Jリース Research Memo(4):地域密着で中小不動産会社と協業する営業スタイル(2)
2024年7月11日 16:04
*16:04JST Jリース Research Memo(4):地域密着で中小不動産会社と協業する営業スタイル(2)
■事業概要
3. ジェイリース<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0718700?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><7187></a>ビジネスモデルの特長
同社のビジネスモデルは、店舗と人で都市部を中心に面展開し、顧客のニーズに徹底的に応えることで信頼を勝ち取るとともに、入居者審査では独自データを活用し厳格にリスクを管理する“地域密着+リスク管理徹底ビジネスモデル”である。具体的な特長としては、(1) 店舗網と人数の多さ、(2) きめ細かな商品・サービス、(3) 協定件数と申込件数の多さ、(4) 住居用賃料保証と事業用賃料保証とクロスセリング、(5) 業界トップ水準の代位弁済発生率と代位弁済回収率、(6) 高い成長性・収益性の6点が挙げられる。
(1) 店舗網と人数
2024年3月末時点で全国36店舗を展開しており、店舗を介した地域密着が同社の強みである。地域別には、地元の九州・沖縄で10店舗、近畿・中四国で8店舗、東海・北陸で4店舗、関東甲信越で10店舗、東北・北海道で4店舗を展開している。スタッフ人数も多く、連結で404人(2024年3月期)が所属している。同社の店舗数とスタッフ数の多さは、同業他社と比較すると明確になる。同業A社は14店舗・291人(2024年1月末)、同業B社は8店舗(2024年3月末、スタッフ数は非開示)、同業C社は10店舗・152人(2024年3月末)でそれぞれ全国をカバーしており、同社の店舗網の緊密さと人数投入量の多さは顕著である。
(2) きめ細かな商品・サービス
きめ細かな商品・サービス対応は同社の強みである。利用者のニーズに応じて、一括払い、年払い、月払いなど多様な保証料の支払い形態をそろえているが、同業他社でこれらをすべてそろえる企業は少ない。また、不動産会社からのリクエストによるカスタマイズも積極的に実施し、個々の不動産会社から信頼を勝ち得ている。代位弁済に関しては、賃料の収納代行サービスも行っており、サービスを利用する会社には賃料の滞納の有無にかかわらず賃料全額が入金される。個別の代位弁済請求時の支払日に関しては、同社が「3営業日後」に支払うのに対して、同業他社では「月末」「月2回」「退去精算後」などが多く、同社の迅速対応は際立っている。また業界最大の店舗数を誇り、代位弁済発生後に連絡が取れない場合の物件への訪問も行っている。これにより例えば高齢者の孤独死の早期発見につながり大家から感謝されるケースも少なくないという。このような地域密着のきめ細かな対応が評判と信頼へとつながっている。
(3) 協定件数と申込件数
賃料債務保証会社は、不動産の賃貸業務を行う不動産会社とあらかじめ契約(協定)を行う。同社は主に中小の不動産会社を協定先としており、26千件という非常に多くの協定件数を持っている。全国の店舗と営業人員で地域に密着した業務を行うことにより、一貫して協定件数を増やしてきた。協定件数の増加に伴い、保証の申込件数も増加し、それにより新規の保証契約も増えている。
(4) 住居用保証と事業用保証のクロスセリング
同社の特長の1つとしてオフィスや店舗の賃料を保証する事業用賃料保証がある。住居用の賃料保証と比べて競合会社が少なく、保証の利用率も低いため、拡大の余地は大きい。住居用と事業用の審査手法は大きく異なるため、住居用の保証会社が簡単に事業用賃料保証を展開できるものではない。同社は創業来、事業用賃料保証を展開しており、永年培ってきたノウハウによって他社の一歩先を行っていると言える。同社は事業用賃料保証を成長性の高い分野と捉え、2017年に保証内容を充実させた商品「J-AKINAI」の販売を開始し、事業用賃料保証の拡大を加速させている。住居用と事業用の保証料売上構成比は、2021年3月期の78:22が2024年3月期には71:29となっており、着実に事業用賃料保証の割合が高くなっている。なお、比較的未導入の多い事業用賃料保証を提案し、実績を積み上げたうえで住居用賃料保証を提案するなど、住居用賃料保証と事業用賃料保証にはクロスセリングの有効性も実証されている。
(5) 業界トップ水準の代位弁済発生率と代位弁済回収率
保証関連事業の重要な経営指標として、代位弁済発生率と代位弁済回収率がある。代位弁済発生率(高いほど収益にマイナス)は、保証契約を結んでいる件数のうち、滞納などが起こり代位弁済をした件数の比率である。後発企業として都市部での知名度の向上やシェアを伸ばすなかで、戦略的に難しい属性の顧客にも対応してきた結果、過去にこの比率が上がった時期もあるが、現在では一定の知名度とシェアが得られたことから採算重視に戦略を転換した。その結果、2021年3月期からは好転し、明確な改善が見られる。2024年3月期は6.1%(前期は5.8%)と良好な水準を維持した。代位弁済回収率(高くなるほど収益にプラス)は、97.1%(2024年3月期)と前期からは0.5ポイント低下したものの、堅調である。両指標が若干低下傾向な理由としては、コロナ禍における補助金などの恩恵により高水準だった前期の反動であり、ぶれ幅は織り込み済みである。リスクのある保証をする存在である保証会社にとって、代位弁済をゼロにすることや、回収を100%することは不可能であり、目標とはならない。適正な審査により債権の良質化を進めつつ、より広く保証を提供する(一定のリスクをとる)ことも社会的な使命である。なお、現時点で同社はこれらの指標において業界トップの水準と考えられる。同社の厳格かつ迅速な審査を支えるのは、専門的なデータと独自開発のシステム、ノウハウを持つ審査部門の存在である。本人属性などから入居者チェックをするほか、新聞記事、代位弁済情報データベース、個人信用情報など多様な情報ソースからAIを活用したモデルを作り、徹底的かつ迅速に審査を行う。
(6) 高い成長性・収益性
同社は、同業他社と比較して、高い成長性に特長がある。2017年3月期から2024年3月期までの7年間の売上高の成長性を比較すると、同社が年率18.1%増、同業A社が年率8.0%増、同業B社が年率18.1%増、同業C社が年率14.0%増となっており、同社の成長性が業界内でも高いことがわかる。同社の成長の原動力は九州以外のエリアへの拡大と深耕である。特に東名阪の大都市エリアでは、同社がシェアを伸ばす余地はまだ広く残っていること、事業用賃料保証の拡大が見込まれることなどから、しばらくは着実な成長が続くだろう。一方、売上高経常利益率で比較すると、同社19.7%(2024年3月期)に対して、同業A社7.0%(2024年1月期)、同業B社23.1%(2024年3月期)、同業C社9.1%(2024年3月期)となっており、収益力においても業界上位であることがわかる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)《AS》