PCNET Research Memo(3):ITサブスクリプション事業は持続的成長の基盤。最重要分野と位置付け
2024年8月19日 12:43
*12:43JST PCNET Research Memo(3):ITサブスクリプション事業は持続的成長の基盤。最重要分野と位置付け
■事業概要
パシフィックネット<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0302100?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><3021></a>の事業セグメントは、サブスクリプション型サービスが大部分を占める「ITサブスクリプション事業」、使用済みIT機器のセキュアな回収及びデータ消去、適正処理サービスなどを手掛ける「ITAD事業」、「イヤホンガイド(R)」の製造販売・レンタル・保守・メンテナンスを手掛ける「コミュニケーション・デバイス事業」に区分される。2024年5月期における事業別売上構成比は、「ITサブスクリプション事業」が70.8%、「ITAD事業」が25.8%、「コミュニケーション・デバイス事業」が3.5%となっている。
1. ITサブスクリプション事業
ITサブスクリプション事業では、法人・官公庁が業務で使用するPCのサブスクリプションでの提供、及び運用保守・クラウドなどのITサービスが主な事業となる。いわば企業のIT部門の業務を代行するアウトソーシング・サービスであるため、企業のIT人材不足の深刻化を背景に高い成長を続けている。また、PC販売とは異なり、保守サービスを含めたサブスクリプション型サービスとしてPCを提供するためストック収益となり、PC出荷台数の変動などの環境変化に強い。加えて、初期投資が大きく売上が分割計上であることや、専門人材や設備が必要で収益化に相当な時間がかかるため参入障壁が高い。これらのことから、同社はITサブスクリプション事業を持続的成長の基盤と位置付け、重点的な投資により規模拡大を進めている。さらに、2025年10月にWindows 10のサポートが終了し、2024年に入り企業のPC更新需要が本格化しており、今後2025年にかけては成長を加速させる重要な機会となる。
2022年7月から企業のIT支援及び情報システム部門の業務負荷軽減に向けて「LCM as a Service」(サブスクリプション型サービス)を提供している。LCMはライフサイクル・マネジメントの略であり、IT資産の導入・初期セッティングから運用管理、終了後の適正処分までを一元管理する仕組みで、業界最高水準のセキュリティを有する全国7ヶ所のセンターで対応する。すべてを自社で完結できることから、顧客のPC利用実態やLCM業務の課題に合わせたサービスを構築できることが強みだ。月額制及び従量制で高い費用対効果と可視化を実現し、毎月レポートで効果を共有する。Microsoft 365などのクラウドサービスもオプションとして提供する。
2. ITAD事業
ITADとは、IT Asset Dispositionの略語であり、IT機器資産の適正処分を意味する。ITAD事業の主な事業は、使用済みIT機器のデータ消去・適正処理サービス、リユース・リサイクル販売である。データの漏洩を防ぐため国内最高レベルのセキュリティ環境にて機器の回収及びデータ消去を実施している。データ漏洩に関しては、2019年12月に起きた同業他社のハードディスク転売事件を機に、企業側の関心は高い。回収した機器は、すべて国内でリユース・リサイクル販売しており、コンプライアンスと環境問題にも貢献している。同社ではデータ漏洩に対する企業・官公庁の危機意識の高まりを背景に、独自のセキュリティポリシーに基づき、確実なデータ消去作業、自社テクニカルセンター設備のセキュリティ強化と作業に携わる従業員の教育に徹底して取り組んでいる。
2022年6月より、顧客から回収した使用済みIT機器において、全台数のデータ消去のエビデンス(機器ごとの詳細データ)を自動生成し10年間保管する「Secure Trace(セキュアトレース)」の運用を開始している。データ消去証明書発行の有無にかかわらず、顧客から回収した使用済みIT機器のデータ消去情報をデジタルで現物と紐づける画期的なシステムである。
また、使用済みIT機器処分に関する課題を解決する「排出管理BPOサービス」を2022年11月より開始している。これまで一部の大企業に限定して提供してきたが、ノウハウの蓄積やデジタル管理など業務面での諸準備が整ったことから、広く提供を開始した。使用済みIT機器はリプレイス後に社内ネットワークから切り離されてしまうため、保有台数や拠点数の多い大企業では機器及びトレーサビリティ管理にかかる膨大な業務負荷・コスト負担、及び機器からのデータ漏洩などのリスクが大きな課題であった。同サービスはIT機器の排出時における回収の督促から適正処分までの業務をすべて受託(一部でも可能)するほか、これまで課題であった機器のトレーサビリティや消去データのデジタル管理及び可視化を実現した。IT機器に関するノウハウや高い技術力を持つ同社スタッフが、顧客の業務実態や課題に合わせサービスをカスタマイズする。
3. コミュニケーション・デバイス事業
コミュニケーション・デバイス事業では、ガイドレシーバーで高い国内シェアを持つケンネットが、「イヤホンガイド(R)」の製造販売・レンタル・保守・メンテナンスを提供している。「イヤホンガイド(R)」は送信機と複数の受信機からなる手のひらサイズのワイヤレスガイド機で、約100メートルの距離まで、マスク越しや小声でも相手に明瞭に音声が伝わる性能を有している。旅行関連市場では国内トップシェアを有しており、観光地ガイドを中心に、国際会議での通訳や騒音の多い工場見学、美術館や博物館などでも利用されているほか、近年は日本の世界遺産での採用も増えている。また、直近では2024年1月に、明石酒類醸造&海峡蒸溜酒ビジターセンター(兵庫県明石市)が主催する酒造見学ツアーにおいて、ガイドレシーバー「イヤホンガイド(R)KR-400」が案内ツールとして採用された。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)《SO》