相場展望9月2日号 米国株: 8月月間は、米国株は金利低下観測で上昇・日本株は軟調 中国株: 3つの成長エンジンが苦境に喘ぐ、政府支援策では先が見えず 日本株: 8/6以降は日経平均は強いが、気懸りは半導体株戻りの弱さ
2024年9月2日 09:41
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)8/29、NYダウ+243ドル高、41,335ドル
2)8/30、NYダウ+228ドル高、41,563ドル
【前回は】相場展望8月29日号 米国株: エヌビディア四半期決算・7月個人消費支出発表に注目 中国株: 「世界の工場」の地位は、中国⇒インドに代わる勢い 日本株: 売買高の薄さが、2番底を示唆しているか?注目
●2.米国株 : 8月月間は、米国株は金利低下観測で底堅く上昇、日本株は軟調
1)8月月間:米国株は底堅く上昇、日本株は軟調
・米国・日本株の主要株価指数の推移
7/31 8/30 値幅 騰落率
NYダウ 40,842 41,563 +721 +1.76%高
ナスダック総合 17,599 17,713 +114 +0.64%高
S&P500 5,522 5,648 +126 +2.28%高
半導体株(SOX) 5,233 5,158 ▲ 75 ▲1.43%安
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日経平均 39,101 38,647 ▲454 ▲1.16%安
TOPIX(東証) 5,233 5,148 ▲ 82 ▲1.56%安
・米国相場は、今まで相場を牽引してきた半導体株が調整し、ハイテク株比率が高いナスダック総合の上昇にブレーキ。エヌビディア、インテルなどの下落。一方、米国経済の底堅さから、消費関連銘柄が買われNYダウは上昇した。ウォルマート、ナイキ、コカ・コーラなど。
2)米国株が堅調な要因
・FRBの金利引下げが濃厚。
・景気後退懸念の後退。
・米国経済はソフトランディング(軟着陸)の可能性が高まる。
・9月利下げ確率の高まり。
3)米国FRBの9月金利引下げの確率は高い
・米国連邦準備理事会(FRB)は、インフレ動向を見極める上で個人消費支出(PCE)を重視している。
・PCEコア指数は+2.6%上昇で、予想の+2.7%上昇を下回った。
4)9~10月の経験則では「弱い相場」
・FRBによる政策金利引下げ期待で米国株は高値更新してきた。だが、現実に引下げとなると、材料出尽くし感がでて、株価が軟調になるケースがある。
・9月以降も再利下げ期待が膨らみ続け、米国株の追い風となるか注目したい。
・ただ、経験則は9月半ばから10月にかけて弱い展開となったケースがある。
●3.米国の7月個人消費支出の物価指数(PCE)は前年同月比+2.5%上昇、前月と同じ(NHKより抜粋)
1)インフレが落ち着く傾向が続いていることが示された形となった。上昇率は前月と同じで、2021年2月以来、3年5カ月ぶりの低い水準が続いている。
2)価格変動の大きいエネルギーと食品を除いた指数は、前年同月比+2.6%上昇と前月と同じだった。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)8/29、上海総合▲14安、2,823
2)8/30、上海総合+19高、2,842
●2.中国:中国の成長エンジンが3つ共に苦境に喘ぐ、中国政府の支援策では先が見えず
1)長引く不動産不況は底が見えず、消費者と企業は打撃を受けるなか、インフラ投資増加も税収減でままならず低迷し、中国経済は製造業の輸出に依存を高めている。その製造業も、国家統計局が8/31に発表した8月製造業購買担当者景況指数(PMI)は49.1と、前月7月の49.4から低下している。4カ月連続の景況感の境目である50を割っており、浮上のきっかけがつかめない。
2)政府の支援策も錯綜している
・不動産支援策は小さく、かつ、的を外している。
・地方政府を対象にした支援策は、不良資産化した地方政府の融資平台の存続維持にとどまっている。倒産リスクの延命にすぎず、先送りのレベルにすぎない。
・製造業は政府補助金政策を含めた生産能力過剰が引き起こす競争激化による価格低下で利益率は低下し、輸出ドライブで安値販売が横行している。政府は生産能力の廃棄への行政手腕を発揮するわけではなく、現状を放置し手をこまねいている。
3)中国の3つの成長エンジンは苦境にたたされている
・中国の3つの成長エンジン
(1)不動産
(2)輸出
(3)インフラ投資
・中国政府は「質を高めた生産」を掲げて困難を乗り越えようと補助金を奮発
・政府補助金を使って電気自動車(EV)、太陽光パネルなどの増産と安値輸出を強化している。
・輸出先の雇用を奪うことで、欧米諸国から反発され高関税をかけられ輸出は低迷方向にある。
・次に、成長著しい東南アジアやインドに輸出先を振り替えて輸出攻勢をかけ、世界に拡大させている。その東南アジア諸国などでも中国製品の輸入増加で企業倒産や失業が増加しており、中国からの輸入制限を考慮し始めている。
・輸出競争力をつけるには(1)低価格 (2)人民元の安値がポイント
・ところが中国人民銀行(中央銀行)は、人民元高に設定しており、輸出増加を阻害する動きをしている。
・政府の思惑に反した中国人民銀行の動きは、輸出ドライブにブレーキをかける行為をしていることになる。
・中国人民銀行は市中から資金を吸収しており、中国経済にはマイナスの動きをみせている。このため、企業への融資額は膨らまず、金利も下がらない。
・中国政府の中国経済の好調回復支援策と、中国人民銀行の施策とは真逆となっている。中国人民銀行は、傘下の銀行が金利引下げで利ザヤ縮小による経営悪化に陥ることを恐れている可能性がある。
・なお、中国では中央銀行は独立性は有しておらず、共産党と政府の傘下に組み込まれている。
・中国では、政府の経済支援策と金融政策が反対方向を向いており、苦難な道を辿っている。また、政府の支援策の的外れもあり、かつ、小さすぎる。そこに、中国が抱える苦難の深さと、道のりの遠さが、見て取れる。
●3.中国の景気減速傾向が鮮明、8月製造業は4カ月連続で景気判断の節目50割れ(TBS)
1)国家統計局発表で、8月製造業景況を示す製造業PMIは49.1と、7月から▲0.3低下、景気の良し悪しを判断する節目の50を4カ月連続で下回り、景気の減速傾向が鮮明になった。
●4.中国、住宅ローン5.4兆ドルの借り換えの容認を検討=ブルームバーク報道(ロイター)
1)住宅所有者が金利低下で節約できた分を消費に回す可能性に期待している。
●5.中国の景気予測が去年と比べ「悪化・やや悪化」が60%=中国日本商会調査(FNN)
1)投資額も「前年より減らす・しない」が45%。
2)中国政府への要望では、「在留邦人の安全確保」を挙げる企業が非常に多かった。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)8/29、日経平均▲9安、38,362円
2)8/30、日経平均+285円高、38,647円
●2.日本株:8/6以降は日経平均は反騰に転じ強いが、半導体株戻りの弱さが気懸り
1)8/6以降の日経平均の強さの要因
・海外短期筋による株価指数の買いが継続。
・機関投資家の月末の持ち高調整による買い。
・年金基金の売りが止み、買い越しに転換。
・円高が一服し、円安に動き144~146円で推移し、輸出関連株に買い。
2)日経平均とTOPIXのチャートは、上値追いの勢いを示唆
3)不安要因は、米国半導体株指数(SOX)の持ち直しエネルギーの弱さ
・東エレクなど半導体株の値戻しが強くない。
●3.「はがき」は10月から63円⇒85円に35%値上げ、年賀状発行は前年比▲25%減(NHK)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・1942 関電工 業績堅調。
・2607 不二製油 業績伸長期待。
・6965 浜松ホトニクス 株価反発期待。
関連記事
- 相場展望12月26日号 米国株: 幻で終わったトランプ・ラリーは12/4まで、1カ月間だけだった 日本株: ドル建て日経平均では、外国人は運用資産が目減り⇒日本株離れ
- 相場展望12月23日号 米国株: 12月のNYダウは15営業日で3勝12敗と軟弱な地合い 日本株: 海外投資家はクリスマス休暇に入り、年末のお化粧買いに期待
- 相場展望12月19日号 米国株: NYダウ、金利引下げ回数減とインフレ再加速懸念で、大幅安 日本株: 朝高・終値安の「陰線」が続く、年末のお化粧買いに期待
- 相場展望12月16日号 米国株: 心理的節目の大台乗せで、高値警戒・金利上昇・インフレに視点移る 日本株: 円安進行も、輸出関連株に追い風吹かず
- 相場展望12月12日号 米国株: FRBは「金利引下げに前のめり」、インフレ上昇には鈍い反応 日本株: 日米金利差が拡大し、円安が進行⇒日経平均には追い風 ボックス圏の高値にあり、海外投機筋に翻弄されない備えを