エージェント・インシュアランス・グループ Research Memo(1):2025年12月期以降も成長に期待
2024年9月20日 12:01
*12:01JST エージェント・インシュアランス・グループ Research Memo(1):2025年12月期以降も成長に期待
■要約
エージェント・インシュアランス・グループ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0583600?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><5836></a>は、個人及び法人に損害保険(ストック収益)と生命保険(フロー収益)をワンストップで提供している。同社は、保険業法の改正や損害保険会社による手数料ポイント制度(詳細は後述)の変更、保険代理店オーナーの高齢化などを背景に統廃合の進む保険代理店業界に対し、「保険代理店支援プラットフォーム」を提供し、積極的なM&A及び事業承継を推進し成長してきた。2016年1月~2024年6月までに566件の保険代理店を事業承継している。これらの多くは中小規模の損害保険代理店であるが、2024年4月には同社グループよりも事業規模の大きい、生命保険を主軸とする総合保険代理店ファイナンシャル・ジャパン(株)の全株式について、(株)SBI新生銀行から取得、第3四半期決算より連結業績への取り込みを予定している。このM&Aの実現により、同社は期初において2024年12月期営業収益は前期比118.8%増の7,763百万円、営業利益は同77.1%増の274百万円へ業績が大きく拡大する見通しを発表しているが、上期業績の高進捗を踏まえると会社計画の上振れ余地が高いと弊社では考えている。2025年12月期は買収したファイナンシャル・ジャパンの利益率改善に加え、既存事業の成長も続くとみられることから同社業績は順調な拡大を続ける可能性が高く、今後の業績見通しは明るい。
1. 2024年12月期上期の業績概要
2024年12月期上期連結業績は、営業収益1,922百万円(前年同期比14.1%増)、営業利益91百万円(同182.6%増)となった。国内事業ではビジネスモデルの根幹であるM&A及び事業承継の取り込みが促進したことで損害保険の売上が順調に推移、海外事業では損害保険を中心に法人案件・個人案件ともに増加し、売上が好調に推移した。また、既存顧客への生命保険のクロスセルも順調に進んだことで、営業収益及び営業利益は大幅に増加した。上期では累計35件のM&A及び事業承継を行い、顧客数は法人が2023年12月末比3.5%増の14,330社、個人が同5.0%増の149,699人、取扱保険料は同5.0%増の401億円へと各KPI指標は順調な増加を示した。第3四半期決算より新規連結されるファイナンシャル・ジャパンを除いた従来ベースの通期業績予想に対する上期時点での進捗率は、営業収益で46.5%(前年同期は47.5%)と前年並みだったが、営業利益では51.1%(同20.9%)と高く、エージェント・インシュアランス・グループの利益創出は同社の期初計画を上回って着地したとみられる。
2. 2024年12月期の業績見通し
2024年12月期の連結業績は、期初に計画した営業収益で前期比118.8%増の7,763百万円、営業利益で同77.1%増の274百万円を現時点では据え置いている。ただし、上期の業績進捗は期初の会社想定を上回っているとみられ、業績の上振れへの期待も高まる内容だ。また、2024年4月には同社グループよりも事業規模の大きい、生命保険を主軸とする総合保険代理店ファイナンシャル・ジャパンの全株式をSBI新生銀行から取得した。ファイナンシャル・ジャパンの業績が連結決算へ影響するのは2024年12月期第3四半期以降となり、当期連結業績予想に含めている。また、引き続き保険会社とのさらなる関係強化を図りながら、マーケット拡大に向けた保険代理店のM&A及び事業承継を推進する。これまでは、中小規模かつ保険代理店を専業とする専業代理店を中心にM&A及び事業承継を行っていたが、今後は1件1件のM&A及び事業承継規模の拡大に加えて、自動車ディーラーや不動産販売等の他の事業とあわせて保険販売を行う兼業代理店のM&A及び事業承継も積極的に行う。今後、さらなる保有マーケット拡大に向け、生命保険代理店のM&A及び事業承継、そしてアップセル・クロスセルを推進し、新規契約の増加を図る計画だ。
3. 中長期成長戦略の進捗状況と業界を取り巻く環境
2025年12月期以降に向けての最大の注目点は買収したファイナンシャル・ジャパンの業績貢献だ。2025年12月期より通年での業績寄与となるが、弊社では保守的にみても営業収益12,000百万円、営業利益600百万円、営業利益率5.0%の貢献は期待できると考えている(買収に伴うのれん償却費も含めている)。現在は将来の業績拡大に向けて資金投下フェーズにあると考え、適正な利益率は6~7%程度であるとの見解を示しているが、上場する同業他社の生保代理店では営業利益率が20%程度に達している事例もあり、今後、中長期的な視点で収益性の拡大ポテンシャルは非常に大きいと弊社では考えている。募集人のアップセル・クロスセルの強化による1人当たり営業収益の拡大などが今後の注目点となろう。また、別の注目点として、中古車大手ビッグモーターによる保険金の水増し請求など相次ぐ不祥事を受け、金融庁は「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」を開催、6月25日に報告書が公表されたことが挙げられる。今後、「兼業代理店の禁止」といった業界構造の大きな変革につながるような制度変更が金融庁により検討される可能性もある。国内損害保険市場9.1兆円のうち、兼業代理店が5.6兆円を占めており、仮に米国のように兼業代理店が禁止となれば保険販売からの収益で一定の利益を上げている中古車販売業界やハウスメーカーなどには打撃となるが、同社のような専業代理店にとっては大きな事業機会となる可能性があるため今後の動向に注目したい。
■Key Points
・同社が属する国内の損害保険代理店業界は、保険会社の手数料ポイント制度や代理店オーナーの高齢化などからM&Aや事業承継による大規模化が進む
・2024年12月期は下期よりファイナンシャル・ジャパンの新規連結効果が発現、営業収益は前年比2.2倍の規模へ大きく拡大する見通し
・中長期的な利益率の改善ポテンシャルは大きく、生保と損保からの営業収益がバランスの取れた事業構造へ変化する局面に
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)《HN》