ランドコンピュ Research Memo(2):パッケージベースSIの成長戦略により収益性が大幅に向上
2024年7月17日 13:32
*13:32JST ランドコンピュ Research Memo(2):パッケージベースSIの成長戦略により収益性が大幅に向上
■会社概要
1. 会社概要
ランドコンピュータ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0392400?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><3924></a>は、独立系システムインテグレータとして歴史を重ね、2021年1月に創立50周年を迎えた。情報サービス業界では珍しく学校法人を起源としている。「こころできまる」を社是に、「1) 顧客価値の創造と顧客満足度の追求を図り企業価値を高める。2) 次代を拓くプロフェッショナル集団として、情報技術のリーディングカンパニーとなる。3) 常に革新的企業文化風土を維持、継続する。」を経営理念として事業を展開する。
学校法人を設立母体に持つことから、社員教育に熱心なことが特徴である。従業員にはIT系だけでなく業務系の資格を取得するよう奨励し、1人当たり平均3つ以上の資格を保持している。ITと顧客業務の両方のスキルと知識を有することで、顧客満足度の高いシステム開発を可能にしている。
2. 沿革
同社は1971年の創立時から富士通<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0670200?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><6702></a>と銀行のシステム開発で取り引きしており、銀行や保険などの金融システムの受託開発を中心に事業規模を拡大した。2006年には、システムインテグレーション・サービスにおけるインフラ関連業務をインフラソリューション・サービスとして開始した。2010年4月からは、(株)セールスフォース・ドットコム(現 (株)セールスフォース・ジャパン)と協業し、クラウドコンピューティングサービスを開始したほか、システムインテグレーション・サービスにおけるパッケージシステムの導入・アドオン開発業務をパッケージベースSI・サービスとして開始した。
2020年4月にDXの動きが加速していることに呼応し、組織の変更を行った。「DX推進本部」を新設し、その直下に「Salesforce推進室」(現 Salesforceビジネス推進室)と新たに設立した「クラウド戦略室」(現 DXテクノロジーセンター)を配置した。現在、「DX推進本部」を中心としたローコード開発やアジャイル開発等の新デジタル技術人材の強化、クラウドシフトへの取り組みを推進している。
2015年12月に東京証券取引所第2部に新規上場し、2018年5月に同市場第1部に指定替えとなった。また、2022年4月の同市場再編に伴いプライム市場へ移行した。
2021年4月に、同社初のM&AとしてドイツSAP<SAP>の基幹システムパッケージ(ERP)を取り扱う(株)インフリーの全株式を取得し子会社化した。2022年4月に会計パッケージ「SuperStream」専業の(株)NESCO SUPER SOLUTION(現 (株)テクニゲート)を買収、子会社化した。これら子会社は連結決算の対象となっており、2022年3月期より連結決算を開示している。
3. 事業構成
同社の事業はシステムインテグレーション・サービス、インフラソリューション・サービス、パッケージベースSI・サービスの3つのサービスラインがあり、ビジネスの課題解決に向けたシステムをトータルに提供する体制を構築している。2024年3月期のサービスライン別連結売上高構成比は、システムインテグレーション・サービス55.1%、インフラソリューション・サービス10.8%、パッケージベースSI・サービス34.0%となった。
2024年3月期までの3期間におけるサービスライン別売上高の年平均成長率は、全体が15.7%、システムインテグレーション・サービスが11.1%、インフラソリューション・サービスが2.7%、パッケージベースSI・サービスが33.2%となった。
2021年3月期は売上高が前期比2.4%減、営業利益が同12.6%減と、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響を受け、減収減益となった。サービスライン別売上高の増減率は、システムインテグレーション・サービスが同7.0%減、インフラソリューション・サービスが同9.3%減、パッケージベースSI・サービスが同20.7%増と明暗を分けた。インフラソリューション・サービスは2020年3月期のWindows10更新関連ビジネスからの反動減とコロナ禍の影響を最も受けた。2022年3月期には売上高と営業利益がコロナ禍前の水準を上回り、事業環境の変化を1期で克服した。
同社の業績は、顧客企業の予算執行のタイミングや開発システムの工期との兼ね合いから、第2四半期(7~9月)及び第4四半期(1~3月)に売上計上が集中し、営業利益は、年度末の第4四半期に偏重する傾向がある。第1四半期の売上高営業利益率は1~2%と極めて低かったが、2022年3月期以降はパッケージベースSI・サービスの売上高が増加したこともあり収益性が大幅に改善し、同社の収益の季節性が幾分緩和される傾向が見られた。
同社は、システムインテグレーション・サービスとインフラソリューション・サービスを安定成長事業とし、パッケージベースSI・サービスを高成長事業と位置付けており、2020年4月にSalesforceを同社全体で展開するため、「Salesforceビジネス推進室」を配置した。早くも2021年3月期に効果が表れた。2021年4月に子会社化したインフリーが優れた社内教育システムを有しており、同社のSAP関連ビジネスに携わっていた従業員も活用した。これによりSAP関連ビジネスの売上高は、持続的な成長を実現している。また子会社が高度で報酬の高い業務に就いていたことで、同社従業員がより高付加価値な業務を志向するなど企業文化にも好影響を与えている。パッケージベースSI・サービスの拡大による売上構成差もあって、売上高営業利益率はコロナ禍前の2020年3月期の7.8%から2023年3月期に10.6%へ、2024年3月期は12.6%へと上昇、そして2025年3月期は12.9%へとさらなる飛躍を見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)《HN》