関心高まる、木造建築 日本のビルは、これから木造の時代へ向かうのか?
2024年9月1日 15:44
不動産業界では今、木造住宅に対する関心が高まっている。内閣府が昨年10月に全国の18歳以上の日本国民3000人を対象に実施した「令和5年度森林と生活に関する世論調査」によると、住宅選びの際に「木造」と「非木造」のどちらの住宅を選択するかという設問に対し、69%が「木造」と回答している。
また、日経BP総合研究所が不動産従事者を対象に実施した調査でも、「木造」や「木質」の建物について顧客の興味・関心の高まりを「感じる」との回答が、木造(非住宅)、木造(住宅)4階建て以上、木質(非住宅)、木質(住宅)4階建て以上、の調査4種項目すべてにおいて、22年度に実施された同調査結果を大きく上回った。
木造住宅の人気の理由は何か。一つは、環境意識の高まりだろう。そして「気持ちが落ち着く」「快適そう」など、心理的な面でもポジティブなイメージがあるようだ。実際、前述の日経BP総合研究所の調査でも、「木材を使った建物」に取り組む企業に対して好感を持つと答えたビジネスパーソンは90%を超えている。
そして、木造建築の技術向上に伴い、ネガティブなイメージが払拭されつつあることも大きな理由だろう。木造住宅はこれまで、鉄骨や鉄筋コンクリートなどの非木造に比べると耐震性能や防火性能が弱いというイメージがあった。しかし、実際は軽量であるため地震の揺れの影響を受けにくく、しなやかな木材は鉄骨よりも揺れを逃しやすい。防火性についても、木材は表面が炭化するので、むしろ延焼しにくい素材なのだ。さらに、近年は木造建築メーカーがこぞって「木造ビル」の開発や建築に注力していることも、木造建築のイメージアップにつながっているのではないだろうか。
中でも現在、中大規模木造建築に最も力を注いでいる建築メーカーが、AQ Group(旧アキュラホーム)だ。同社は日本に木造の街並みを復興する「Re:Treeプロジェクト」を掲げ、10年以上に渡って普及型の中大規模木造建築を研究開発してきた。今年3月には、普及型木造ビルのプロトタイプとなる純木造8階建ての新社屋を埼玉県に竣工し、大きな話題を呼んだ。しかも、そのノウハウは同社グループ内だけで秘匿するのではなく、地域工務店やゼネコンにまで広く提供し、業界全体で中大規模木造建築の普及活動を推し進めているのだ。
そんなAQ Groupでは、同社初の木造マンションシリーズの展開も開始した。第一弾となる「AQフォレスト大宮桜木町」は、JR「大宮」駅より徒歩10分圏内の好立地に7月12日に着工。敷地面積215.31㎡、総戸数7戸の4階建てで、国が定める耐震、劣化、耐火の基準値をクリアしつつ、木造マンションならではの外観、内観、エントランスのデザインにこだわった建物となる予定だ。さらに8月末には総戸数14戸の「AQフォレスト赤羽(仮称)」、11月末には同じく総戸数14戸の「AQフォレスト墨田(仮称)」の着工を予定している。同社は、その他の各エリアでも用地仕入れなどを進めており、来春以降には立て続けに「AQフォレストシリーズ」が完成する見込みだという。
三井不動産グループの三井ホームも木造マンションブランド「モクシオン」を展開している。モクシオンは木造建築の優位性に加え、独自の高性能遮音床システムや各住戸の間に二重構造の遮音壁を設置することで、コンクリート造のマンションと同レベルの遮音性を実現。プライバシーにも配慮した作りは、オーナーや入居者からも高評価を得ているようだ。
これまで、ビルといえば鉄骨や鉄筋コンクリート造が常識だった。しかし、AQ Groupや三井ホームをはじめ、各メーカーが今、木造マンションの開発と普及に向けて積極的に動き始めている。日本の中低層のビルの主流が木造になる日も、そう遠い未来ではないかもしれない。(編集担当:藤原伊織)