「トランプ相場」の休止【フィスコ・コラム】

2024年7月28日 09:00

*09:00JST 「トランプ相場」の休止【フィスコ・コラム】
11月の米大統領選に向け、民主党候補のバイデン大統領が選挙戦から撤退。ハリス副大統領が急きょ出馬を決めました。再登板が期待されるトランプ前大統領とは好対照の理想的なタイプの候補者とみられ、「トランプ相場」は短期間にとどまったもようです。

直近の全米世論調査によると、これまで不人気とされてきたハリス氏の支持率は45%で、43%のトランプ氏を2ポイント上回りました。別の調査ではトランプ氏が小幅にリードしているもようですが、ハリス氏の方に勢いが感じられます。トランプ氏は今月半ばに銃撃を受け生命を脅かされながらも危機を脱したことで支持者の結束を強めたものの、支持率調査への影響は限定的とみられます。

2016年の大統領選以降、主役はいつもトランプ氏。前回2020年にバイデン氏に敗れたとはいえ規格外のバイタリティや発信力で今回の選挙に臨むトランプ氏は、ある意味で飽和状態でもあります。高齢、富裕層、ビジネスマンのトランプ氏とは真逆の女性で若手、黒人、知性派、中流家庭出身というハリス氏が登場したことで注目度は一気に高まり、短期間で話題性を奪い取ることに成功した印象を受けます。

特に、貧困に理解があることは、格差拡大のアメリカでは強いセールスポイントになります。トランプ氏は経済的な問題を抱えた白人労働者の希望の星であり、切実な声を熱狂的な支持につなげてきました。が、トランプ氏自身は全米屈指の富裕層で、貧困層から見れば本来は程遠い存在であるはずです。副大統領候補に「ラストベルト」出身を強調するバンス氏を指名したのは、これら激戦州の有権者にアピールする戦略にすぎません。

一方、民主党の党大会を目前に「後出し」のようなハリス氏の立候補は、バイデン氏の指名に忸怩たる思いだった党員や支持者に高揚感を与えました。トランプ氏は「ハリス氏の方が戦いやすい」としていますが、本音はどうでしょうか。もちろん、選挙戦術だけで本選を勝ち抜くのは困難で、今後の副大統領候補の指名や政策運営が重要。9月に予定される候補者討論会はハリス氏にとって最初で最後の大一番になります。

いずれにしてもバイデンVSトランプよりも、ハリスVSトランプの方が上院選も接戦になるとみられます。トランプ氏勝利なら現在とは正反対の政策を進める方針のため、議会にねじれが生れば極端な政策転換のリスクを回避できます。「トランプ相場」は休止しても、議会の機能を強めることが金融市場にはより好ましい結果とみられます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。《ST》

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