ヤマタネ Research Memo(4):ショクカイの寄与で大幅増収、遊休不動産売却で最終利益も大幅増

2024年8月15日 16:04

*16:04JST ヤマタネ Research Memo(4):ショクカイの寄与で大幅増収、遊休不動産売却で最終利益も大幅増
■業績動向

1. 2024年3月期の業績概要
ヤマタネ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0930500?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><9305></a>の2024年3月期の連結業績は、売上高64,512百万円(前期比26.3%増)、営業利益3,489百万円(同2.8%減)、経常利益3,184百万円(同9.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,442百万円(同13.6%増)と大幅な増収を達成し、営業利益は若干の減益ながら最終利益は増益で着地した。

大幅増収の主因は、2023年10月に実施した大型M&Aにより100%連結子会社となったショクカイの寄与である。一方、利益面ではショクカイの連結効果に加え、2022年2月に新設した印西精米センター関連の減価償却費の減少等の押し上げ要因があったものの、2023年4月にDXとITインフラまわりを担うデジタル推進本部と、M&Aやアライアンスまわりを担う事業戦略部の新設などにより、人件費が増加した。他にも、物流の「2024年問題」への対応に伴う物流事業における外注コスト増や、のれんを含めショクカイのM&Aに伴うコスト計上等が減益の主な要因となった。親会社株主に帰属する当期純利益については、固定資産除却損等の計上はあったが、印西精米センターの稼働により、遊休不動産化していた埼玉県さいたま市の旧岩槻精米工場跡地を譲渡したことで固定資産売却益を計上したほか、投資有価証券売却益等が増加し、最終増益を確保した。なお、営業利益率については5.4%と前期から1.6%ポイント低下した。物流事業においてコスト漸増による一段の利益率低下が発生しないか注視しておく必要はあるものの、2024年3月期に関しては主にM&A関連のコストによる利益押し下げでの営業減益であるため、過度にネガティブ視する必要性は乏しいと弊社では考えている。むしろ、今後の持続的な成長に向けた基盤づくりを着実に行うことができた期だったと評価できそうだ。

2. セグメント別の業績概要
物流事業では、売上高が前期比0.2%増の24,401百万円、セグメント利益が同7.7%減の2,302百万円だった。国内物流では、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)からの社会経済活動の正常化が進んだことから、前期に見られた荷主が安定的な供給体制確保のため保管在庫を増加させる傾向は縮小し、倉庫事業における入庫トン数は前期実績を下回った。一方、国際業務においては海外引越を中心に取扱件数が前期を上回ったことで僅かながら増収を確保した。利益面については、庸車費用や外注作業費用等「2024年問題」への対応に伴うコストが増加したことで減益となっている。

食品事業では、売上高が前期比62.9%増の34,143百万円、セグメント利益が同949.6%増の783百万円だった。下期よりグループ入りしたショクカイの業績が増収に寄与した。加えて、コロナ禍からの経済回復を受けて中食や外食向けの需要が復調し、精米販売量が増加したことも追い風となった。コメ卸売販売業における内訳としては、精米販売は量販店向け販売、外食向け販売ともに前期を上回って推移し、71千玄米トン(同14.5%増)となったが、玄米販売は米価上昇で市場流通量が減少した影響を受け、21千玄米トン(同11.4%減)となり、総販売数量は92千玄米トン(同7.2%増)となった。利益面では、ショクカイの連結効果に加え、コメ卸売販売業の堅調推移による増収効果のほか、印西精米センターでの太陽光発電システム活用による動力費抑制や、同センターの減価償却費の費用減等もあり増益となった。

情報事業では、売上高が前期比2.4%増の1,735百万円、セグメント利益が同6.5%増の109百万円だった。同事業の主力であるSE派遣の常駐型ビジネスで汎用機基盤の開発や運用業務の新規獲得、既存案件のボリュームアップ等があったほか、顧客のインボイス対応へのシステム開発請負案件等も獲得したことで堅調な業績を維持した。一方、「ストックテイ君」を扱う棚卸機器レンタル事業においては、従来のハンディタイプからモバイルアプリによるサービスへの転換戦略を引き続き進めた。しかし、顧客の店舗削減等の影響を受けて売上高は減少した。また、グループ全体のITインフラサポートに伴う売り上げには特段変化はなく、セグメント全体としては増収、増益を確保した。

不動産事業では、売上高が前期比3.7%増の4,232百万円、セグメント利益が同1.0%増の2,058百万円だった。賃貸オフィスビル市場は、在宅勤務の浸透や新築ビルの供給増から、空室率は大きく上昇すると見込まれていたが、オフィスビル需要は底堅く、空室率の上昇傾向は下期に収まり、通期で見ると横ばいで推移する結果となった。運営する賃貸物件から一部テナントの退去があったものの、テナント誘致を積極的に推進したことにより高稼働率を維持した。また、新規賃貸不動産を取得したこともあって増収を確保した。なお、平和不動産<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0880300?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8803></a>等と共同開発したオフィスビル「KABUTO ONE」の不動産取得税が減少したこと等が影響してセグメント利益は若干ながら増益となった。

3. 財務状況
2024年3月期末の資産合計は、前期末比27,499百万円増加の153,687百万円だった。流動資産は同2,790百万円増加の22,472百万円となり、主な要因は、食品事業でのショクカイの連結子会社化等に伴い受取手形、売掛金及び契約資産が2,446百万円、棚卸資産が1,718百万円それぞれ増加したことである。固定資産では、有形固定資産が不動産事業での新規賃貸不動産等の取得により同7,205百万円増加した。無形固定資産についてはショクカイのM&Aによるのれん計上等で同9,000百万円増加し、投資その他の資産についても時価評価による投資有価証券の評価額増加により同8,516百万円の増加となった。

負債合計は同19,371百万円増加の97,680百万円となった。主な要因は、M&Aや賃貸不動産等の投資における資金調達等により長期借入金が15,745百万円増加したこと、グリーンボンド発行による社債が5,061百万円増加したことである。純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に加え、有価証券評価差額金の増加等で同8,127百万円増加の56,006百万円となった。財務の安全性指標である流動比率は105.2%と同28.6ポイント上昇したが、自己資本比率は33.7%と同1.7ポイント低下した。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)《HN》

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