日産東HD Research Memo(3):売上は新車中心、利益のバランスは良好
2024年6月27日 14:43
*14:43JST 日産東HD Research Memo(3):売上は新車中心、利益のバランスは良好
■事業概要
1. 事業内容
日産東京販売ホールディングス<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0829100?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8291></a>は電動車を主軸に、カーライフに関するサービスをワンストップで提供しており、事業セグメントは自動車関連事業、情報システム関連事業(2023年10月全株売却済み)、その他に3分され、自動車関連事業は新車販売、中古車販売、整備、その他に細分される。2024年3月期における自動車関連事業の売上高構成比は9割以上と大半を占め、そのうち6割近くを新車販売が占めているが、利益は新車、中古車、整備、収入手数料、情報システム、その他で良好なバランスにあるといえる。なお、日産自動車と日産東京販売の関係は、日産東京販売が日産自動車から新車や部用品を仕入れて一般消費者などに販売するというだけでなく、EVやプロパイロット、e-POWER、e-4ORCE(電動駆動4輪制御技術)といった先端技術車のPRや試乗会開催、急速充電器の拡充などを通じて、日産自動車と消費者をつなぐ役割も担っている。
(1) 自動車関連事業
日産東京販売は日産自動車の新車全車種を販売している。コロナ禍などにより一時車両供給不足の状況になったが、日産自動車が継続的に新型車を投入したため販売は活性化、新規顧客も増加傾向にある。これに伴って多様化する顧客の期待やライフスタイルに合わせ、同社は「ニッサン・リテール・コンセプト(NRC:Nissan Retail Concept)」という新世代型店舗へのリニューアルを進めている。なお、ルノー車については、日産東京販売社内においてルノー車専門のバーチャルカンパニーとして販売店5店舗を運営、全国のルノーディーラーでNo.1の販売台数という実績を誇っている(2023年度実績)。ところで新車販売台数は、少子高齢化や人口減少、自動車保有率の低下傾向などを背景に、全国で500万台程度と横ばいで推移する時代になった。ディーラーが企業として成長するには、スケールメリットや集約化によって新車や中古車販売の収益性を高めるとともに、新車や中古車以外の成長ドライバーによる独自戦略を展開する必要に迫られている。
(2) 個人リース「P.O.P」
個人向けカーリースは、自動車を所有するモノというより利用するモノと考える現代の消費者にとって、非常に利便性の高いサービスで、販売先がリース会社という新たな新車の販売形態ということができる。そのなかで先行した同社の個人リース「P.O.P」は、25年以上の歴史がある独自の事業で、東京都で約4割という高いシェアを誇っている。「頭金ゼロ・コミコミ・定額」が特徴の「P.O.P」は、通常の新車買い替えサイクルが一般的に10年と言われるなか、7割以上の顧客が3年で次の新車に乗り換えるうえ、リピート率が9割以上に達するため、同社にとって非常に販売効率の良いビジネスとなっている。同時に、保有期間が一般の半分以下という良質な中古車の仕入先にもなるというメリットがある。こうした個人リースの特徴から、現在、自動車のみならず様々な業種が個人リースに参入しつつある。このため、消費者にとって選択肢が広がり、市場が活性化することが期待されており、「P.O.P」にとっても追い風になっている。2023年4月からは中古車個人リース(新たな中古車の販売形態)にも着手した。
(3) 新車以外の自動車関連事業
新車のほか、中古車の買取・販売、整備・車検なども行っており、新車を販売することで中古車販売の回転が良くなり、整備などのストックビジネスが積み上がるという安定したバリューチェーンを構築している。中古車の買取・販売は、収益の1つの柱であると同時に新車の販売促進という側面もある。買取は、同社を含めた日産ディーラーネットワークが運営する「日産カウゾー」で、中間マージンを排除した高価買取を行っている。販売は、厳しいサービスレベルをクリアした同社のような「クオリティショップ」が、日産自動車による認定中古車を取り扱っており、充実した保証やアフターサービスも提供している。なお、日産自動車公式中古車サイトでは、14,000台以上の中古車を比較検討することができる。
整備は、日産東京販売のストックビジネスの柱として各拠点を中心に事業展開しているが、子会社の大規模総合自動車整備会社エヌティオートサービス(株)は、専業としての確かなサービス品質と最新鋭の設備によって板金・塗装や車検整備、納車整備などを行っており、グループの整備を集中的に扱うセンター的な役割を果たしている。事業所は東京に7拠点、埼玉に1拠点あり、高級輸入車のアルミボディにも対応できる業界屈指の高い技術力を有し、車検整備約33,500台、板金・塗装総台数17,000台という実績を誇る(2024年3月期)。車検については、日産東京販売のほか、車検専門店「車検館」でも扱っている。「車検館」は東京、神奈川、埼玉、千葉に12店舗のネットワークを有し、全店が最新設備をそろえた指定工場で、メーカーを問わず幅広い車種の自動車を入庫でき、国家資格を持つ検査員が確かな技術で検査することをセールスポイントにしている。また、価格やサービス、技術にも定評があり、顧客の8割以上がリピーターと満足度が高く、このため業績好調を続けている。
このほか、損害保険・生命保険の代理店や車両輸送・登録代行業務、日産車をベースにしたキャンピングカー専門のディーラー、不動産賃貸などを行っているが、こうした自動車販売周辺の事業へと多角化することで、グループとしてシナジーを高め、幅広いユーザーの獲得につなげている。
(4) 情報システム関連事業
同事業の中核である東京日産コンピュータシステムは、マネージドサービスカンパニーとして全国の自動車ディーラーに対し、ハードウェアや統合型マネージドサービス「ITte(イッテ)」などソフトウェアの販売、及びデータセンターなどの情報資産の管理や運用・監視業務、業務効率化・生産性向上の支援を行ってきた。なお、同社は東京日産コンピュータシステム全株式を、2023年10月2日にキヤノン<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0775100?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><7751></a>の子会社キヤノンマーケティングジャパン<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0806000?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8060></a>に譲渡し、10月30日に東京日産コンピュータシステムは上場廃止となって、11月1日に社名をTCS(株)に変更した。親子上場による様々な問題の解消に加え、自動車関連事業への集中などグループ内の経営資源の最適化、東京日産コンピュータシステムとキヤノンマーケティングジャパンというIT企業間のシナジー発揮などが目的で、3社がウィン・ウィン・ウィンの関係となることが確認できたため譲渡に至った。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)《HN》