ミアヘルサHD Research Memo(3):東京中心に首都圏で医薬・介護・保育と社会的ニーズの高い事業を展開(1)

2024年7月23日 12:23

*12:23JST ミアヘルサHD Research Memo(3):東京中心に首都圏で医薬・介護・保育と社会的ニーズの高い事業を展開(1)
■会社概要

2. 事業内容
ミアヘルサホールディングス<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0712900?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><7129></a>は経営ミッションとして「少子高齢化社会の課題に挑戦し、地域社会を明るく元気にする」を掲げ、この実現に向けて、医薬事業から介護事業、保育事業と社会的ニーズの高い事業領域へと展開しながら、「地域包括ケアシステム※」の構築に取り組んでおり、事業そのものがSDGsにつながっていると言える。

※地域包括ケアシステムとは、超高齢化社会に向けて地域に合ったケアシステムの体制を整えていくという政府が掲げる方針のこと。厚生労働省では、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、医療や介護など地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築に取り組んでいる。


同社の事業セグメントは医薬、介護、保育の3つの事業セグメントとその他(食品事業)に区分して開示している。2024年3月期の売上構成比は、医薬事業が全体の41.0%を占め、次いで保育事業が40.3%、介護事業が14.6%、その他が4.1%となっている。直近5期間の推移で見ると、2件のM&Aを実施したことで保育事業の構成比が医薬事業に並ぶ水準まで上昇している。また、営業利益率については介護事業を除いて比較的安定して推移している。介護事業については新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響によって2022年3月期以降悪化し、2023年3月期以降は2期連続で損失を計上している。一方、医薬事業や保育事業については安定した水準で推移している。主要3事業については7割から9割が社会保険料や自治体等の公費でまかなわれており、価格競争が起きにくいことが安定した収益性につながっていると考えられる。

(1) 医薬事業
医薬事業では、「日生薬局」「ミアヘルサ薬局」というブランド名で調剤薬局を首都圏に展開している。2024年3月末の店舗数は42店舗(東京38店舗、神奈川3店舗、埼玉1店舗)で、出店形態としては大型総合病院前の門前薬局が27店舗と全体の6割強を占めている。そのほか、医療モール型で9店舗、面対応型で6店舗をそれぞれ需要が見込める都市部の駅前立地等に出店している。また、在宅医療にも注力し、そのなかでも高度な技術を要するHIT(在宅輸液療法)調剤サービスを展開しており、がん患者の疼痛緩和ケアの支援を行うなど「かかりつけ薬局」として地域住民の健康をトータルでサポートしている。HITとは、輸液療法による在宅薬学管理のことで、在宅療養患者に対して点滴静脈注射や鼻からチューブを通して栄養剤や薬剤を注入する療法で、注入する輸液は薬局内に設置した無菌調剤室で調合する必要がある。高齢化社会の進展に伴う在宅療養患者数の増加によって、HIT調剤サービスの需要拡大が見込まれるなか、同社は2005年より一部の店舗で無菌調剤室を整備し、自社内で輸液の調合を可能にすることで重度の在宅患者の需要に対応している。

医薬事業の特徴としては、大学病院等の大規模病院の門前薬局が多いため、1店舗当たりの平均調剤売上高が221百万円(2024年3月期)と業界平均の126百万円(2022年度実績)よりも約1.7倍と大きいこと、また、店舗当たりの薬剤師の数も平均4人程度(非常勤含む)と業界平均の2~3人を上回っていることにある。門前薬局が多いため、必然的に抗がん剤の副作用対応や難病疾患医薬品の取り扱いなど、高度な薬学管理のスキルが求められることから、薬剤師の知識レベルは総じて高い。また、ミッションに基づいた教育研修により、顧客満足度の高い丁寧な接客サービスの提供も強みとして挙げられる。首都圏、特に都内に店舗が集中しているため学生からの人気も高く、薬剤師については非常勤も含めて問題なく採用できている。

ビジネスモデルとしては、主に「健康保険法」に基づき、処方箋を基に調合した医薬品の調剤報酬を患者及び保険機関から受領する格好となり、医薬事業の売上の99%を調剤報酬で占めている。調剤報酬は薬剤料と調剤技術料、薬学管理料で構成されており、調剤技術料は薬剤師の調剤作業に対し、薬学管理料は薬剤師の服薬指導や薬のデータ管理に対して厚生労働省が定める「調剤報酬点数表」を基に加算される料金となる。従来、これらは2年ごとに厚生労働省が見直しを行ってきたが、薬剤料に関しては2021年度より毎年見直しを行っている。

薬剤料は、医薬品そのものの料金のことで医薬品の価格は国が薬価基準により定めており、薬剤の内容や処方期間によって処方箋ごとに変動する。医薬品は医薬品卸会社から仕入れており、仕入価格は卸会社との交渉で決まるため、薬価と仕入価格の差(薬価差益)が売上総利益となる。調剤技術料は調剤基本料(特定医療機関への集中率等)のほか、地域支援体制加算(在宅患者向け業務実績、薬局の開局時間等)、後発医薬品調剤体制加算(後発医薬品の使用率)などそれぞれ算定項目ごとに基準と点数が決められている。また、薬学管理料についても同様で、薬剤服用歴管理指導料(お薬手帳の有無、オンライン服薬指導体制等)やかかりつけ薬剤指導料(かかりつけ薬剤師としての実績等)、在宅患者訪問薬剤管理指導料等、様々な算定基準に合わせて加算点が付加される仕組みとなっている。調剤薬局は薬学管理料も含めた調剤技術料を引き上げるために、これら算定項目への取り組みを推進している。

この調剤技術料については、厚生労働省の方針に対して各薬局の取り組み状況によって変動する部分であり、収益力に直結する部分でもある。薬価改定と調剤報酬改定は国民医療費が年々増大するなかで、国民医療費の抑制と適正化を目的としており、改定年度については薬価の引き下げと調剤技術料等の低下によって調剤薬局の収益は悪化する傾向にある。同社は改定内容に早期に対応し加算点の引き上げを図り、新規店舗の開発による収益の安定化に取り組んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《SO》

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