ソフトバンクGは、NVIDIA株で手にできた20兆円をみすみす失っていた?

2024年7月3日 09:04

 ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は、2019年2月6日に開催された2018年度第3四半期決算説明会で、2016年12月に約3000億円で取得した米NVIDIAの株式全てを売却したと発表した。当時NVIDIA株が急落していたため、連結営業利益に影響が及ぶと予想された最大4000億円程度の損失発生を回避するためだった。

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  SBGは10兆円ファンドとして話題を集めた「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)を通して、「AI群戦略」を進めていた。NVIDIAはその戦略の有力投資先の1つだった。

 孫社長も(NVIDIAを)「AI革命をリードする企業として」高い評価をしていたから、鳴り物入りで始めた「AI群戦略」で投資した先からあっさりと資金を引き上げるのは、一貫性のない行動だと受け止められてもやむを得まい。

 この矛盾を指摘された孫社長は「SBGは純粋な持株会社で、投資と売却を適切な時期に行なうのが日常業務だ。業績の伸びが成熟した頃に、見送る時期はいずれ来る。いわば卒業だ」と回答していた。

 当時 SBGは平均単価105ドルでNVIDIA株を保有していた。当時のドル円相場がおよそ115円だったから、1株は1万2000円ほどになる。株数では2484万株程度と計算される。

 その後、NVIDIAは2021年に1対4で、2024年6月10日には1対10の株式分割を行なっている。つまりSBGが保有していた2484万株は40倍の9億9360万株になっていたことになる。この株数に1株126ドルの時価とドル円相場を約160円として計算すると、約20兆円という結果が導かれる。

 つまり、2016年に3000億円ほどで取得したNVIDIA株はそのまま持ち続けていたら、現在は約20兆円の資産になっていた筈だ。

 2019年2月の決算説明会で「NVIDIAから卒業した」と強弁した孫社長だが、今年6月21日に開催された定時株主総会では「現金が必要になって手放した。もったいなかった」と答えている。卒業という表現が適切ではなかったと感じたのだろうか。

 そう言えば、NVIDIA株を手放した時期には、通信子会社のソフトバンクを強引と思われるほど強気に上場させて、約2兆6000億円を調達したことが話題になっていた。

 当時、SBGの切迫した懐具合が拙速な判断に繋がったように感じさせるエピソードだろう。

 NVIDIA株を手放していなければ、今頃は20兆円の含み益を抱えることができたし、その後の推移で買い増ししていれば、100兆円台になっていてもおかしく無い。

 何しろ、SBGが進めていたのは「AI群戦略」で、NVIDIAはその中核として急成長を続けているのだから・・・

 なお本稿で導き出した20兆円の逸失含み益は、過去に報道された計数を基に算出したもので、SBG自体が認めているわけではない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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