自動車初心者に事実確認をしよう
2024年8月17日 17:49
昨今は、自動車の基本的な知識が無いにも拘わらず、EV車推しで、さも「環境問題意識が高い」様な態度で蘊蓄を傾ける向きが少なく無い。そこで、「自動車初心者」に基礎の基礎を伝授しておきたいと思う。
【こちらも】内燃機関搭載車とEV車の技術レベル比較
●心臓部の差異
従来型の内燃機関搭載車(ガソリン車やディーゼル車)とEV車(電池で動く車)との違いは、心臓部が内燃機関か電動モーターかの違いだけである。
そしてこの心臓部を動かすのに、内燃機関車はガソリンや軽油を使い、EV車は車載電池に充電した電気で走るだけの話だ。
●走行中に排気ガスを出すか、発電時にCO2を出すかの違い
「Zero Emission」とかのオーナメントを誇らしげに取り付けた車種があるが、「走っている時は排気ガスを出していない」だけの話だ。
その車の所有者が、自宅にソーラー発電設備を持ち、電力会社からの電気は、車載バッテリー充電に使用していないので無ければ、「ゼロエミッション」と称するのは誇大広告だ。
因みに、2022年の日本の電力事情を見れば、
石炭:27.8% LNG:29.9% 石油:3.0% その他火力:11.8% の計72.5%がCO2の排出を伴っているのだから、走行中にCO2を出さなくても、電力会社からの電気で走っているのなら、たっぷりCO2を排出しているのと何等変わりは無い。
●自動運転について
自動運転をEV車と関連付けて論ずる向きも少なく無いが、自動運転はEV車の専売特許では無い。
心臓部が内燃機関であれ、蒸気機関であれ、「自動車」を駆動する動力源が何であっても、全ての車に応用可能な技術である。
唯、電動関連のコントロールの方が、内燃機関より少々やり易いだけの話であって、自動運転と関連付けて、如何にもEV車が「先進的」だと故意に誤解を与え、勘違いさせているだけだ。
「自動運転」は、別の次元のテーマである事を認識すべきだ。
●出先で止まったら大変
出先で止まってしまう場合で、「故障」なら仕方ないが、「ガス欠・燃料エンコ」の場合、ガソリン車・ディーゼル車なら、携行缶でガソリンか軽油を運んで来れば、再始動は簡単だ。
しかし「電欠」したEV車は、充電設備のある場所まで牽引するか、車載車で運ぶ以外方法は無い。
内燃機関搭載車は、豪雪による長時間渋滞でも、エンジンさえ動けば暖房の心配も無い。
従って「凍死」とは無縁でいられるが、EV車は「電欠」すれば命に関わる。
だからと言って、電欠した車を路肩に放置して帰られても、始末に悪いだけの代物なのだ。
●EV車は重い
EV車自体、ガソリン車に比べると車両重量が重くなる。
例えば、ガソリン車である「ベンツS500 4matic」が約2,090kgに対し、EV車である「ベンツEQS450 4matic」は約2,540kgあり、その差は450kgある。
車載電池が諸悪の根源で、結果として道路に対する負荷や、装着したタイヤに対する負荷も大きくなる。
勿論、消耗品であるタイヤ交換頻度も高く、決して安く無いEV車用タイヤのコスト負担も勘案しておく必要がある。
勿論、タイヤ製造にも環境負荷が伴っているのを忘れてはならない。
詳しくは、『ネット民のEV議論に情報提供 その4 #EV車の問題点 廃バッテリーの環境負荷 タイヤ負荷』(2023年2月23日付)を参照されたい。
●事故の際の補修費用
従来の内燃機関搭載車のシャシー構成では、EV車造りに都合が悪い事もあって、昨今の傾向は車載電池をフレームに組み込んだ様なレイアウトが採用されていたりする。
そうなると、フェンダー等を交換するだけの軽微な事故より大きな力がかかった場合には、修理費用が極端に高額になる傾向が見られる。
●バッテリーに対する不安
発火事故の原因の多くは、車載バッテリーがダメージを受けて熱暴走する事が原因となっている。
初期のテスラはパナソニックのバッテリーを搭載していた関係で、発火事故とは無縁であったが、昨今は他国のバッテリーとなって、発火事故の常連となっている。
欧州では自動車輸出専用船が炎上し、韓国では、マンションの地下駐車場が、たった1台のEV車の発火が原因で全焼したりしている。
その結果、ソウル市は9月末までに共同住宅の管理規約のひな型となる「共同住宅管理規約準則」を改正し、地下駐車場にはバッテリー残量が90%以下のEVのみ出入りできるよう勧告する事を決めた。
その他、EV車の駐車場への乗り入れを禁止するという、自衛手段が既に現実問題となっているのが、現状なのだ。
自動車輸出専用船の発火原因はポルシェ、韓国のマンション駐車場大規模火災原因はベンツだとされている。
内燃機関搭載車では、まともな筈の有名メーカーも関与しており、発火事故はテスラやヒョンデ、BYDだけの専売特許でも無さそうだ。
ポルシェやベンツでもヤバいのに、間違っても長澤まさみのファンだからと、本国では、複数の新車販売拠点が、展示車の自然発火が原因とか噂される火災で焼失する様な、得体の知れない代物に手を出さない慎重さは必要だろう。
「発火事故と無縁なEV車は、国産車に限る」と考えれば間違い無い。
国産EV車は、遅れているのでは無く、未完成なまま市場投入していないだけの話であり、国産メーカーの技術レベルを見くびってはならない。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)