オーバル Research Memo(2):流体計測機器の専業メーカーとして、一貫した事業を展開
2024年7月17日 14:42
*14:42JST オーバル Research Memo(2):流体計測機器の専業メーカーとして、一貫した事業を展開
■会社概要・事業概要
1. 会社概要
オーバル<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0772700?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><7727></a>は、1949年5月に創業された流量計のパイオニアで、流体計測機器メーカーの専業最大手である。社名のオーバル(OVAL)とは、卵型や長円形を示す言葉であり、楕円形の歯車が流れとともに回転することで流体の体積を計測するという同社のルーツでもある看板製品を表すものである。工場やプラントなどを対象とするB to Bビジネスが主体で、生産工程において「石油(灯油・ガソリン・重油)」「水」「気体」などの流れるもの(流体)を計測する流量計を主要な製品とし、その他システムソリューションなど流体に関するビジネスを創業以来70年以上続けてきた。今後もモノづくりの自動化には、流量計などのセンサが不可欠であり、産業を支えるマザーツールを長年培ってきた技術とともに提供する計画である。
同社は、東京都新宿区に本社を置き、傘下に連結子会社11社(国内4社、海外7社)を有し、特に中国・韓国・台湾・東南アジアなどアジアを中心にグローバル展開している。2024年3月31日現在の連結従業員数は698名で、現在は東証スタンダード市場に上場している。2011年6月より谷本 淳(たにもと じゅん)氏が代表取締役社長を務め、中長期経営ビジョン及び中期経営計画に基づいて「アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニー」を目指している。また、同社の知名度アップ戦略の一環として、マスコットキャラクターの「おーちゃん」と「ばるちゃん」をWebサイトや決算説明資料などに活用しているほか、クロスカントリースキーヤーの宮崎日香里選手と所属契約を結んでいる。
2. 沿革
同社の前身となる「オーバル機器工業株式会社」は1949年5月に設立され、1992年12月に現在の「株式会社オーバル」に社名変更した。設立以降、連結子会社を現在の11社に増やし、事業領域も拡大してきた。現在では、各種流量計、計測管理及びエネルギー管理用諸機器、諸装置及び流体制御装置などの工場用計測機器等の製造・販売事業を中心として、関連するメンテナンスや流量計の検定業務を行うサービス部門事業なども展開している。2006年9月には、JCSS(計量法校正事業者登録制度)に基づく登録を取得しており、「校正品質」という付加価値で顧客の課題を解決することが同社の強みとなっている。同社は1961年7月に東証2部に上場し、2014年5月に東証1部に指定変更、2022年4月には東証プライム市場へ移行したが、2023年10月より東証スタンダード市場に移行している。これは、プライム市場上場基準に到達することに偏重することなく、堅実で地に足をつけた経営を行うことが最適かつ最良の選択であるとの経営判断によるものである。
3. 事業内容
同社グループは、計測機器等の製造・販売事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しているが、事業部門別の開示をしている。センサ部門は、流量計をはじめとする計量計測機器及び関連機器の製造販売を行っている。システム部門は、流体計測制御に関連する製造、出荷、検査、分析等のシステム装置の設計、開発、販売・施工を担う。サービス部門は、製品のフィールド対応、修理、メンテナンス及び校正事業(JCSS含む)を行う。同社では工業計器を中心に取り扱っており、一般的な家庭用の水道・ガスなどのメータは取り扱っていない。
2024年3月期の事業部門別売上高の構成比は、センサ部門が69.3%、システム部門が12.0%、サービス部門が18.7%である。利益率はセンサ部門が最も高く、サービス部門、システム部門が続く。このように、売上高・利益において、センサ部門が同社の主力事業である。システム部門は国際競争が激しい分野だが、同社では成長する余地が大きく長期的には有望な分野と見ている。地域別売上高では国内が中心であるが、アジアを中心に海外売上高も20〜30%を占めており、2022年からスタートした中期経営計画では「アジアNo.1」をキーワードに、さらなる躍進を目指している。なお、センサ部門・システム部門は海外展開をしているが、サービス部門は国内が中心である。
4. 同社の強み
「幅広い製品ラインナップ」「流量計を中核としたシステム・サービス」「計量標準の供給を担うJCSS(計量法校正事業者登録制度)」の3つが同社の強みである。
第1の「幅広い製品ラインナップ」では、工業計器の分野において、容積流量計、コリオリ流量計、渦流量計、超音波流量計、熱式質量流量計、タービン流量計、電子計器、その他周辺機器など、低温から高温までの液体・ガス・蒸気を幅広く計測する製品を提供するのは同社のみである。なかでも容積流量計、コリオリ流量計、渦流量計は同社の主力製品であり、センサ部門売上高の90%を占めるとともに、容積流量計と渦流量計は国内市場シェアの約50%を占めている。同社のこの幅広い製品群に対して、業界大手の横河電機<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0684100?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><6841></a>や、東芝インフラシステムズ(株)などでは一部の流量計にとどまる。
第2の「流量計を中核としたシステム・サービス」では、流体計測制御システムで受入出荷システムや検定システムを提供し、サービス・校正(計器類の狂い・精度を標準器と比べることで正すこと)として現地での修理・メンテナンスを行い、移動検定車も保有している。このように、計測機器の製造・販売だけでなく、幅広いネットワークを持ち、システム・サービスまでカバーしている。
第3の「計量標準の供給を担うJCSS」について、同社は「石油(灯油・ガソリン・重油)」「水」「気体」3種類の流量で計量法に基づくJCSS登録を有している唯一のJCSS登録事業者であり、特に石油の校正可能流量は国内校正事業者では最大で、流量範囲も国内校正事業者では最も広い範囲である。様々なタイプの流量計に対し、異なる液種でかつ広い流量範囲でJCSS校正が可能であることを生かし、同社は流量計に対して「校正品質」という付加価値で顧客の課題を解決している。同社製品のみならず、他社製品の流量計についても校正サービス(流量計の検査)を提供しており、今後は自動車会社や薬品会社などが保有している流量計にもサービスを拡大する計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)《SO》