シーラテクノロジーズ Research Memo(1):不動産クラウドファンディングプラットフォーム「利回りくん」を運営
2024年8月19日 13:21
*13:21JST シーラテクノロジーズ Research Memo(1):不動産クラウドファンディングプラットフォーム「利回りくん」を運営
■要約
シーラテクノロジーズ<SYT>は、ミッションに「世界中の不動産投資を民主化する。人生100年時代をテクノロジーと資産運用で豊かに。」を掲げ、投資用マンションを中心に企画/開発/施工/管理/仲介等を行う創業以来の不動産デベロッパー事業をベースとして、不動産クラウドファンディングプラットフォーム「利回りくん」運営、再生可能エネルギー関連事業を展開するプロップテック※企業である。2023年3月に日本の不動産企業として初めて米NASDAQに株式上場した。
※プロップテック(PropTech)とは、プロパティ(Property)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語である。先端テクノロジーを活用し、不動産による資産運用分野においてデジタル変革する意味で使用される。不動産(real estate)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語の不動産テックと同義とされるが、近年ではプロップテックという呼び方を用いることが主流となっている。
1. 2023年12月期の業績概要
2023年12月期の業績は売上高が前期比3.1%増の22,743百万円、継続事業からの営業利益が同85.1%増の1,441百万円、同社に帰属する当期純利益が同72.5%増の681百万円となった。EBITDA(継続事業からの営業利益+減価償却費+のれん償却費)は同60.4%増の1,742百万円となった。売上高は過去最高となり、継続事業からの営業利益は期初計画を上回る大幅増益となった。不動産販売は販売戸数が減少したため売上高が同10.8%減少したが、竣工は合計8棟、売却は合計6棟となり、おおむね順調と言える。土地売却の売上高は大型開発用地の売却により同2.1倍と急増した。不動産賃貸収入と不動産管理収入はストック型収益として着実に伸長した。利益面では販管費が人件費の増加、IPO関連費用の増加、M&A関連費用の増加などにより同45.0%増加(販管費比率は5.2ポイント上昇)したが、利益率の高い物件の売却などにより売上総利益は同53.7%増加(売上総利益率は8.0ポイント上昇)と、販管費増を吸収し増益となった。
2. 2024年12月期の業績予想
2024年12月期の業績予想は売上高が前期比20.9%増~31.9%増27,500百万円~30,000百万円、継続事業からの営業利益が同48.0%減~23.7%減の750百万円~1,100百万円と、レンジ予想となっている。売上面では不動産デベロッパー関連事業で14棟の竣工を見込み、米BlackRock<BLK>との協業効果や「利回りくん」関連の借入型ファンド組成による手数料による売上増加なども寄与し、大幅な増収となる見込みだ。コスト面では、M&A関連費用やDXテクノロジー分野への投資などにより販管費の増加を見込んでいる。なお「利回りくん」については、オンライン不動産賃貸仲介アプリ「ietty」事業との相互送客も活用して広告宣伝費の削減を図るとともに、投資会員数の増加(新規投資と再投資)に向けた施策を強化して事業拡大を加速する方針である。
3. 成長戦略
同社は2024年1月に成長戦略「Grows 2026」を公表した。中期的な定量目標は、2024年12月期は売上高275億円~300億円、2025年12月期は売上高340億円、最終年度の2026年12月期は売上高410億円(いずれもM&Aを含まない)を掲げている。売上拡大に向けて20%以上のオーガニック成長、自社サービス・自社製品の拡充、戦略的M&Aを推進するとともに、不動産建築の内製化や「利回りくん」関連事業の成長により利益率の向上を基本戦略とする。「利回りくん」関連事業では、「利回りくん」専用アプリや楽天ポイントと連携した「利回りくんコイン」による利便性向上、「ietty」事業との相互送客などのシナジーによって会員数の増加基調を見込み、新規会員及び既存会員へのナーチャリングによって新規投資と再投資を促進する。また2023年11月から銀行借入を併用したプロジェクト組成が可能になり、大型ファンドの組成を推進する方針だ。
■Key Points
・米NASDAQ上場のプロップテック企業。不動産デベロッパー事業、不動産クラウドファンディングプラットフォーム「利回りくん」運営、再生可能エネルギー関連事業を展開
・2023年12月期は大幅増益
・2024年12月期は販管費増加で減益予想だが竣工増加等で大幅増収基調
・20%以上のオーガニック成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)《SO》