしており、売上高は1.2億円強を計画しており、年率2ケタペースでの成長を目指している。2024年10月より給付金の給付率が40%から50%に拡大することもあって、売上高は好調をキープするものと予想される。
顧客獲得施策としては、Web広告の効率的運用とグループ内の他のサービスの修了生に対する案内を行っていくほか、法人向けに関しては法人営業担当が商談の際に、同プログラムも案内するようにしている。新規講座の開発に関しては、引き続き時代のニーズにマッチしたプログラムを企画・開発していくほか、グループ内のリソースを生かせるような講座の開発を進めていく。
なお、本科コースにおける生徒獲得施策として、BBT大学では2割強を占める若者層へのプロモーション活動を継続していくが、今後は社会人を対象とした募集活動に注力することにしており、ターゲット層に合わせたWeb広告やセミナー開催によりリードを獲得していく。一方、BBT大学院に関しては、オンライン教育サービスに関する豊富な実績や「AirCampus(R)」をベースとした学習効率の高さといった強みを訴求していくとともに、厚生労働省の給付金対象プログラムとなっていることや、修了生のその後の給与水準がアップしていることなどをアピールしていく。また、以前は起業を目指す受講生が大半を占めたが、現状はCXO人材が受講するケースも増えてきていることから、CXO人材をターゲットにしたマーケティング活動なども進めていく。さらには、BBT大学と大学院の認知度向上を図るために、共同セミナーの開催も新たな施策として取り組んでいる。
なお、収益性向上施策としては前述のとおり、今まで独立していた組織を統合することで合理化を進めていく。現状、BBT大学と大学院で各10数名、BOND-BBTで5名の合計30名程度(準社員含む)で運営されているが、運営事務局やマーケティング部門を統合することでスリム化が図れる余地があると見ている。
(3) インターナショナルスクール事業
インターナショナルスクール事業については、国内外でオンライン国際教育に対するニーズが高まるなかで、複数のビジネモデルで事業成長を図っていく戦略だ。
a) 国内でのバーチャル展開
国内では国際バカロレア教育のさらなる普及拡大に向けて、高校生を対象にオンライン完結型またはブレンド型(リアルとオンラインの組み合わせ)の2通りの形態で「グローバル・リーダーシップ・ディプロマ」のプログラムを提供していく。2023年にはAJISで初の卒業生を2名(オンライン完結型)輩出したほか、提携校である(学)九州ルーテル学院でも1名(ブレンド型)輩出している。
b) 国内でのプラットフォーム展開
AJISだけではリソースが限られるため、国内では提携校を拡大しプラットフォーム展開による拡大も推進していく。第一弾として、2022年に九州ルーテル学院と包括連携協定を締結し、高校生向けを対象に国際バカロレアのカリキュラムの提供を開始した。九州ルーテル学院では2024年に大手半導体メーカーであるTSMC(台湾)の工場が開設されるのに合わせて、台湾から訪日する従業員の子女を受け入れる体制を整え、その一環として国際教育カリキュラムを提供するためにGLDプログラムを構築していたアオバがパートナーとして選ばれた。その他の高校においてもGLDプログラムを導入したいとのニーズがあると見ており、導入校数を広げていくことで国内事業を拡大する戦略だ。
なお、TSMC従業員の子女は150名程度で、うち130名程度は幼児から小学生だったようで、これら子女はPYPの認定取得校である熊本インターナショナルスクールに通学している。ただ、同スクールは中等部までしかないため、高等部に繰り上がる際には、九州ルーテル学院に入学する可能性が高い(2024年は数名の高校生が入学)。
c) アジア・オセアニア市場での展開
国際バカロレア機構において、DPを対象としたオンラインプログラムの試験的運用が2024年度から開始されることが決定し、2024年4月時点でアオバを含めて5校がオンライン校として認定された。このうちアジア・オセアニア地域(東京から時差±3時間以内)に関しては、アオバ1校のみで展開していくことになる※。現在、2024年度シーズンの開講に向けた生徒募集を行っている段階にある。アオバにて1人担当者を配置し、現地での広告出稿や現地エージェントとの協業のほか、国際バカロレア認定校でもMIP(中等部)までしか提供していない学校にコンタクトして、案内告知などを行いながら、生徒を獲得していく戦略となっている。地域によっては通常の高校に通いながら、DPのプログラムを別途オンラインで受講するといった生徒が出てくることも考えられる。
※ 残り4校のうち2校は中東地域、欧州、米州で各1校が認定された。
海外展開を開始するにあたって大きな投資は不要だが、オンライン教育対応の教員を2024年夏に2~3名増員する予定にしている。なお、試験的運用に関しては2025年までとなっており、その後特段の支障がなければ本サービスへの運用に移行する可能性が高いと弊社では見ている。同一エリア内で競合企業が増える可能性はあるが、アオバ1社だけで認知度向上のためのプロモーションを行うには限界があるため、むしろ複数社参入することで認知度が広がれば同社にとっても成長が加速する好機になると考えている。
d) オンラインコースの生徒目標
国内におけるGLDプログラムも含めたオンラインコース(対象は高校生)の生徒獲得について当初は慎重に進めていく方針で、生徒数としては2025年の20名から2027年に100名を目標としている。年間授業料が100〜150万円とすれば2027年に1〜1.5億円の売上規模となる見通しで、業績に与える影響は小さいが、将来的な成長ポテンシャルは大きい。
e) 収益性向上施策
今後の収益性向上施策として、前述したように2024年度より授業料の値上げを実施※するほか、AJBについては2025年3月末に小規模で運営していた芝浦キャンパスを閉校し、晴海キャンパスに統合することで事業効率を改善していく。課題は円安に伴う外国人教員の採用が厳しくなっている点が挙げられるが、授業料値上げを原資とした賃金改定などで対応していく考えだ。
※ AJISやMISTは2024年8月から始まるスクールイヤーから。AJBは2024年4月から実施。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《HN》