シーラテクノロジーズ Research Memo(9):市場環境は良好。20%以上のオーガニック成長を目指す
2024年8月19日 13:29
*13:29JST シーラテクノロジーズ Research Memo(9):市場環境は良好。20%以上のオーガニック成長を目指す
■成長戦略
1. 市場動向
日本の不動産市場を取り巻く環境として、首都圏を中心とする地価上昇や賃料上昇、歴史的な円安に伴う物価上昇、20年ぶりとなる賃上げを伴ったインフレサイクルへの突入など、マクロ要因によって不動産市場における長期的なインフレ傾向が助長されることが予想されている。さらに、政府主導による「貯蓄から投資」の流れに伴う不動産市場への投資資金の流入、日本の不動産市場の割安感に着目した海外大口投資家の増加など、シーラテクノロジーズ<SYT>を取り巻く事業環境は良好と考えられる。
こうした不動産市場の事業環境とともに、同社がターゲットとする不動産投資市場におけるDXも加速すると予想されている。2022年5月には法改正によって不動産のオンライン契約が解禁された。日本においてはREITを含む不動産への投資経験のある人は海外に比べて多くないものの、今後はクラウドファンディングの認知度向上なども背景として、日本においてもクラウドファンディングを活用した不動産投資マネーの流入が期待される。なお同社資料によると、日本の不動産クラウドファンディング市場規模は2022年の508億円から2026年には1,500億円に拡大することが予想されている。
2. 成長戦略「Grows 2026」
同社は2024年1月にM&Aを中核とした成長戦略「Grows 2026」(2024年12月期~2026年12月期)を公表した。経営目標値として、2024年12月期の売上高は275億円~300億円、2025年12月期の売上高は340億円、2026年12月期の売上高は410億円(いずれもM&Aを含まない)を掲げている。基本戦略としては、売上拡大に向けた20%以上のオーガニック成長、自社サービス・自社製品の拡充、戦略的M&A(インオーガニック成長)を推進するとともに、不動産建築の内製化や「利回りくん」関連事業の成長により、利益率の向上も推進する方針だ。
事業別戦略では、不動産デベロッパー関連事業では米BlackRockの私募ファンドとの協業、クミカとの不動産開発事業の拡大とエリア補完、新たな商品開発の推進のほか、自社ブランド「SYFORME」シリーズを含む不動産開発事業の成長・拡大を目指す。「利回りくん」関連事業では、2024年2月にリリースした「利回りくん」専用アプリや楽天ポイントと連携した「利回りくんコイン」による利便性向上、「ietty」事業との相互送客などのシナジーによる会員数の増加基調を見込み、さらにデジタルマーケティングの活用によって広告宣伝費の抑制を図るほか、新規会員及び既存会員へのナーチャリングによって新規投資と再投資を促進する。また2023年11月から銀行借入を併用したプロジェクト組成が可能になったことに伴い、大型ファンドの組成を推進し、1件当たりの規模拡大を推進する方針だ。2026年の目標は累計会員数50万人、ファンド累計組成額(AUMベース)606億円としている。再生可能エネルギー関連事業では、主力の非FIT太陽光電源開発の本格化により事業拡大を推進する。
M&A戦略は、自社製品・サービスを拡充する手段の1つとして対象事業の成長性に焦点を当て、積極的にM&Aを実行する方針だ。M&Aの実施判断基準としては、PBRが1倍未満であるが同社のテクノロジーとのシナジーが期待され、獲得と同時に利益貢献が見込まれる企業や、保有不動産の公正価値に対して純資産が過小評価されている企業などを条件に挙げている。なお直近のM&Aとしては、「ietty」事業譲受、建築塗装FC事業「スターペイント」譲受、クミカとの資本業務提携がある。
3. 弊社の視点
同社は不動産デベロッパー事業をベースに、「利回りくん」運営を展開するプロップテック企業である。米NASDAQに直接株式上場したため日本の投資家には馴染みが薄いが、「利回りくん」運営を活用することで対象不動産オフバランス化や業績変動リスク軽減を図ることが可能になり、物件売却後に継続的に得られるAPBM収入や自社保有不動産から得られる家賃収入とともに安定収益源となるビジネスモデルを特長としている。このビジネスモデルを弊社では評価している。さらに成長戦略として、M&Aの活用やグループシナジーの創出により、規模の拡大とともに利益率の向上も図る方針としており、その成長戦略の進捗状況に注目したいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)《SO》