インテージホールディングスは戻り歩調、25年6月期収益拡大基調
2024年7月18日 09:27
インテージホールディングス<4326>(東証プライム)は、市場調査事業を主力としてシステムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。成長戦略として、Date+Technology企業として販促最適化への新たな価値を創出することや、社会的課題解決に向けた行政EBPM推進への価値を創出することなどを目指している。24年6月期は成長戦略推進や需要回復などで営業・経常増益予想としている。積極的な事業展開で25年6月期も収益拡大基調だろう。株価は5月の年初来安値圏から切り返して戻り歩調の形となった。出直りを期待したい。なお8月7日に24年6月期決算発表を予定している。
■国内首位の市場調査が主力
子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。なおTOBによって23年10月にNTTドコモの連結子会社となった。
セグメント区分は消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。23年6月期のセグメント別構成比は売上高が消費財・サービス分野のマーケティング支援65%、ヘルスケア分野のマーケティング支援23%、ビジネスインテリジェンス12%、営業利益が消費財・サービス分野のマーケティング支援43%、ヘルスケア分野のマーケティング支援47%、ビジネスインテリジェンス9%だった。
海外事業に関しては23年1月に連結子会社CSG香港の株式譲渡および特別目的会社IAHの清算を発表した。市場環境の変化に対応してアジアにおける事業展開の役割を本社へ移管するとともに、中国市場への事業展開は英徳知市場諮詢(上海)有限公司を中心に推進する方針に変更した。
■消費財・サービス分野のマーケティング支援
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、海外子会社、21年5月に子会社化したリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)などである。24年7月にはNTTドコモとの合弁会社であるドコモ・インサイトマーケティング(DIM)の株式を取得して完全子会社化した。
また21年11月には、子会社インテージとインティメート・マージャー<7072>の業務提携(21年10月)を強固にすることを目的として、インティメート・マージャーと資本提携している。
■ヘルスケア分野のマーケティング支援
ヘルスケア分野のマーケティング支援は一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務などを展開している。事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド(医療情報総合研究所が21年7月1日付で社名変更)、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。
22年8月にはインテージヘルスケアと岡山大学が悪性腫瘍をはじめとする難治性疾患治療薬開発プロジェクトとして、AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet(ディープカルテット)」を活用した新薬開発の共同研究を開始した。22年12月にはインテージヘルスケアがAI創薬アカデミックプログラム(IAAP)を開始した。AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet」などの新規化合物を得るサービスを活用し、アカデミアとの共同研究プログラムを開始する。23年2月にはインテージヘルスケアと広島大学がAI創薬によるペプチド擬態化合物の共同研究を開始、インテージヘルスケアと名古屋大学がAI創薬による胃酸抑制剤の共同開発を開始した。
なお24年6月には、インテージヘルスケアが展開するCRO(医薬品開発業務受託機関)事業を、アルフレッサホールディングスに譲渡(24年9月2日予定)すると発表した。これに伴い、25年6月期第1四半期に18億円程度の特別利益を計上する見込みである。
■ビジネスインテリジェンス
ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。
23年2月にはインテージテクノスフィアが、APAC(アジア太平洋地域)で発行されているITビジネス誌APAC CIO OutlookにおいてTop10 BI and Analytics Solution Providers in APAC2022賞を受賞した。
■第14次中期経営計画
第14次中期経営計画(24年6月期~26年6月期)では成長戦略として、Date+Technology企業として、販促最適化への新たな価値を創出することや、社会的課題解決に向けた行政EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)推進への価値を創出することを目指し、目標値には最終年度26年6月期の売上高735億円、営業利益60億円、一人当たり利益(=(営業利益+投資)/人員数)GAGR12%、ROE(自己資本利益率)12%などを掲げている。なお24年2月1日付でシナジー戦略部を新設した。
利益改善については、各セグメントの売上増加、販売価格の最適化、生産性向上などに加えて、SCI刷新によるコストイノベーションや新旧SCIのダブルランコストの解消を見込んでいる。配当方針については、第14次中期経営計画期間中の配当は累進的とし、26年6月期の配当性向を従来の40%から50%に引き上げるとしている。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、リサーチにとどまらず販促・広告市場においても新しい価値創出を目指す新たなプラットフォームとして、子会社のリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)が持つ特許を活用し、CXマーケティングプラットフォームの開発を推進する。第1ステップはRNIのプロダクトにインテージの事業資産を組み込んでマネタイズを加速、第2ステップはRNI特許を活用してSCIをリニューアル、第3ステップはSCI-CODE一体活用によるCXマーケティングプラットフォームの確立(提供ツールを開発してリサーチと広告・販促の一気通貫サービスを提供)を目指す方針としている。
23年11月には、データサイエンス領域の人材育成や産学連携教育の推進などを目的として、京都女子大学と包括協定を締結した。
なおINTAGE Open Innovation Fund(SBIインベストメントと共同設立)は、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。23年6月には、一人ひとりに合わせて行動を促す個別化エンジン「Nudge AI」を開発するGodotに出資した。投資先のIPO実績としてはAI CROSS<4476>、QDレーザ<6613>、メンタルヘルステクノロジーズ<9218>がある。23年8月現在の投資実績は26社、合計約26.5億円となっている。
サステナビリティ経営に関しては、23年度からサステナビリティ委員会を設置して取り組みを強化している。23年12月には、健康企業宣言東京推進協議会が運営する健康企業宣言制度において、21年より3年連続で「健康優良企業 銀の認定」を取得した。また、コーポレートガバナンスの更なる向上に向けてガバナンス委員会を設置した。24年3月には健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)に認定された。
■24年6月期営業・経常増益予想
24年6月期の連結業績予想は売上高が23年6月期比5.1%増の645億円、営業利益が5.7%増の40億円、経常利益が5.6%増の43億円、親会社株主帰属当期純利益が14.4%減の30億円としている。配当予想は23年6月期比1円増配の43円(期末一括)としている。予想配当性向は54.6%となる。
第3四半期累計は売上高が前年同期比1.0%増の483億48百万円、営業利益が18.2%減の33億08百万円、経常利益が15.9%減の35億54百万円、親会社株主帰属四半期純利益が36.5%減の23億94百万円だった。大幅減益で着地した。
売上面は小幅ながら増収を確保したものの、利益面は売上拡大に向けた先行投資に伴う費用の増加(前倒しの人員体制強化に伴う人件費の増加、システム利用料等の外注委託費用の増加、SCI刷新およびCXマーケティングプラットフォームに係る投資費用の増加など)や、NTTドコモとの資本業務提携関連の一時的費用の発生により大幅減益だった。
マーケティング支援(消費財・サービス)事業は、売上高が0.6%増の315億86百万円、営業利益が28.3%減の13億52百万円だった。売上面は主力のパネル調査が堅調だったが、カスタムリサーチが一部顧客の予算縮小の影響で低調だった。利益面は売上高が計画を下回ったことに加え、費用の増加なども影響した。
マーケティング支援(ヘルスケア)事業は、売上高が1.8%減の107億57百万円、営業利益が14.2%減の14億07百万円だった。リサーチ事業は医療領域のカスタムリサーチが回復傾向だが、CRO(医療品開発業務受託機関)が低調だった。
ビジネスインテリジェンス事業は、売上高が8.8%増の60億03百万円、営業利益が5.4%増の5億48百万円だった。増収増益だった。インテージテクノスフィアにおいて旅行業界を中心としたSI案件の受注が好調だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が143億06百万円で営業利益が1億98百万円、第2四半期は売上高が164億33百万円で営業利益が13億32百万円、第3四半期は売上高が176億09百万円で営業利益が17億78百万円だった。
通期連結業績予想は据え置いている。親会社株主帰属当期純利益は前期に税金費用が減少していた反動で減益予想だが、消費財メーカーを中心とする市況環境復調や成長戦略推進により営業・経常増益予想としている。セグメント別計画は、マーケティング支援(消費財・サービス)事業の売上高が4.1%増の418億円で営業利益が3.5%増の17億円、マーケティング支援(ヘルスケア)事業の売上高が6.0%増の150億円で営業利益が6.1%増の19億円、ビジネスインテリジェンス事業の売上高が8.8%増の77億円で営業利益が14.3%増の4億円としている。
第3四半期累計は減益だったが、パネル調査が堅調に推移していることに加え、消費財メーカーやヘルスケアのリサーチ事業の業績も改善傾向としている。さらに経費マネジメントも徹底して下期に挽回を図るとしている。NTTドコモとの資本業務提携によるシナジー効果も期待され、積極的な事業展開で25年3月期も収益拡大基調だろう。
■株主優待は毎年12月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。
■株価は戻り歩調
株価は5月の年初来安値圏から切り返して戻り歩調の形となった。出直りを期待したい。7月16日の終値は1583円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS78円80銭で算出)は約20倍、前期推定配当利回り(会社予想の43円で算出)は約2.7%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS808円17銭で算出)は約2.0倍、そして時価総額は約640億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)