Pウォーター Research Memo(9):「自社営業モデル」から「グループ・外部営業活用モデル」への転換を推進中

2024年8月14日 14:59

*14:59JST Pウォーター Research Memo(9):「自社営業モデル」から「グループ・外部営業活用モデル」への転換を推進中
■成長戦略・トピックス

1. 「自社営業モデル」から「グループ・外部営業活用モデル」に軸足を移す戦略を推進中
プレミアムウォーターホールディングス<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0258800?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><2588></a>は過去から、自社の営業人員を中心にブースでのデモンストレーション販売やテレマーケティングを行い、顧客を獲得してきた。その後、テレマーケティングにおいては代理店・取次店を活用することで新規顧客数を伸ばしてきた経緯がある。電気・ガス、通信、家電、家具、引っ越しなど多様な商品・サービスの営業販売を行うパートナーは、独自の顧客を持つため、宅配水の顧客獲得をしやすい傾向にある。2024年3月期に発表した新たな戦略方針では、「販売力強化に向けた投資」をより積極化することを宣言した。具体策としては「他企業とのアライアンス・出資」及び「新型ウォーターサーバーの導入」である。これまでと同様に、自社人員によるブース販売やテレマーケティングは着実に充実させつつ、外部を活用した新規顧客獲得モデルで飛躍的に伸ばしていく。背景には、過去の利益蓄積により財務基盤が強化されたこと、外部活用モデルは顧客当たりの獲得コストが有利であること、保有顧客数が大きくなり純増(新規数‐解約数)を継続するために効率的な新規獲得方法が求められること、などが考えられる。他社との連携の方法としては、業務提携や出資・買収など多様なパターンを想定する。2024年3月期までには3件のアライアンス・投資が行われ、そのうち2件(ラストワンマイル、INEST)は新規顧客開拓の強化が期待できる。

2023年3月に同社は、ラストワンマイルへの株式公開買付(TOB)を実施し、この結果、同社の株式保有率は39.9%(2024年2月時点)に高まった。ラストワンマイルは、2012年6月に設立された新興企業であり、自社運営コールセンターによる各種サービスの販売等を手掛けている。新生活における各種サービスの契約手続き代行「引越しワンストップサービス まるっとチェンジ」をはじめとし、電気やガス等の生活インフラサービスを中心に、利便性の高いサービスを多数取り扱う。宅配水もその1つであり、同社グループが製造するナチュラルミネラルウォーターの主要販売店として多くの顧客を獲得してきた。今後は、営業ノウハウの共有なども行いさらに顧客基盤を拡大することが期待できる。

2023年11月には、INESTと資本業務提携契約を締結した。同社の株式保有率は37.8%である。INESTは、マーケティング支援事業やソリューション支援事業を主力事業とし、法人企業や個人顧客のニーズに沿った商品の取扱いを増加させることで成長を続けている。個人向け事業において、新電力やインターネット回線等の取次販売を行っており、プレミアムウォーターの主要取次店としても多くの顧客を獲得してきた。マーケティングとセールスという事業領域の類似性も相まって、その顧客基盤に十分な補完関係が構築できることのみならず、その提供手法の補完、協調関係にあるINESTとの強固な連携体制の構築は、個人向け事業のさらなる拡充・先鋭化を推進し、販売チャネルの補完やマーケティング戦略の強化、顧客満足度の維持向上等に期待が持てる。

また、連結子会社であったエフエルシープレミアム株式会社を関連会社INESTへ売却するグループ再編を実施した。同社としては、宅配水事業に注力し、利益率の向上を目指すのが狙いの1つである。過去、モバイル事業は宅配水事業と比較して収益性が低く推移していた経緯がある。また、エフエルシープレミアムは宅配水事業の販売代理店として今後も顧客獲得を行う。このディールにより、エフエルシープレミアムが行っていたモバイル事業の売上高(2023年3月期実績で4,377百万円)が減少した。また、子会社売却益(797百万円)が営業収益として計上された。

2. 岐阜北方工場第2期工事が完了し稼働開始。全水源合計で250万件をカバーできる生産能力へ
2024年4月には、岐阜北方工場の第2期工事が完了し稼働を開始した。この工場は、同社にとって富士吉田、朝来に次ぐ3番目の自社工場であり、宅配水市場において国内最大規模の天然水工場となった。その生産能力は月間240万本以上であり、保有顧客ベースで120万ユーザー(現在同社の保有顧客は162万ユーザー)をカバーできる規模となる。岐阜北方工場は日本の中央に位置するため物流面でも戦略拠点となる。現状OEMで調達している近隣の水源からの商品を、この岐阜北方工場生産に切り替えると大幅なコストメリットが生まれることになり、総投資額89億円は早期に回収できる計算が成り立つ。工場内部は最新設備による高度な自動化がなされ、生産能力・生産効率が格段に向上している。特徴として、

・工場内物流を 劇的に効率化する トラックローダー
・完全自動で製品の搬送が可能な 完全自動倉庫
・原料のペレット材からPETボトルの成形までを1台の機械で全て対応

などがあり、生産性の高さが窺える。顧客の純増を背景に、生産性の高い自社工場を高い稼働率で運用させることで、製造原価のさらなる低減を図るという同社の勝ちパターンに、さらに磨きがかかっている。

生産能力が向上したことにより、全社全水源合計では500万本、250万件をカバーできる生産能力が確立した。余裕を持った先行投資ができたことで、数年先までの生産キャパシティ不足の懸念がなくなること、コスト競争力を背景に他社向けの受託生産も受けられることなどのメリットも生まれている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)《HN》

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