相場展望8月29日号 米国株: エヌビディア四半期決算・7月個人消費支出発表に注目 中国株: 「世界の工場」の地位は、中国⇒インドに代わる勢い 日本株: 売買高の薄さが、2番底を示唆しているか?注目

2024年8月29日 13:28

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/26、NYダウ+65ドル高、41,240ドル
 2)8/27、NYダウ+9ドル高、41,250ドル
 3)8/28、NYダウ▲159ドル安、41,091ドル

【前回は】相場展望8月26日号 米国株: 9月▲0.25%の利下げ実施を予想、大統領選挙後の株高期待 日本株: 衆議院解散総選挙で株高の経験則に注目、相場は夏枯れ状態

●2.米国株:8/28夕にエヌビディアの四半期決算・8/30に7月個人消費支出の発表に注目


 1)注目事項:
  (1)8/28、米国半導体大手エヌビディアの四半期決算発表
  (2)8/30、7月個人消費支出の発表

  (1)エヌビディア決算、売上高・純利益は市場予想を上回る、株価は時間外で下落
   ・5~7月期決算:売上高は前年同期比の2.2倍の300.4億ドル(約4兆3,500億円)
           純利益は2.7倍の165.99億ドル(Quick Money)
   ・8~10月見通し:売上高は325億ドル、市場予想と概ね一致
           市場予想と概ね一致したしたことで、生成人工知能(AI)の将来に賭ける投資家らを十分に満足させることができず。
   ・決算発表後の株価:時間外取引で8/28終値から▲5%下落した。(ロイター)
           AIフィーバーの恩恵を受けるとの期待から、エヌビディアの株価は年初来+150%超の急騰。過去2年では+7倍超値上がりしていた。
   ・米国株式は今年に入ってエヌビディアへの期待が主導して、高値更新を続けてきた。まさに米国株式はエヌビディアの株価上昇を除外して語れない関係となった。それだけに株価は高水準に達しているだけに、高値警戒水準にある。識者のコメントには、エヌビディアの株価は決算内容次第で上下10%の動きを予想している。好決算であっても、材料出尽くしで売られる展開も想定した方が良さそう。まして、8~10月期見通しが、市場予想と一致しただけに株価動向に注視したい。

  (2)7月個人消費支出の内容が、FRBの政策金利引下げに与える影響
   ・7月のインフレ鈍化傾向が確認できるデータならば、FRBの9月金利低下決定にダメ出しの影響を与えると思われる。

●3.バフェット氏の米国バ―クシャー、BofA株を追加売却9.8億ドル相当(ロイター)

 1)バークシャーは、これまで54億ドル相当を売却も、依然として筆頭株主。8/27終値ベースで358.5億ドルを保有している。

●4.バークシャー、時価総額1兆ドル突破、バフェット氏への信頼を反映(ロイター)

 1)これまでに時価総額が1兆ドルを突破したのは、アップル、エヌビディア、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタプラットフォームズの6社。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/26、上海総合+1高、2,855
 2)8/27、上海総合▲6安、2,848
 3)8/28、上海総合▲11安、2,837

●2.中国株:「世界の工場」の地位は、中国⇒インドに取って代わられる勢い

 1)中国が抱える問題
  ・人口の急速な減少と高齢化のスピード上昇
   ・中国の出生数が半減するまでの期間が6年と短く、急速に人口が減少。
     日本   40年
     韓国   20年
     中国    6年:2016年は1,880万人⇒2022年に956万人に半減。
   ・国連の2024年版「世界人口推計」では、2100年の中国人口は6億3,300万人。
     中国の人口: 2021年  ⇒  2024年   ⇒  2100年
           14億2,500万人  14億1,900万人   6億3,300万人
     中国の人口は2021年比で2100年は44.4%と、▲55.6%減少すると推計。
   ・出生率は急速に低下して、今や全国平均で1.1人になっている。
     中国   1.1人
     日本   1.2人
     また、上海では0.6人と大都市での低下が著しい。(東京は0.99人)
     その要因は、都市での仕事に関するストレス・公害・高生活コスト・高教育費が挙げられる。出産しても高コストのため育てられないという現状もある。

  ・労働人口の減少と賃金コスト高
   ・中国の65歳以上の人口は2023年末時点で2億1,700万人、高齢化率は15.7%。2035年には21%超と見込まれる。
   ・日本の高齢化率の29%よりは低いが、定年を70歳に伸ばす案が検討されている。ところが、中国では定年が早く55歳以上の人々の多くが働いていない。
   ・特に外資系企業の賃金上昇率は地方政府のガイダンスで高く設定され、高賃金である。中国企業は、その賃金上昇率をみながら追随しており、今や高コスト体質となっている。

  ・中国経済の成長率鈍化
   ・中央政府・地方政府ともに財政赤字のため、経済喚起策が小振り。

  ・不動産バブルの崩壊
   ・政府は小手先な対処策に終始し、根本解決には程遠いのが現状。購入サイドには、住宅ローン金利の低下・住宅2軒目購入基準の緩和など。
   ・不動産デベロッパー企業向けの救済策はなし。破産措置を認めず、不良債権の解消に踏み込めていない。このため、銀行の不良資産整理が進まず。
   ・長期在庫化した住宅を政府が購入し、低・中所得者向け住宅にする政策も進展が遅い。この政策を必要としているのは上海など大都市であるが、地方都市に限られており、しかも予算枠が少なすぎる。

  ・市場の縮小で企業間競争の激化と利益喪失
   ・鉄鋼業界・原油精製業界が赤字になるなど苦境。
   ・不動産建設は大量の鉄鋼製品を消費するが、住宅建設のバブル崩壊で鉄鋼製品の在庫が増加するも、減産に踏み切らず、安値輸出に走る業界。これが鉄鋼業界が赤字を出す構図となっている。
   ・原油精製業界の赤字は、中国経済の後退と消費減退が要因。

 ・若者の高失業率
  ・7月の16~24歳の若年層の失業率が17.1%と前月13.2 %から+3.9%急増。日本では15~24歳の完全失業率は5%未満。中国では若者の失業率の高さが目立つ。今年6月の大学卒業者数は1,200万人近い。
  ・中国政府は、高給で大量の学生を採用してきたテクノロジー企業の成長を規制し、学習塾企業の禁止を決めたことで、大学生の就職先が大幅減少。
  ・生産性の高い民間企業の勢いを抑制し、生産性の低い国有企業の拡大を図る中国政府。中国では公安部門や税務当局、国有企業などで重要ポストが「世襲」になっていることが多いことも、中国社会の硬直性を増している。
  ・税金の支払額は、民間が6割・国有が4割という現実を無視した政策を持続。民間活力を奪う「民退・国進」政策で、若者層の就職難を深刻化している。特に、雇用の8割が中小企業を含む民間企業といわれており、「民進」の政策推進も必要と思われる。

 ・地政学リスクの増大
  ・中国共産党と中国政府による経済的威圧。
   ・外資企業の中国進出に対し技術移転を強要。
   ・中国企業との合弁を条件にした中国進出の許可。
  ・欧米との貿易摩擦増大
   ・外資生産企業は西側諸国の高関税で膨らむ輸出コストの増加と売上減。
  ・反改正スパイ法
   ・中国への人材派遣リスクが増大。
   ・中国政府の覇権主義と戦狼外交、強硬な軍事プレゼンスを高めて世界に緊張を産み出す。
  ・外資企業の中国進出維持は困難が増す
   ・中国への進出企業による、アジア・インド諸国への生産拠点移転が進む。
   ・結局は、中国に残る企業は中国の内需向け企業に限られる可能性高い。安い労働力コストをメリットとして中国進出した外資企業は地方政府主導による高賃金で採算悪化。低コストが魅力で中国進出したが、高関税で輸出は振るわず・高賃金で進出当初のメリットが消失というダブルピンチに見舞われた。

 2)インド
  ・高い経済成長率の持続
   ・国内総生産(GDP)の伸び率は2022年に+7%、2023年に+8.2%。
  ・急速な労働人口の増加
   ・14歳以下の人口が全体の4分の1を占め、労働人口は10億人に迫る。
  ・中国と比べて地政学リスクは小さい
  ・世界からインドへ生産拠点として進出企業が増える
   ・アップル関連企業、自動車、半導体
   ・中国からインドに生産拠点を移す企業が目立つ。
   ・所得増加で消費関連の外資企業の進出増加が目立つ。
  ・問題点
    ・イスラム過激派の動向
      ・過去、爆弾事件が多発した。
    ・若者の経済格差の拡大と就業不足への不満と暴動発生の可能性。
 3)上海総合株価指数にみる中国に対する期待の大きさ
  ・上海総合指数の推移
     2015年6月12日  5,166
     2019年1月03日  2,464
     2021年9月13日  3,715
     2024年1月02日  2,962
        2月03日  2,702
        8月01日  2,932
        8月28日  2,837
  ・2015年には中国の成長期待が高く、高株価であった。現状は2019年1月3日の底値よりは高い位置にあるが、全体的に低い位置にある。上海総合指数の位置が、今後の中国の評価を示唆している可能性がある。

●3.カナダ、中国製EV車に100%の関税、欧米と協調(ロイター)

 1)中国製の鉄鋼とアルミニウムについても25%の関税を課す方針を示した。

●4.米国IBM、中国にある研究開発部門を閉鎖、1,000人規模の人員削減(読売新聞)

 1)事業見直す米国企業が相次ぐ。

●5.中国の鉄鋼業界は7月に損失が再び深刻化、原油精製各社の不振も目立つ(ブルームバーグ)

 1)国家統計局のデータで、中国鉄鋼業界の1~7月の累積損失は▲28億元(▲569億円)に膨れ上がった。6月には損益分岐点に近付いていた。
 2)古くからの産業に根ざした国有企業が、景気低迷のあおりを受け、中でも製鉄会社と原油精製各社の不振ぶりが目立っている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/26、日経平均▲254円安、38,110円
 2)8/27、日経平均+178円高、38,288円
 3)8/28、日経平均+83円高、38,371円

●2.日本株 : 売買高の薄さが、2番底を示唆しているか?注目

 1)売買高が低下し今年2番目と3番目を記録
  ・売買高の推移
    8/26  3兆3,219億円
    8/27  3兆2,309億円 : 今年2番目の少なさ
    8/28  3兆2,680億円 : 今年3番目の少なさ

 2)気になる売買高の減少
  ・今年1番の売買高の日は6/30で、3兆1,756億円であった。問題は、その後の7/11に日経平均は最高値を付けてから、8/5の暴落を迎えたという点にある。
  ・売買代金の減少が、市場の薄さを映している。それだけに、現在の買い手筋がうり売り転換した場合、厳しい局面に相場が耐えられるか?
  ・下支えできるか?大暴落のケースでは、1番底の後に2番底を迎える場合がある。この商いの薄さが示唆しているものに、注目したい。

●3.トヨタ、BMWと燃料電池車分野の協業強化で、基幹部品を供給の方針(NHK)

 1)トヨタが水素タンクや燃料電池などの基幹部品をBMWに供給する方針。
 2)燃料電池車は、水素で発電して走行する際に二酸化炭素を排出しないことからクルマの脱炭素化に向けて、EV(電気自動車)などと並んで、自動車メーカーが開発に力を入れている。
 3)ガソリン車に劣らない航続距離や、水素の充填時間が短いことが強み。一方、車両価格の高さが課題で、両社が協業関係を強化する背景に、生産コストを下げて燃料電池車の普及を図るねらいがある。

●4.ワコール、現5工場を2つに集約、製造品種再編し企業価値向上へ(FASHIONAP)

●5.イトーヨーカ堂、新たに5店舗閉鎖へ、削減計画の全33店舗を決定(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4480 メドレー      業績好調。
 ・5726 大阪チタニウム   値上げ20%弱で決着。
 ・6856 堀場製作所     業績堅調。

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