rakumo Research Memo(5):KPI指標は悪化も、Googleによる実質的な値上げ等が起因
2024年9月3日 14:05
*14:05JST rakumo Research Memo(5):KPI指標は悪化も、Googleによる実質的な値上げ等が起因
■rakumo<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0406000?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><4060></a>の業績動向
2. 主要KPIが悪化した背景と今後の見通し
第2四半期決算発表直後に同社株価が大幅に下落した背景として、一部製品の値上げ実施による収益率向上への期待を株式市場が一定程度織り込むなか、主要KPIであるSaaSサービスにおけるUU数及び顧客社数が第1四半期比で減少したこと、解約率が前期末比で上昇するなど、これまで四半期ベースでも順調に推移してきたこれらKPI指標が悪化へ転じたことが大きいと見られる。市場の今後の関心事は、悪化へ転じたKPI指標が第3四半期以降に改善へ向かうかに集まると考えられるが、弊社はUU数及び顧客社数の減少や解約率の上昇は一時的なものであり、各種施策の推進により下期において徐々に改善、解約率についても従来の水準まで数四半期かけて低下する可能性が高いと考えている。各種KPIが悪化した最大要因は、期初計画時点では想定しなかったGoogleによる再販プログラムの変更(実質的な値上げ)が十分な事前予告期間なしに2024年5〜6月頃(弊社推定)に実施されたことに伴い、同社製品のプラットフォームとしているGoogle Workspaceをリセラーチェンジする動きが加速したことで他社パートナー企業へ移行したことが背景にあると見ている。値上げ実施が5〜6月頃、値上げの通知がそれ以前に行われたとすれば、解約影響は短期的には第3四半期も残る可能性は否定できないが、数ヶ月が経過していることから、この影響は落ち着きを見せて来ているということだ。ただし、同社によればGoogle自体の解約を除いた実質ベースの解約率は従来の低水準にとどまっていることから、「rakumo」自体の値上げにより解約率が上昇しているわけではない。UU数や顧客社数の減少についてはこれらGoogleの再販プログラム変更の影響に加えて、契約が例年よりも3月に集中したことで第2四半期の新規顧客獲得数が減少したという一時的要因も挙げており、弊社は過度な懸念は不要と見ている。今回、期初に想定していなかったGoogle Workspaceの値上げと「rakumo」の値上げ実施が時期的に重複してしまったため、一見すると「rakumo」自体の値上げが解約率の上昇を招いているように見えてしまっていることに注意が必要である。
(1) UU数及び顧客社数の減少
サブスクリプション型のビジネスは月単位で契約することが一般的のため、毎月定常的に発生する収益を表すMRRを重要なKPI指標のひとつとして活用することが多い。MRRは顧客数(もしくはユーザー数)と1社当たり月間利用料金の乗数で計算される。2021年12月末時点での2,201社、2022年12月末での2,334社(前年比133社増)に対し、2023年12月末は2,442社(同108社増)、そして2024年3月末は2,486社と着実に顧客者数を増やしてきた。また、同社は効果的なユーザー数拡大のために大企業へ1社当たりの潜在獲得ユーザー数の大きい大企業を中心に営業活動を行っており、顧客社数以上にユーザーのアカウント数を示すユニークユーザー数を増やしてきた。2021年12月末時点での44.8万人から2022年12月末には50.2万人へと前期比で12.1%増、そして2023年12月末には56.3万人と同12.2%増となり、2024年3月末には57.9万人となった。しかし、同年6月末でそれぞれ2,468社、57.1万人と、双方とも前四半期比で減少へと転じた。これには複数の要因が重なっており、1) 契約が例年よりも3月に集中したことで、第2四半期での新規顧客獲得が減少したこと、2) Googleの再販プログラム変更により一部顧客がパートナー企業へ移行したことやMicrosoft 365へ利用転換するなどの解約影響が発現したこと、3) グループ会社毎の個別契約から本社契約への統合による社数へのマイナス影響(UU数への影響はなし)があったこと、が主に挙げられる。同社ではこれらに対し、中大手案件の増加を目的とした担当部署の設置によるアウトバウンド営業の強化、既存顧客へのサポート体制の強化、GoogleのAIサービスの販売強化に向けた体制構築の強化、製品の魅力自体を高めるための各種施策、教育機関や自治体等への拡販のための各種施策を行うことなどを進めることで早期にこれらKPI指標の改善を図る方針である。
(2) チャーンレート(解約率)の上昇
チャーンレートは既存顧客の離脱状況を示す指標であり、解約率として表されることも多いKPI指標である。同社の解約率の推移は、2018年12月期以降は一貫して低い水準での推移となっており、近年は1%未満という極めて低い水準となっていた。同社では2021年頃から解約に至る顧客の解約理由の調査や新規顧客へ能動的なサポート体制を強化するなど、解約率の低減するためのカスタマーサクセス施策を実施している。また、業務の基盤ツールとして使用される製品も有していることも低解約率につながっている。2023年12月末は0.57%という過去最低水準の解約率で着地していたが、2024年6月末に1.35%へ急上昇した。期初計画時点では想定のなかったGoogleによる再販プログラムの変更(実質的な値上げ)が十分な事前予告期間なしに5〜6月頃(弊社推定)に実施され、それにより同社製品のプラットフォームとしているGoogle Workspace自体をリセラーチェンジする動きが加速したことで他社パートナー企業へ移行する顧客が発生したことが背景にある。ただし、同社によればGoogle自体の解約を除いた実質ベースの解約率は従来の低水準にとどまっており、「rakumo」自体の値上げにより解約率が想定以上に上昇しているわけではないという。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)《HN》