アクセル Research Memo(2):パチンコ・パチスロ機向けファブレス半導体企業(1)
2024年8月15日 16:32
*16:32JST アクセル Research Memo(2):パチンコ・パチスロ機向けファブレス半導体企業(1)
■事業概要
1. 会社概要
アクセル<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0673000?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><6730></a>は遊技機(パチンコ、パチスロ)に搭載される液晶ディスプレイに画像を映し出すグラフィックスLSI(以降、G-LSI)で市場シェアの約50%を握るトップメーカーで、製造は外部に委託し研究開発・販売戦略に特化するファブレスメーカーである。また近年は、遊技機のコンテンツを格納するメモリモジュールの売上高も拡大し、同社の主力製品となっている。子会社のaimRage(株)※で手掛けており業界シェアは約80%とほぼ独占状態となっている。その他の製品では、パチンコ・パチスロ機向けのLEDドライバのほか、医療機器や産業機器などの組込み機器向けG-LSIの開発・販売を行っている。
※2020年11月に、遊技機向け次世代メモリの開発販売を目的に富士通デバイス(株)(現、NVデバイス(株))と合弁で設立し、2022年3月期から連結対象子会社に加えている(出資比率85%)。
また、遊技機向けG-LSIの開発で蓄積してきた開発力を生かして、AIソリューション等の新たな事業領域へ展開すべく、2019年5月にax(株)を子会社として設立した(出資比率87.7%)。axでは同年6月にソフトウェア開発を行うbitcraft(株)、同年8月に画像認識・処理技術の開発を行うモーションポートレート(株)を完全子会社化し、のちに吸収合併している。(bitcraftは同年10月、モーションポートレートは2020年12月)。なお、2024年3月期末の連結従業員数は、前期末比2名増の128名、うち単体は2名増の97名となっている。
2. 事業セグメント
(1) LSI開発販売関連
「LSI開発販売関連」セグメントでは、遊技機向けG-LSIのほか、メモリモジュールやLEDドライバ等周辺デバイスの開発販売を行っており、2024年3月期の売上高構成比で96.4%を占める。同社の遊技機向けG-LSIの特徴は、比較的廉価なCPUとの組み合わせでも高精細な描画表示を実現する能力を有していることにある。また、画像ロムに格納された圧縮画像データを瞬時に伸長して高速表示するほか、多彩な演出を可能とする各種エフェクト機能も搭載している。遊技機向けG-LSIについては、このような特定用途に特化した技術が必要となるだけでなく、設計プロセスの微細化、回路規模の大型化により研究開発費が増大する傾向にあるため参入障壁が高くなっている。競合企業としてはヤマハ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0795100?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><7951></a>、ディジタルメディアプロフェッショナル<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0365200?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><3652></a>等が挙げられる。
なお、遊技機向けのG-LSI、メモリモジュールは、リユース(再使用)品が一定規模で使われており、機器の出荷台数とこれら半導体の需要が必ずしも連動しない点には留意する必要がある。これは遊技機に搭載される部材が複数回の繰り返し利用にも耐えられる品質となっていることに加えて、遊技機メーカーがコスト削減や環境問題対応のためにリユース品を使う動きが広まったことが背景にある。遊技機メーカーはリサイクル業者を介してパチンコホールから部材を回収して再利用している。リユース率は遊技機メーカーのコスト削減施策の動向や半導体の世代交代の影響を受けるが、G-LSIについては年間需要のおよそ2〜4割、メモリモジュールは1〜3割がリユース品になっていると推定される。
同社はファブレスメーカーのため、半導体の製造に関してはすべて外部に委託している。G-LSIについては「AG5」まで国内半導体メーカーをメインに製造委託してきたが、「AG6」は最先端の微細回路技術を低コストで量産可能な海外大手ファンドリーメーカーに製造委託している。このため、「AG6」の仕入れについては為替変動の影響を受けることになる。2022年以降、為替の円安進行が続き仕入コスト高要因となっているが、一部為替の予約を実施しているほか、仕入価格の上昇に伴う価格調整も一部実施しており、コスト高に対応している。2024年3月期の主要顧客別売上構成比では、緑屋電気(株)が51.2%、加賀FEI(株)が27.6%、加賀電子<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0815400?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8154></a>が12.4%となっており、3社で90%を超える比率となっている。
なお、同社は研究開発型のファブレスメーカーであるため、売上高に占める研究開発費率が高いという特徴が2019年3月期まであったが、2020年3月期以降は研究開発費も年間15億円前後の水準で落ち着き、売上高比率も2024年3月期は9.0%を10%を下回る水準まで低下した。主因は「AG6」の開発費がピークとなった2019年3月期以降、次世代G-LSIの開発がスタートしていないことによる。「AG5」から「AG6」への移行スピードが従来よりも緩やかなペースとなっているためだ。「AG5」に対して「AG6」は高性能ではあるが、消費電力が高いことや高価格であることが市場環境と相まってネックとなっているようだ。このため、同社は2025年3月期から設計を見直し低消費電力化とシステムコストの低価格化を実現した「AG6」の後継品の販売を開始する予定となっている。本格販売は2026年3月期からとなり、同製品の投入によって移行スピードも加速するものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《HN》