IXナレッジ Research Memo(1):2024年3月期通期業績は過去最高の売上高・各利益を更新

2024年7月2日 14:51

*14:51JST IXナレッジ Research Memo(1):2024年3月期通期業績は過去最高の売上高・各利益を更新
■要約

アイエックス・ナレッジ(IKI)<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0975300?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><9753></a>※は、独立系の中堅システムインテグレーターである。IT戦略提案、IT化推進などのコンサルティングからシステム開発、検証、保守・運用までシステムのライフサイクルを通じて一貫したサービスを提供する。日立製作所<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0650100?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><6501></a>やNTTデータグループ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0961300?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><9613></a>などの大手システムインテグレーターやみずほリサーチ&テクノロジーズ(株)などのユーザー系システム会社、KDDI<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0943300?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><9433></a>などのエンドユーザーなどが主要取引先であり業績は安定している。なお、顧客企業上位10社で売上高の7割以上を占める。2023年2月には、土木建築業界に特化してシステム開発を行う(株)シーアンドエーコンピューター(本社:東京都江東区)を子会社化し業容を拡大した。クラウド基盤構築、アジャイル開発、RPA、ブロックチェーンなど先進のIT技術にも積極的に取り組んでいる。売上高に占めるDX案件(クラウド、アジャイルなどを含む)の比率は30%を超えて上昇している。(2024年3月期30.4%)

※同社の略称はIKI(IX Knowledge Inc.)で、企業コンセプトのInformation & Knowledge Innovationともリンクしている。


1. 業績動向
2024年3月期の業績は、売上高が前期比7.6%増の21,748百万円、営業利益が同13.4%増の1,655百万円、経常利益が同13.4%増の1,739百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同24.1%増の1,275百万円と売上高が堅調に伸び、各利益は2ケタ成長となった。売上高については、システム開発において大手ベンダー経由の開発案件、総合物流企業向け開発案件などが拡大し増収に貢献した。また、運用サービスにおいては、大手ベンダー経由の基盤・環境構築案件が好調に推移した。利益面では、ベースアップを期中に行い人件費が増えたものの、シーアンドエーコンピューターとの連結による利益増や適正な原価管理による売上原価の抑制により、売上総利益率は同0.1ポイント上昇した。販管費に関しては、戦略的な投資及び定期的なモニタリングにより、販管費率は同0.3ポイント低下した。これらの結果、過去最高の営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益となった。

2025年3月期の業績については、売上高で前期比2.2%増の22,231百万円、営業利益で同5.9%増の1,752百万円、経常利益で同4.5%増の1,817百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同4.6%減の1,216百万円と堅調な増収及び営業増益を見込んでいる。受注環境については、コロナ禍で加速したデジタル化(DX)による企業のビジネス変革の動きは今後も継続し、それを支えるIT投資は堅調に推移すると見込まれる。営業面では、既存案件の拡大とともに、DX・クラウド化案件の受注拡大を目指す。DX案件の売上高比率は4ポイント増の34%を計画する。人員に関しては、進行期はリスキリング(スキルの見える化、再教育、最適配置など)を強化する。一人ひとりのキャリアを考慮して適正なスキルの習得に時間をかける。売上高の成長率が2.2%予想と低めになった背景には、このような中長期を見据えた人的資本への先行投資がある。売上総利益率が21.0%(前期比0.9ポイント上昇)と高まるのは、DX案件が増加する中、人財育成による単価向上も要因のひとつである。販管費率13.1%(同0.7ポイント増)と人件費などを中心に増加するものの、売上総利益の増加が上回る予想だ。弊社では、進行期は意図的に“踊り場”を作り、成長スピードを一定程度抑制する戦略と理解している。短期的には教育投資などが先行するが、DX・クラウド化の動きが依然として活発であることから、中期的にはスキルアップした人材の単価の上昇などで十分回収できると考えている。戦略遂行のKPIとして、DX案件売上高比率(直近30.4%)、クラウド関連取得資格数(直近588資格)などにも注目したい。

2. 中期の戦略・トピック
同社は、グループ一丸となった経営体制を構築していく企業風土の醸成を目的として「グループパーパス」を制定した。グループパーパスを改めて策定する背景には、今後M&A・企業連携を加速し、グループが拡大していくことが考えられる。グループ各社がこれまで築き上げた事業の礎をなす経営理念を尊重しつつ、グループが共通して持つべき考え方や価値観を今回整理した。主文は「社会とITの未来をともにつなぐ(“Connecting people one world”/想い:IKIグループは、共創によりITと社会を繋ぎ、豊かな未来を創造します)」とした。また、“共創”を実現するためのバリュー・土台として、技術力、顧客満足、持続的社会への貢献、健康経営の4点が位置付けられた。M&Aの体制も、来た案件を検討する属人的な体制から意思を持って探索し、スピーディに検討を行う組織体制に進化する。M&Aのタイプとしては、業種の拡大(実例としてシーアンドエーコンピューター)、地域展開、DX関連新技術の強化などが想定できる。同社はほぼ無借金に近い強固な財務基盤を維持しており、積極的なM&A戦略を行っていく余力を有している。

3. 株主還元
同社では株主還元について、経済環境の変動が激しいことから、安定配当を第一とし、業績や将来の見通し、配当性向、配当利回りなどを総合的に勘案し配当を決定する方針である。過去には、減益となった期もあったが、1株当たりの配当金は維持または増配してきた。2024年3月期は、年配当金30.0円(前期と同じ)、配当性向22.7%となった。2025年3月期は、年配当金40.0円(普通配当5.0円増配、誕生25周年記念配当5.0円)、配当性向31.7%を予想する。2025年3月期は、親会社株主に帰属する当期純利益がわずかに減益の予想ではあるが、配当性向を9ポイント上昇させ、株主還元を充実させる方向である。

■Key Points
・2024年3月期通期業績は過去最高の売上高・各利益を更新。
ベアによる人件費増も生産性向上などにより販管費を抑制し利益拡大
・2025年3月期は売上高・営業利益ともにやや低めの成長を計画。リスキリング(再教育・再配置)を強化し戦略的な“踊り場”をつくる
・中長期のM&A加速・グループ拡大を見据えて「グループパーパス」を策定。中計では3年後売上高245億円、営業利益19.7億円を目指す
・配当充実。2025年3月期は年配当金40.0円(普通配当5.0円増配、誕生25周年記念配当5.0円)、配当性向31.7%を予想

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)《SO》

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