「牛が帰ってくるまで」とは? 非常に長い時間を表す英語のイディオム

2024年9月15日 08:23

 これまで家畜に関する表現をいくつか紹介してきたが、今回は牛に関するフレーズを取り上げる。非常に長い時間を意味する「until the cows come home」というイディオムだが、なぜこの言い回しがそんな意味を持つようになったのかを探ってみよう。

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■Until the Cows Come homeの意味

 「until the cows come home」(牛が帰ってくるまで)とは、非常に長い時間を表すイディオムだ。なぜそれと牛が関係するのか不思議に思うかもしれないが、放牧されている牛が一日の終りにのんびり帰ってくる様子から来ている。

 牛は自分のペースで非常にゆっくりと帰ってくるため、待っている人間にとってはそれこそ「気の遠くなるほど長い時間」に感じられることもある。

 また別の説として、「もし牛が逃げ出したら、馬や犬のようにすぐには帰ってこない。したがって、牛が帰ってくるのを待つのは非常に長い時間、つまり、ほぼ永遠に等しい時間がかかる」という解釈もある。そこから、「until the cows come home」が「決して起こらない」、「永遠に」という意味で使われることも少なくない。

■Until the Cows Come homeの起源

 ところで、このイディオムの初期の使用例を見ると、「Kiss till the cow come home.(ずっとキスし続けろ)」や、「Drink till the cow come home, 'tis all paid boys.(好きなだけ飲め。全部払ってあるぞ、みんな)」のように、「cow」と単数形が使われていた。

 ちなみにこれらの例文は、Francis Beaumont(フランシス・ボーモント)と、John Fletcher(ジョン・フレッチャー)という、シェイクスピアと同時代のイギリスの劇作家コンビの作品から引用したものだ。当時は「sheep(羊)」や「deer(鹿)」と同様、「cow」も単数形で集団や群れを表す言葉だったのかもしれない。

 ただしその後、100年足らずで複数形の「cows」が使われるようになったことが分かっている。たとえば、『ガリバー旅行記』で有名なアイルランドの作家、Jonathan Swift(ジョナサン・スウィフト)が1738年に発表したエッセイにおいて、「I warrant you lay abed till the cows came home.(あなたはずっと寝ていたに違いない)」という文章がある。

 例文
 ・We could argue about this issue until the cows come home, but it won't change anything.
 (この問題についていつまでも議論しても、何も変わらないだろう)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

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