日銀、金利引上げ後のコメントで株式相場が暴落 自ら政策を縛りかねない結果に! (2)

2024年8月26日 16:23

 25年間に渡って、金利を引き下げるという選択肢を持たなかった日銀は、7月31日の金融政策決定会合で僅かな利上げを決定した。

【前回は】日銀、金利引上げ後のコメントで株式相場が暴落 自ら政策を縛りかねない結果に! (1)

 マーケットは当初、想定内と見て落ち着いていたが、植田日銀総裁が「今後も追加の利上げはある。0.5%が限界とは考えていない」趣旨の発言をした頃から風向きが変わって、株価が暴落状態になりマーケットにパニックが広がった。

 その後、株価暴落要因を分析した識者には、植田総裁のこの発言を挙げる向きが多い。それどころか、ウエイトの置き方には多少に相違があっても、この発言を素通りする意見は皆無と言っていいほどのインパクトがあった。

 利上げを発表した植田総裁には、「長年成し遂げられなかった利上げが実現できた」という高揚感とともに、「いずれ再度の利上げを行い、金利政策の弾力性を確保したい」という思いがあっただろう。

 何しろ1999年の当時、速水総裁の時代にゼロ金利として下限に張り付いて以来、福井、白川、黒田の各歴代総裁がなし得なかったことを、25年振りに成し遂げたという思いが、つい強い口調となって口から飛び出したようだ。

 就任以来の慎重な舵取りで「ハト派」のイメージが定着していたから、「タカ派」に変身したかのような強い発言に、マーケットが動揺して大きな波紋を広げ、暴落と表現されるほど株価が値下がりした。

 パニックを収拾したしたのが内田副総裁であったことも、植田総裁の心を波立たせる。

 内田副総裁は渦中の7日、北海道函館市内の講演で「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続ける必要があると考えている」と発言してパニックを鎮静化させた。

 この発言は、目新しくも何ともない当たり前の発言だから、落ち着くべきところに落ち着くように株価は反転上昇した。上司のチョンボを部下が救ったような感じだ。

 懸念されるのは、今後植田総裁が発言に慎重になりすぎて、政策のタイミングが後ブレしてしまうことと、「タカ派」発言が株価の暴落を呼び日本円と米ドルの為替相場に、20円もの円高をもたらした経験だ。

 円安を是正するために数次の介入が行われながら、一時凌ぎの僅かなブレ程度の効果しか得られなかったのに対して、「タカ派」発言の余波は今も為替相場に残っている。

 金利を動かして為替相場を操作することはあり得ない話だが、経験則として満天に晒されてしまったことは事実だ。味をしめて「再現」を狙うような、頓珍漢な政治家が現れないことを願うばかりだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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