アドバンクリエ Research Memo(8):2024年9月期業績は、下期に収益回復が鮮明となる見通し
2024年7月23日 15:58
*15:58JST アドバンクリエ Research Memo(8):2024年9月期業績は、下期に収益回復が鮮明となる見通し
■今後の見通し
1. 2024年9月期の業績見通し
アドバンスクリエイト<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0879800?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8798></a>の2024年9月期の連結業績は、売上高で前期比18.0%増の12,000百万円、営業利益で1,700百万円(前期は2,020百万円の損失)、経常利益で1,500百万円(同2,190百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で900百万円(同1,769百万円の損失)と期初計画を据え置いた。前期業績に大きく影響した保険解約による売上の戻入※等の不確実性を低減するためのスキームを導入し、解約率の変動が売上に及ぼす影響を少なくしたほか、前期に実施したテストマーケティングのための費用1,260百万円がほぼ無くなること、コロナ禍の収束により再保険事業の損益改善が見込まれること、コールセンター部門の派遣社員削減等でコスト構造の改善が進むことなどが収益改善要因となる。また、ITを活用した営業の生産性向上も進む見通しだ。
※2023年9月期は解約率が想定を上回ったことで、売上戻入1,700百万円が発生した(減収減益要因)。
第2四半期までの進捗率は売上高で41.7%、営業利益で20.2%と当初の想定よりも回復ペースが若干遅れているものの、アポイント数や申込ANPが第3四半期以降上向いていること、コスト面でも下期は人件費やその他経費の削減がさらに見込まれることから、通期計画の達成は射程圏内にあると同社では見ている。なお、2024年春の新卒入社は43人とほぼ前年と同水準となり、2025年春も同水準を予定している。
(1) 保険代理店事業
保険代理店事業の収益回復施策として、総合的な保険提案による申込ANPの向上に取り組むことに加えて、デジタルアポイントにより保険商品の購入意欲の高い顧客にアプローチし、保険に精通した正社員をコールセンターのオペレーターとして配置することで、より生産性の高いアポイントの獲得(面談率の高いアポイント)を推進していく。アポイント面談率については、2023年の夏頃で60%台後半だったが、2023年10月以降70%台で推移している。コールセンター部門で派遣社員を90名程度まで絞り込む一方で、正社員数を2023年7月時点の20人から30人を超える水準まで増員したことが奏功しているものと考えられる。
また、アポイント獲得の手法については、前期に実施したテストマーケティングにより、LINEを用いた「WEBマーケティング×テキスト」によるアポイント取得スキームを確立しているほか、TikTokで生成AIを活用したプロモーション動画を配信するなど様々な取り組みを試行錯誤しながら独自のマーケティング手法を確立している。また、営業部門の生産性向上施策として、「AIアバター接客トレーニングサービス」で実際の顧客対応を想定したロールプレイング研修を繰り返すことで若手社員の早期戦力化を実現している。2020年にオンライン接客サービスを導入以降は、入社2~3年目の社員が1人当たり申込ANPで4年目以降の社員を上回るなど、ITリテラシーの有無が営業成績を左右する傾向が強まっている。
そのほか、2023年9月期の業績悪化要因ともなった解約の防止策の1つとして、クレジットカード払いを推進している。保険料支払い方法のうち、口座振替の場合は残高不足等で保険料の振替不能から契約失効となるケースがあったが、クレジットカード払いとすることで振替不能による契約失効を防ぐことが可能となるためだ。2024年3月時点でクレジットカード払いの比率は65%弱の水準となっており、これをさらに引き上げることで継続率を向上させていく。
なお、申込ANP(損害保険、少額短期保険除く)の前年同月比伸び率推移を見ると、2024年4月は23%減と10カ月連続のマイナスとなった。先行指標となるアポイント取得件数の減少傾向が続いていることが要因だが、5月以降はマイナス幅も縮小し夏以降は前年比でプラスに転じてくる可能性が高い。また、前期は解約率上昇に伴う売上戻入の影響が第3四半期以降の収益の足を大きく引っ張ったが、2024年は解約による売上戻入については殆ど発生しないようなスキームに変更したこともあり、下期の収益は前年同期比で大きく改善することが見込まれる。
(2) ASP事業
ASP事業では、導入契約件数の積み上げにより増収増益が続く見通し。乗合代理店向けに「御用聞き」や「丁稚」などの導入が広がるほか、「Dynamic OMO」に関しては「アバター」と組み合わせた次世代接客ツールとしての引き合いが増えているようで、社員教育用ツールとなる「AIアバター接客トレーニングサービス」も含めて今後導入が拡大するものと期待される。
(3) メディア事業/メディアレップ事業
メディア事業については、保険会社の広告費用配分の見直しを背景に、今後も保険業界で抜群の認知度を誇る「保険市場」への広告出稿が順調に増加するものと予想される。従来は生命保険会社の出稿が中心であったが、2023年9月期以降は自動車保険や季節性の強い海外旅行保険、自転車保険などの損害保険商品の取り組みも強化し、第2四半期累計で落ち込んだ収益を少しでも挽回していく方針だ。メディアレップ事業については、費用対効果の高い広告運用を行うことで増収増益を目指す。
(4) 再保険事業
再保険事業は、保険代理店事業の契約件数増加に合わせて再保険契約が積み上がるため、売上高は着実に増加する見込みだ。利益面では増収効果に加えて、新型コロナウイルス感染症の「みなし入院給付金」が2023年5月で終了したことで、保険会社への再保険金支払いが一巡することも増益要因となる。今後も自然災害などで突発的に生命保険や医療保険の支払いが増加するようなことがなければ収益は安定成長が期待でき、収益性に関しては中期的に10%台の利益率まで回復するものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《SO》