相場展望7月11日号 米国株: 仏で左派が第1党、トランプ勝利なら「インフレ再燃」⇒金利上昇 日本株: 短期筋海外投資家の買い転換で、半導体・コア30に集中投資

2024年7月11日 11:11

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)7/08、NYダウ▲31ドル安、39,344ドル
 2)7/09、NYダウ▲52ドル安、39,291ドル
 3)7/10、NYダウ+429ドル高、39,721ドル

【前回は】相場展望7月8日号 米国株: 米早期利下げ観測で、株価指数は最高値も、市場変化に留意 日本株: 投資家心理は強気続くが、過熱感と夏枯れに留意

●2.米国株:仏で左派が第1党、トランプ勝利ならば「インフレ再燃」⇒金利上昇

 1)フランスで左派が第1党、トランプ勝利ならば「インフレ再加速」⇒金利上昇
  ・7/7の決選投票の結果の議席(予測)
    左派連合・人民戦線(NFP)     180議席
    大統領中道派・アンサンブル(ENA) 163議席
    極右・国民連合(RN)        142議席
    主要3党はいずれも単独過半数には及ばず、今後は深刻な混乱が予想される。
    RNは6/30の1回目投票で300議席をうかがう勢いがあったが、NFPとENAとの共闘で候補者の一本化ができたため、第3党となった。

  ・フランス政局で極右・国民連合(RN)が失速で安堵も、前途多難。第1党となった左派連合の政策も、インフレ上昇圧力へ。
   (1)欧州連合(EU)からの離脱
   (2)積極的な財政出動
   (3)賃金引上げ

  ・第2党となったマクロン大統領の中道連合は、左派連合の切り崩しによる第1党議席の確保に動いている。左派連合NFPは20程度の政党の集団で、政策も幅広く、統一は困難がある。この切り崩しが成功すれば、フランス政局の混乱は最小に抑えられる可能性。

  ・トランプ勝利なら、インフレ再燃 ⇒ 高金利を招くおそれ
   (1)積極的な財政出動
   (2)対中国の関税60%引上げで、輸入コスト上昇
   (3)厳しい移民締め出し政策で、労働需給がひっ迫し、賃金コスト上昇圧力と将来の購買力が低下(GDP成長率の鈍化)

●3.大統領選挙までに▲10%の調整の「可能性が高い」(ブルームバーグ)

 1)米モルガンスタンレーのマイク・ウィルソン氏が警戒感を示した。米大統領選、企業決算、米金融政策を巡り、不透明感が漂うなか、トレーダーは株式相場の調整に備える必要がある。

●4.テスラ、EVの世界市場で販売不振、中国・米国でシェアが減少(江南タイムズ)

 1)今年1~6月で前年比▲6.5%減少。今年の販売目標200万台達成は困難で、昨年の180万台も超えられない可能性。

●5.フランス左派連合「新人民戦線(NFP)」、中道連合との連携を拒否、公約実現に意欲(ロイター)

 1)NFP内で最多議席を獲得した極左「不屈のフランス」の選挙公約
  ・最低賃金の引上げ
  ・定年退職年齢の引下げ(64 歳⇒60歳)
  ・燃料・電力・一部食料品価格の上限設定

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)7/08、上海総合▲27安、2,922
 2)7/09、上海総合+36高、2,959
 3)7/10、上海総合▲20安、2,939

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)7/08、日経平均▲131安、40,780円 
 2)7/09、日経平均+799円高、41,580円
 3)7/10、日経平均+251円高、41,831円

●2.日本株:短期筋の海外投資家の買い転換で、半導体・コア30銘柄に集中投資

 1)2極化が進む日本株
  ・時価総額が巨額で・値がさ株が大きく上昇、半面、小型・新興株が下落
           7/9             7/10
   日経平均 +799円高・+1.96%高    +251円高・+0.61%高
   TOPIX  +27高  ・+0.97%高    + 13高 ・+0.47%高
   グロース250 ▲1安 ・▲0.15%安    ▲ 3安  ・▲0.52%安

  ・特に、日経平均寄与度が高い半導体関連中心とした値がさ株が集中的に買われる展開になっている。言い換えれば「コア30」銘柄が、狙い撃ち的に買われているのが特長の相場。半面、流動性が低く、投資額が大きくならない小型・新興株は無視されている。

 2)日経平均が大きく上昇しているが、少数の銘柄に集中し、放置されている株が多い
  ・コア30銘柄を保有していない投資家にとって、実感できない日経平均の大幅高。

  ・7/9、日経平均+799円高にもかかわらず、値下がり銘柄数472、値上がり1,098。

  ・7/10、日経平均+251円高で、値下がり銘柄数は931、値上がり638。

 3)人工知能(AI)半導体株など値がさ株に買いが集中し、空売りが引っ込むなか急騰
  ・7/9の日経平均高騰の寄与度の高い銘柄
             前日比   寄与度
     東エレク   +1,360円高  133円
     ファストリ  +1,360円高  133円
     ソフトバンクG + 460円高  90円
     アドバンテスト+ 274円高  72円
     信越化    + 172円高  28円
     5銘柄合計        456円:日経平均上昇に57%貢献

 4)騰落レシオでは、過熱感を示さず
  ・騰落レシオの推移   7/8    7/9    7/10
     25日移動平均  104.51   107.88   111.14
     06日移動平均   86.28  98.67  89.64

 5)海外投資家と証券自己が6月4週から再び買いに参戦
  ・日経平均の急騰が示す。

 6)空売りをしてきた短期筋の海外投資家が、損切して買い戻したのも急騰の原因
  ・通常ならば、日経平均が急伸すると「空売り」比率が高まるが、その動きなし。

  ・日経平均の高騰を見ているだけの「空売り筋」。

  ・空売り比率の推移     日経平均の動き
     7/08    40.9%    ▲131円安
     7/09    36.4     +799円高
     7/10    38.4     +251円高

  ・むしろ、空売りの持ち高を損失覚悟で損切して、買い戻していると思われる。それが、日経平均の思わぬ急騰となったと要因と思われる。

 7)日経平均の買い主体は、「短期筋の海外投資家」
  ・当面は全員参加型の日経平均の相場になると予想する。

  ・ただ、買い主体は「短期筋の外人」であるだけに、売り転換に注視したい。その時期をみるうえでも、米国株の動向にも目を向けたい。

●3.実質賃金が26カ月連続減、過去最長(TBSより抜粋

 1)今年5月は前年同月比で▲1.4%減。
  ・5月現金給与総額は29万7,151円で、前年同月から+1.9%増。
  ・一方、物価変動を反映した「実質賃金」は前年同月比▲1.4%減り、26カ月連続して減少。

 2)賃金は上昇しているものの、物価の伸びに追いついていない。

●4.エネオス、原油タンカー以外の海運事業を日本郵船に譲渡へ(ブルームバーグより抜粋

 1)液化天然ガス(LPG)船・ケミカルタンカーなどの海運事業を、エネオスオーシャンが設立する完全子会社に継承し、新会社の株式の8割を日本郵船に譲渡する。2025年4月1日に完了する見込み。

 2)売却で、株主還元拡大への期待が高まりそうだ。

●5.ホンダ、タイ工場を1カ所に集約し、生産能力半分に引き下げへ(NHK)

 1)中国の新興メーカーの参入で、日本車のシェアが奪われているため戦略の見直し。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4502  武田薬品    業績堅調
 ・6981  村田製作所   業績好調
 ・9432  NTT      業績堅調

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