ナック Research Memo(6):2025年3月期に営業利益4,000百万円に修正。前期比では増益
2024年7月17日 15:46
*15:46JST ナック Research Memo(6):2025年3月期に営業利益4,000百万円に修正。前期比では増益
■中期経営計画及び今後の展望・課題
ナック<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0978800?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><9788></a>は、2021年3月期から2025年3月期を最終年度とする5ヶ年の中期経営計画を推進しており、目標として売上高75,000百万円、営業利益5,000百万円を掲げている。レオハウスの譲渡により住宅事業への依存割合を下げたが、経営資源の再配置や財務体質の強化、積極的な投資の実行を施策とし、グループ全体の発展と成長を目指す。また、プライム市場上場維持基準の適合に向けて、会社認知度の向上、投資家への投資意欲の喚起を行う方針だ。
1. プライム市場の上場維持基準適合
同社は2022年4月東京証券取引所プライム市場に移行したが、その時点で上場維持基準のうち「1日平均売買代金」を充足していなかったため、中期経営計画の最終年度である2025年3月期終了後の2025年12月末までに、適合基準に達することを目指している。1日平均売買代金を2022年12月末の0.16億円から2025年12月末に0.20億円以上とする計画だ。そのために、業績の向上(中期経営計画の達成)、会社名とブランド名の紐づけ、IR活動の強化、サステナビリティや株主還元の取り組みを進め、株価向上、出来高向上を目指す。具体的には、2022年4月にコーポレートサイトを全面リニューアルし、同年6月にはサステナビリティページを新設するなど情報開示の充実を図った。また、2023年5、6月に自己株式1,000千株(発行済み株式数の4.1%)を大株主より取得し、消却を行った。さらに、2024年1月には、2月1日を効力発生日として1株につき2株の割合をもって株式分割することと株主優待制度の変更を発表した。投資単価を引き下げることで、同社株式の流動性を高め、多くの投資家が投資しやすい環境をつくることを目的としている。SDGsとしては、循環型社会の実現、脱炭素社会の実現、地域との価値共創、豊かで快適な暮らしの実現、多様な人材育成と人権尊重の5つを重要課題として特定し、取り組みを進めている。脱炭素社会の実現に向けては、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、賛同企業や金融機関が一体となって取り組みを推進するコンソーシアムに加盟している。2022年7月には気候変動問題に取り組む国際NGOであるCDP(Carbon Disclosure Projectカーボン・ディスクロージャープロジェクトの略)が実施する「気候変動質問書」に回答した。また、GHG(温室効果ガス)排出量に関して2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標を掲げ、配送のEV車での実証実験、再生可能エネルギー由来の電力への切替え、クリクラボトルのエコマーク取得、ウォーターサーバー「クリクラFit」における代替フロンより環境負荷の低いグリーン冷媒への切替え、などの取り組みを進めている。
2024年2月には、上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況を公表した。2023年12月末時点における「1日平均売買代金」は0.13億円と、上場維持基準の0.2億円には未達となったものの、引き続き2021年12月に開示した「プライム市場 上場維持基準の適合に向けた計画書」に基づく取り組みを進め、2025年12月末までの基準適合を目指す。
2. 事業拡大スキーム
同社は、クリクラ事業において約42万人、レンタル事業において約33万人、美容・健康事業の通信販売で約11万人と、グループ全体で合計約90万人の定期顧客を顧客基盤として抱えている。この顧客基盤を生かしてシナジーを創出するために、これまでの事業別の縦割りの事業展開ではなく、各事業に横串を通したグループ横断的な事業展開を目指す。新商品・サービスのクロスセルや他社とのアライアンス戦略を積極的に進め、資本業務提携、M&Aも視野に入れた販売活動を進める方針である。2024年3月期は、Secualの提供する簡易型ホームセキュリティサービス「Secual Home」のクリクラ事業とレンタル事業での販売など、顧客のLTV向上に向けて取り組みは順調に進んでいる。また、共働き世代やシニア世代の顧客ニーズに合わせて、ケアサービス部門、ヘルスレント部門を拡大しているが、2023年11月にはダスキンとの資本業務提携に基づき、新たに「事業拡大・成長共同プロジェクト(仮称)」を立ち上げ、さらなる商品・サービスの開発・提供を進めている。中小建築業者・工務店においては、DXへの対応、SDGsへの対応、コストの削減、人材の確保・育成など喫緊の経営課題が山積みである。これらのニーズに対応し、共同購入によるコスト削減、IT導入補助金活用やノウハウの提供などによる事業再構築やDXを進めることで事業を拡大する方針である。
3. 中期経営計画目標と進捗状況
中期経営計画では、2024年3月期は売上高68,000百万円、営業利益は3,800百万円を目指していたが、実績は売上高が54,433百万円(達成率80.0%)、営業利益は2,298百万円(同60.4%)で着地した。最終年度の2025年3月期については売上高75,000百万円、営業利益5,000百万円を計画していたが、業績予想は売上高65,500百万円(計画の87.3%)、営業利益4,000百万円(同80.0%)と、前期比では増収増益を見込むが計画を下回っている。計画達成を目指し、引き続き、各事業において計画した施策を遂行する。主に、クリクラ事業ではショッピングモール等でのイベント営業を中心とした販促活動強化で新規顧客接点を増やし、レンタル事業ではダスキンとの協業プロジェクトに注力するほか「with」の営業促進を図り、建築コンサルティング事業ではDXや省エネ関連新商品を開発する。住宅事業ではエリア拡大戦略と商品拡充を推進し、美容・健康事業では新カテゴリの開発や医薬品の販売を拡大する。ほかにも施策の進行状況や市場の変化に対応しながら有力な施策を遂行し、計画達成に向けて進む考えだ。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)《AS》