サンワテクノス Research Memo(6):成長戦略の実行により2026年3月期以降の成長期待は高まる
2024年7月9日 13:46
*13:46JST サンワテクノス Research Memo(6):成長戦略の実行により2026年3月期以降の成長期待は高まる
■サンワテクノス<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0813700?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8137></a>の長期ビジョンと中期経営計画
2. 第11次中期経営計画「SNS2024(Sun-Wa New Stage 2024)」の進捗状況
(1) 経営数値目標と進捗状況
2023年3月期からスタートした3ヶ年の中期経営計画では、最重要経営指標を「売上高」から「営業利益」に設定し、最終年度となる2025年3月期に70億円の目標を掲げると同時に、企業価値の向上に取り組み、PBR1.0倍超の早期実現を目標に掲げていた。2024年3月期までの進捗状況については、2023年3月期に営業利益で76億円と目標を2期前倒しで達成し、2024年3月期も当初目標の60億円を上回る進捗となったが、2025年3月期の営業利益予想は30億円と当初目標の70億円を下回る見込みとした。これは中国経済の景気回復の遅れなど市場環境の悪化が要因の1つだが、既述のとおり2022年3月期以降の2年間は部品不足を背景に前倒しで部材を発注する動きが活発化したことで需要を先食いし、その反動が2025年3月期の利益減の一因と見ることができる。
ただ、3期間の累計で見れば、営業利益は目標の180億円に対して168億円と目標に近い水準を稼ぎ出す見込みとなっている。また、2020年3月期から2022年3月期までの3期間累計との比較で見れば営業利益は1.9倍に拡大し、営業利益率も2.1%から3.4%に上昇するなど、利益規模が拡大し収益性も向上する見込みとなっており、同社が2023年3月期以降に取り組んできた成長戦略の効果が一部出始めているものと評価される。
(2) 戦略方針と進捗状況
「SNS2024」で取り組む基本方針として同社は、a) イノベーションが求められる成長分野への注力、b) より高付加価値な製品と新たなソリューションの提供、c) サステナビリティ経営による持続可能な社会の実現に貢献、の3点を掲げている。このうち、イノベーションが求められる成長分野への注力に関しては、顧客セグメントを同社の強みと市場の魅力度(市場規模、成長率、利益率)を両軸にして、「積極的リソースを投入する分野(半導体製造装置、ロボット・マウンター、工作機械)」「選択的リソースを投入する分野(FA装置、車載、設備)」「その他分野」に分類し、リソースを投入する顧客セグメント別に事業戦略を立案・実行することで、売上総利益の拡大と収益力を強化する戦略となっている。
2024年3月期の売上総利益(単体、国内事業)の構成比を分野別で分けると、FA装置分野が36%と最も高く、次いで半導体・液晶製造装置分野が12%、車載分野が8%、設備分野が7%、ロボット・マウンター分野が6%、工作機械分野が4%となる。同社は3年間の目標として、これら分野の利益成長率を年率10%以上(半導体製造装置のみ15%以上)に設定し、目標達成に取り組んできた。2024年3月期までの進捗状況は車載分野が27.6%、FA装置分野が11.7%とそれぞれ計画を上回る進捗となっているが、その他の分野は総じて計画を下回る状況となっている。設備投資マインドの冷え込みと顧客の在庫調整が要因だが、2025年3月期は工作機械分野を除いて各分野で明るさを取り戻す見通しとなっている。
顧客セグメント別の2024年3月期の取り組みの成果について見ると、積極的リソースを投入する分野のうち半導体製造装置分野では、顧客ニーズのさらなる把握と最先端の「尖った製品」の提案をきっかけとして、大手グローバル企業のアカウントを開設し、少量ながらも取引を開始するまでになった。「尖った製品」とは、ベンチャー企業や外資系企業などが開発する斬新で新規性の高い商品のことを指す。半導体業界に関しては国策で育成する方針を政府でも示しており、カギを握る半導体製造装置の競争力向上を支援すべく、最先端技術の提供や重要部品ユニットの提供を進めながらシェア拡大を目指す。
ロボット・マウンター分野に関しては、顧客ニーズの横展開と最先端技術のシーズ提供により新規商談を獲得した。ここ1~2年はパソコンやスマートフォンの需要低迷が長引き、主力顧客先であるチップマウンターメーカー向けの売上も大きく落ち込んだが、2025年3月期はこれら電子機器生産の回復とともにチップマウンターメーカーの受注も回復に向かうと予想される。また、超大手のロボットメーカーのアカウント開設にも成功しており、2026年3月期以降の成長が期待できる状況となっている。工作機械分野では、工程集約・自動化・省エネ機器への提案による商談獲得やIoT化で重要性が増大するFA用PCの商談を獲得したほか、顧客のグローバル生産に対するサプライチェーン提案を行うことで商談を発掘した。
選択的リソースを投入する分野のうち、FA装置分野ではグローバル大手顧客の開拓に成功したほか、仕入先シーズである新規テクノロジーの仮説提案や、業界動向や顧客ニーズを押さえた仮説提案により商談を獲得した。車載分野に関しては、人員増強による営業体制強化並びに品質管理体制の充実と付加価値提案により、主力Tier1顧客への取引深耕を図ったほか新規Tier1企業の顧客開拓に取り組んだ。自動運転や電動化、コネクティッド関連の商談は多く、今後も安定した成長が期待できる分野である。設備分野に関しては、2023年に業務提携した(株)エムテックとの協働開発となるロボットソリューションパッケージ「3D Connectシリーズ」を発売し、商談や受注を獲得したほか、EV用二次電池の製造向けにレーザ加工溶接の商談を獲得した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《SO》