スパークス G Research Memo(2):複数の競争優位を併せ持つアクティブ運用会社のパイオニア(1)
2024年7月19日 13:42
*13:42JST スパークス G Research Memo(2):複数の競争優位を併せ持つアクティブ運用会社のパイオニア(1)
■スパークス・グループ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0873900?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8739></a>の会社概要
1. 会社概要
同社グループは、「世界で最も信頼、尊敬されるインベストメント・カンパニーになる」というビジョンの下、現 代表取締役社長である阿部修平(あべしゅうへい)氏によって1988年に設立された、独立系アクティブ運用会社のパイオニアである。著名な投資家であるジョージ・ソロス氏の教えを受けた阿部氏の投資手法は、ユニークかつ戦略的なものであり、今ではファンド業界では当たり前となっている「ロング・ショート戦略」を日本に初めて導入した。社名の「スパークス」は阿部氏がジョージ・ソロス氏に自身の投資戦略を説明した際、同氏が「君の投資戦略からはスパークを感じる」と言ったことに由来している。
(1) 「ARTSの精神」
同社グループは独立系運用会社としての使命感も強く、投資家のためになるファンドの創設、投資信託の開発を志向している。この原点として「ARTSの精神」を掲げており、「ARTSの精神」を実行することで同社グループの価値を作り出している。
(2) 投資哲学
特徴的かつ競争優位となっているのが「マクロはミクロの集積である」という投資哲学だ。阿部氏はこの概念を非常に重視しており、全社に浸透させている。ここでいう「マクロ」とは「正確な予測が難しい大きな潮流」のことであり、一例を挙げると「日本経済が今後どうなっていくのか」「どのような業界が成長するか」などがある。他方で「ミクロ」とは、「各企業が行っている日々の事業活動」「経営者の資質・方針」といった「予測しやすいこと」「理解できること」を意味する。つまり、企業が行っている活動や経営者の資質を徹底的に調査し、それを積み重ねていくことによって、「マクロ(大きな潮流)」が見えてくるという考え方が「マクロはミクロの集積である」という言葉に集約されている。この考えに基づき、投資現場では「日経平均株価が今後どうなるか」や「目的企業の株価がどう推移するか」といった議論は重視せず、ファンドマネージャーが自ら設定した仮説に基づき個別企業を訪問し、経営者と対話することを重視している。
また、投資対象企業選定の前段階として「投資仮説」を立てていることも大きな特徴である。例えば「投資仮説」とは「ESG重視が叫ばれるなか、脱炭素企業に対する社会的なニーズが高まる」などが該当する。「投資仮説」に基づく徹底した企業調査により仮説の是非を検証し、割安かつ健全な成長力を持った企業を見つけ出すことができる。
「マクロはミクロの集積である」という投資哲学は、同社が競争優位に立つために今後ますます重要になると弊社では見ている。なぜなら、金融市場にAI(人工知能)が浸透し、運用をAIに任せる流れが加速しているためだ。AIによる運用は、過去の株価の変動に関する膨大なデータをAIに学習させ、統計的に将来の株価を予想するものである。しかし、企業活動や経営者の資質・考えは、実際に現場に出向いてみなければ理解、体感できないものである。企業の業績の行方を決めるのは企業活動の集積や経営者の資質などであり、過去のデータから統計的手法で予測できるものではないとする同社の考えに、弊社は同調する。
このように、徹底的な個別企業調査を行い、投資対象を選定することで、ハイリスク・ハイリターンが原則の金融市場において「安定性」と「高収益」を両立できる投資運用会社として、業界をリードし続けている。なお、資本金は8,587百万円(2024年3月期末時点)、グループ従業員数は186名(同)である。
2. 事業内容
同社グループは、日本株式に投資・運用する「日本株式」、韓国及びその他のアジア地域の株式に投資・運用する「OneAsia」、再生可能エネルギー発電所などに投資・運用する「実物資産」、ベンチャー企業投資を目的としたファンドを組成・運用する「プライベート・エクイティ」の4本柱を注力分野に設定し、投資信託委託業務・投資一任業務・投資助言業務などを行っている。
(1) 日本株式及びOneAsia
スパークス・アセット・マネジメント(株)が「日本株式」、SPARX Asset Management Korea Co., Ltd.及びSPARX Asia Investment Advisors Limitedが主に「OneAsia」分野の運用を担当している。日本株式ロング・ショート投資戦略、日本株式長期厳選投資戦略、日本株式中小型投資戦略、日本株式マーケット・ニュートラル投資戦略、日本株式価値創造投資戦略などの戦略に基づき、株式への投資・運用を行っている。「日本株式」と「OneAsia」の2024年3月期末時点の運用資産残高は、それぞれ前期末比37.8%増の13,131億円、同40.2%増の1,262億円と大きく拡大した。日本株式においては、好調なマーケット環境も追い風に、マーケット・ニュートラル投資戦略を除くすべての投資戦略が順調に運用資産残高を積み上げた。特に、2023年5月にスパークス・企業価値創造日本株ファンドを新たに設定したことで、価値創造投資戦略の運用資産残高が前期末の25億円から1,078億円へと急拡大した。日本株式投資戦略全体の運用資産残高は、今後も順調に拡大していくと弊社は見ている。東京証券取引所は2023年3月、プライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を実施した。この要請に基づき、各社は資本収益性の向上や株主還元の拡充などの各種施策を策定し、資本コストを意識しながらキャッシュを効率的に配分することによって企業価値を向上させることに注力してきた。しかし、こうした状況下であっても、PBR1倍未満の企業の割合は減少傾向にあるものの、2024年1月時点においてTOPIX500企業のうちPBR1倍未満の企業の割合は、依然として133社と約26%を占めている状況にある(経済産業省の資料から引用)。米国や欧州などの市場と比較するとPBR1倍を下回っている企業の割合は相対的に高い。ただこれは裏を返せば、日本企業の企業価値は伸びしろが大きいとも言える。資本コストと株価を意識した経営が企業に浸透してきている中で、今後も各企業が利益の創出などを通じた企業価値の向上に注力していくことが想定される。企業価値の増大とPBRの上昇を各企業が追求するなか、日本株式に対する投資家の注目度は高位安定して推移することが予想される。このことから、同社の日本株式投資戦略にも安定して投資資金が流入していく可能性が十分にあるものと弊社は見ている。
また、同社の現地運用責任者への教育と質の高い運用体制の構築は順調に進んでおり、「OneAsia」の運用資産残高も堅調に推移していくものと弊社は見ている。特に、アジアの高い成長力を背景に資金流入が加速することが期待される。IMFの最新予測によると、アジア地域の実質GDP成長率は2023年が5.0%、2024年が4.5%、2025年が4.3%となっている。特に同社が基幹ファンドへと育成していく方針であるインドの2023〜2025年成長率はそれぞれ7.8%、6.8%、6.5%であり、インドネシアの2023〜2025年成長率はそれぞれ5.0%、5.0%、5.1%と高い成長が継続することが見込まれている。同社の投資哲学と徹底した企業調査に基づき、高成長が継続する市場で高いポテンシャルをもった企業の発掘が期待できることから、同戦略に対する投資家からの資金流入も膨らんでいく可能性が十分にあると弊社は見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)《SO》