NSW Research Memo(9):「デジタル変革による社会と企業の持続的成長の両立」を目指す(2)

2024年7月1日 13:29

*13:29JST NSW Research Memo(9):「デジタル変革による社会と企業の持続的成長の両立」を目指す(2)
■中長期の成長戦略

第2に、汎用ロボット開発フレームワークの取り組みが挙げられる。これは、略称「GEBOTSフレームワーク」として、“省力・省人化”、“無人化”、“IoT化”と“効率的開発支援”をコンセプトとしたロボット開発用ソリューションを提供するものだ。具体的な実用例としては、「GEBOTSフレームワーク」を複数のバーコード/QRコードを同時に素早く正確に読み取りする「MCSL(マルチコードスキャンライブラリ)」と組み合わせることで、倉庫での在庫管理作業を自働化する事が可能である。NSW<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0973900?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><9739></a>が自動車業界での開発経験で培った技術で、農畜産業、船舶業界、鉄道業界などの他業界の顧客の抱える課題も解決する「ソフトウエアフレームワーク」である。その特徴としては、既存の走行装置に自動運転やADAS関連の必要な機能を追加する制御ソフトウエアフレームワーク、RTK-GNSS / LiDAR / カメラ / 各種センサーを利用し自己位置推定や周辺情報検知を実現、各種センサー及び走行装置のインターフェースSWモジュールのカスタマイズで様々な機器と接続可能、画像認識 / AI / IoTなど独自機能も拡張SWモジュール化することで統合可能、動態管理システムと連携する動作可能、顧客のアプリケーションと連携するための連携APIを提供、などが挙げられる。同社では、クラウドを活用した監視システム検討、車両やセンサメーカーとの連携強化、多様な事業分野への展開、他ソリューションとの連携実証実験、などに取り組む計画である。

さらに、その他の活動実績としては、衛星データを用いた地形解析の取り組みとして、従来の土木技術者による経験的知見や暗黙知の判断に対し、衛星データ+AI解析で短時間、均一な精度の解析を実現し、防災・土木工事のデータ活用を目指す取り組みがある。また、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)への取り組みとして、ネットワーク設計構築・通信プロトコル・監視制御・仮想化技術・自動化技術を活用して、マルチオーケストレーション機能をハブとしてレイヤの異なる複数のリソースを最適統合ネットワークの設定・連携・管理・運用が一元管理に向かう構想を推進している。モダナイゼーションへの取り組みでは、COBOLモダナイゼーションソリューションとして(株)Scalarとの共同検証・研究を推進する。さらに、RealWear×生成AIの活用取り組みでは、産業用スマートグラスのRealWearから音声で質問を入力し、生成AIが学習した手順書やデータから文書と図で回答することで、現場の騒音下でも強力なノイズキャンセリングによりAIに正確に質問をすることが可能になっている。今後も、セキュアな環境で業務/開発への生成AI活用を検討している。

3. 業績目標とセグメント別の計画
以上の重点戦略を推進することで、計画最終年度の2025年3月期には、売上高50,000百万円(2022年3月期実績比15.1%増、年平均成長率4.8%増)、営業利益率11%を業績目標とした。2023年3月期からスタートした4セグメント制で増収を継続し、おおむね2022年3月期並みの営業利益率を維持することで、増収増益を達成する計画である。これは、同社が3年後の達成を目指す最低限の目標を示した保守的な計画であると考えられる。事実、売上高・営業利益率は2年目の2024年3月期には目標を上回っており、最終年度の2025年3月期も目標を上回る見通しである。当期の進捗状況に注目したい。

中期経営計画達成に向けた各セグメントの事業方針と進捗状況は、以下のとおりである。

(1) エンタープライズソリューション
各業種ノウハウを生かしたDXオファリングを推進する。流通業向けにはESL/欠品検知/接客/配送/EC通販連携、製造業向けにはERP※/デジタル生産支援/物流改革/AI図面、物流向けにはAI配送/画像識別/ロボティクス/卸向けSCM、金融向けにはクラウドシフト/モダナイゼーション、公共向けにはデジタルガバメント政策対応、などを推進する方針だ。これらの施策により、2025年3月期に売上高17,000百万円(2022年3月期比14.1%増)、営業利益率13%(2022年3月期は13.2%)を計画している。中期経営計画2年目の2024年3月期は、計画を大きく上回る売上高・利益率を確保しており、2025年3月期も計画達成を予想している。

※Enterprise Resource Planningの略で、企業が有する経営資源を一元管理しリアルタイムで経営判断に役立てるシステム。


(2) サービスソリューション
顧客のDX部門へのアプローチを強化しDX推進を支援するほか、ビジネスモデル変革事業の対応領域の拡大、クラウドネイティブへの対応強化とデータマネジメント領域の拡大、などを推進する。これらの施策により、2025年3月期に売上高14,000百万円(2022年3月期比18.1%増)、営業利益率7%(2022年3月期は4.4%)を計画している。体制強化のコストや不採算案件の影響がなくなり、今後は利益も改善する見通しであることから、営業利益率については上昇を計画している。2024年3月期は増益ながら、利益率は計画を下回っている。低採算案件をなくし利益改善を図ることが課題である。2025年3月期予想では、売上高は達成するが、営業利益率は厳しそうだ。

(3) エンベデッドソリューション
既存の組込み技術領域を活用したサービスの創出、エッジコンピューティング分野の推進、自動運転や5G/6Gなど成長分野への取り組み強化と事業拡大、などを推進する。これらの施策により、2025年3月期に売上高10,000百万円(2022年3月期比13.5%増)、営業利益率13.5%(2022年3月期は13.8%)を計画している。2024年3月期は計画を上回る売上高・利益率を達成しており、2025年3月期も達成を予想している。

(4) デバイスソリューション
LSI開発技術を基盤としたデザインサービスの拡大、クラウドデザインサービス事業への展開、DeepLearningをコアとした事業推進、などを図る。これらの施策により、2025年3月期に売上高9,000百万円(2022年3月期比14.0%増)、営業利益率14.5%(2022年3月期は15.3%)を計画する。営業利益率については低下を見込むものの、引き続き高水準の利益率を見込んでいる。2024年3月期は利益率は計画を上回った。2025年3月期には売上高は達成するものの、利益率は厳しい予想だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)《SO》

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