FRB利下げ示唆で、円高・株安が進むのか!?

2024年8月30日 09:00

●パウエル議長が利下げ示唆

 FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長は8月23日、毎年恒例の年次経済シンポジウム「ジャクソンホール」で講演し、政策調整の時期が来たと述べ、9月のFOMCでの利下げを示唆した。26日の円相場は一気に1ドル=143円半ばまで円高が進んだ。

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 11月5日の大統領選挙の数週間前でも利下げを行うことも辞さない構えを示し、当初年内0.25%の利下げに止まると見られていたが、さらに幅が広がることも意識される。

 ジャクソンホール前の8月23日(日本時間)に、日銀植田総裁が国会の閉会中審査に出席し、発言が注目されたが、利上げには慎重な姿勢を見せた。

 利下げのペースを速めるFRBと、追加の利上げには踏み切れない日銀となりそうだが、今後さらなる円高が進み、株安へと向かのだろうか?

●カギを握る米国の雇用

 雇用に重点を置くパウエル議長は、今回の講演でも「緩和しつつも米経済は強い労働市場を維持しながらインフレ率を2%に戻せる」と説明し、雇用情勢に自信をのぞかせている。

 ただ、この数カ月でその潮目が変わりつつある。

 8月21日に米労働省は、この1年間の労働者数の増加が、公表していたよりも28%少なかった可能性があると、発表した。

 下方修正幅はリーマンショック後の2009年以来となり、景気がかなり速いペースで鈍化しているという懸念が強まっている。

 インフレ率はピークアウトが顕著だが、雇用統計まで悪化しているとなれば、利下げペースにも影響が出ることは避けられない。

●気になる今後の為替と株価

 労働者数は下方修正されたが、月ベースで見ると特に悪化しているわけではない。

 9月の利下げは元々織り込み済みだったが、9月6日に発表される8月の雇用統計次第では、利下げ幅の拡大が意識される可能性もある。

 さらなる利下げが意識されるなら、当然円高へ進むことは避けられないだろう。しかし日銀はここにきて利上げに慎重な姿勢を見せており、円高も限定的になる可能性がある。

 株価は利下げ局面ではQE(量的緩和)が意識される程でない限り、上昇するとは限らない。日本株にとっては円高が悪影響なのは明白である。

 9月のFOMC前は、為替も株価も神経質な展開になるかもしれない。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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