アンジェス Research Memo(1):米国で想定以上の臨床試験結果を受け、「コラテジェン(R)」の開発戦略を変更

2024年7月24日 14:31

*14:31JST アンジェス Research Memo(1):米国で想定以上の臨床試験結果を受け、「コラテジェン(R)」の開発戦略を変更
■要約

アンジェス<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0456300?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><4563></a>は、1999年に設立された大阪大学発のバイオベンチャーで、長期ビジョンとして「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目指している。2020年に先進ゲノム編集技術の開発を行うEmendoBio Inc.(以下、Emendo)を子会社化したほか、2021年には国内で希少遺伝性疾患の新生児向けオプショナルスクリーニング検査を行う衛生検査所「アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下、ACRL)」を開設し、検査受託サービスを開始した。

1. 主要開発パイプラインの動向
米国における下肢潰瘍を有する軽度から中等度の閉塞性動脈硬化症を対象としたHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン(R)」の後期第2相臨床試験が完了し、同社の想定を上回る好結果が得られたようだ。同社は当初、第2四半期中にトップラインデータを発表する予定としていたが、治験担当医師が論文を作成し学術誌に掲載する準備を進めていることから同タイミングでトップラインデータも発表することになった。2024年秋にFDAとミーティングを行う予定にしており、早期承認申請を行うか第3相臨床試験に進むかを判断することにしている。一方、国内では標準的な薬物治療の効果が不十分で、血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症患者を対象に条件及び期限付き製造販売承認を2019年に取得し、市販後調査を経て2023年5月に条件解除に向けた承認申請を行っていたが、第3相臨床試験の成績を再現できなかったことから申請を一旦取り下げ、新たに第3相臨床試験と米国での臨床試験結果を中心に申請データパッケージを構築し、2024年末までに新たに製造販売承認申請を行うべく準備を進めていく。海外から導入したHGPS及びプロセシング不全性PL治療剤「ゾキンヴィ」※については、製造販売承認を2024年1月に取得し同年5月から販売を開始した。当初想定通りの薬価となり(患者1人当たり年間1億円強)、現時点で患者6名がリスト化されている。子会社のEmendoでは、同年3月にスウェーデンのAnocca ABと、OMNI-A4ヌクレアーゼに関する非独占的ライセンス契約を締結した。同社にとって初の導出となり、今後もライセンス活動を積極的に展開していく方針だ。

※HGPS(ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群)の死亡リスク低減、プロセシング不全性早老性PL(プロジェロイド・ラミノパチー)の治療剤で、欧米では販売承認済み。HGPSやPLは遺伝子の突然変異で発症し、症状としては深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚、全身性脂肪性筋萎縮症、脱毛症、骨格形成不全、動脈硬化の促進などがあり、動脈硬化性疾患により若年期に死亡するとされ、HGPSの平均寿命は14.5歳と報告されている。世界の患者数は600人程度、日本でも難病指定されており「ゾキンヴィ」の対象となる患者数は数名程度と見込まれている。


2. ACRLの取り組み状況
乳児を対象とした希少遺伝性疾患の検査受託サービスは検査数が順調に拡大中で、2024年7月からは2つの自治体からの受託も開始するなど繁忙が続いており、2024年12月期は売上高で前期比2倍以上に拡大し、損益面でも初めて黒字化する見通しとなっている。同年夏以降は確定診断となる遺伝学的検査サービスについても本格的に開始する予定で、将来的には治療効果のモニタリングを行うバイオマーカー検査も行い、希少遺伝性疾患に関する検査をワンストップで提供することで医療関係者や患者ニーズに応えるとともに、希少遺伝性疾患の新たな治療薬の開発にもつなげていく戦略だ。

3. 業績動向
2024年12月期第1四半期の事業収益は113百万円(前年同期比96百万円増)、営業損失は2,476百万円(同559百万円減)となった。事業収益は、検査受託サービスやEmendoのライセンス契約一時金の計上が増加要因となった。営業損失の縮小要因は、Emendoの研究開発体制再編により研究開発費が同607百万円減少したことが主因だ。2024年12月期通期の事業収益は600百万円(前期比447百万円増)、営業損失は8,450百万円(同3,517百万円減)を見込む。検査受託サービスの拡大や「ゾキンヴィ」の売上計上等が増収要因となる。費用面ではEmendoを中心に研究開発費が約30億円減少することで、損失額が縮小する見込みだ。2024年3月末の現金及び預金は2,115百万円まで減少したが、当面は新たに発行する第三者割当による転換社債型新株予約権付社債と新株予約権の行使等により、事業活動資金を調達していく方針となっている。

■Key Points
・HGF遺伝子治療用製品は米国の後期第2相臨床試験で想定以上の好結果が得られた模様
・早老症治療薬「ゾキンヴィ」は2024年5月から販売開始、6人の患者をリストアップ
・2024年3月にOMNIプラットフォームで初のライセンス契約を締結
・2024年12月期はEmendoの研究開発費減少により営業損失の縮小が続く見通し

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《HN》

最新記事