日産東HD Research Memo(2):総合モビリティ事業のフロントランナー

2024年6月27日 14:42

*14:42JST 日産東HD Research Memo(2):総合モビリティ事業のフロントランナー
■会社概要

1. 会社概要
日産東京販売ホールディングス<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0829100?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><8291></a>は、日産自動車系の自動車ディーラー(日産東京販売)など連結子会社3社と非連結子会社3社を傘下に持つ持株会社である。傘下の日産東京販売は日本の中心で人口が集中する東京を地盤に、日産及びルノーブランドの自動車を販売する事業を展開しており、全国のディーラーにおいて最大級の規模を誇る。同社は主に日産自動車とそのグループ会社からEVなど先端的な自動車や部用品を仕入れて販売するほか、中古車の買取・販売や車体整備・車検整備などの事業も行っており、総合モビリティ事業のフロントランナーとして、顧客に対しカーライフに関わるすべてのサービスをワンストップで提供している。


日産ディーラー事業の強化と集中を進める
2. 沿革
同社は、1942年の商工省通牒「自動車及び同部分品配給機構整備要綱」に基づき、東京府自動車配給(株)として東京市で発足した。戦後の1946年に東京日産自動車販売(株)に商号を変更し、その後はモータリゼーションとともに徐々に業容を拡大、1961年に東京証券取引所第1部に上場した。1989年に東京日産コンピュータシステム(現 TCS)を設立してシステム事業に参入、2002年に(株)車検館を設立し車検整備を強化、2004年には東京日産コンピュータシステムをJASDAQ市場に上場させた。また、同年、会社分割により持株会社体制に移行して(株)東日カーライフグループへと商号を変更、2008年には日産自動車子会社の日産ネットワークホールディングス(株)に対し第三者割当増資を実施、日産自動車の持分法適用関連会社となった。2011年には東京を地盤とする東京日産自動車販売、日産プリンス東京販売(株)、日産プリンス西東京販売(株)の3社をグループ化し、東京における日産自動車の販売をほぼ一手に引き受けることになった。これに伴い、同社は現在の日産東京販売ホールディングスへと商号を変更した。グループ化が軌道に乗った2021年7月、さらなる効率化とスケールメリットを目指し、日産販売会社3社を統合して日産東京販売を設立、名実ともに国内最大級の自動車ディーラーとなった。また、限られた経営資源を自動車関連事業に集中するため、2023年10月に東京日産コンピュータシステムの全株式を譲渡した。


「CASE」や「MaaS」に即して事業体制を構築
3. 自動車業界の動向
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)やウクライナ情勢などによる生産や流通の混乱が落ち着きを見せても、自動車業界は先端技術化やCO2排出削減など課題は尽きない。こうした状況のなか、「CASE」と「MaaS」という潮流が、自動車業界に100年に1度の大変革をもたらすと注目されている。「CASE」とは、自動車のIoT化(C:Connected)、自動運転(A:Autonomous)、所有から共有へ(S:Shared & Services)、EV(E:Electric)のことで、自動車業界に大変革を引き起こす一連の技術進化である。一方「MaaS(Mobility as a Service)」は、移動自体をサービスとして捉えた「モビリティ」という考え方に基づき、様々な交通手段を最適に組み合わせて予定・予約・決済をワンストップで提供、個人単位の移動ニーズにまで対応したサービスである。自動車業界の大変革期における適応の1つと考えられる。

こうした大変革に即してEVを急速に普及させたのが欧州や中国で、日本では話題が先行するばかりで必ずしも普及しているとは言い難い。理由は、EVに本格参入している国内メーカーが日産自動車くらいで、新車販売台数に占めるEVの構成比が非常に小さいからだ。このため、業界全体に充電器を増やすというモチベーションが働かず、消費者にEV購入の二の足を踏ませているともいえる。こうした環境のなかだが、同社は早い段階からEVやe-POWER※1といった電動車※2の普及に取り組み、電動車と相性がいいと言われるIoTには先端技術化で、自動運転にはプロパイロット(ProPILOT:運転支援技術)などの技術進化で対応してきたため、同社の電動車は先端性などの面で優位性を発揮している。さらに、「MaaS」に対してはリースやレンタカーなどモビリティ事業の強化を進めている。もちろんEV普及の旗振り役ともいえる同社だから、各店舗に他社メーカー製のEVも利用可能な急速充電器を設置するなど、積極的なインフラ投資も続けている。このように同社は、「CASE」や「MaaS」といった潮流に即して事業体制を構築してきたため、本質的に肥沃な市場といえる日本でEV需要が急拡大する際には、先行者メリットを享受することになろう。

※1 e-POWER:日産自動車独自のハイブリッドユニット。発電のみにエンジンを使用するため、EVと同様のドライビングフィールを味わえる。
※2 電動車:電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV、PHV)、ハイブリッド車(HEV、HV)、燃料電池車(FCEV、FCV)などの総称。同社の場合はEVとe-POWER、ハイブリッド車を指す。


近年、EV需要が鈍化していると言われるが、これは中国や欧州、米国などEVの市場シェアが高い国の現象で、後述するように同社がEVの販売台数を40%も伸ばすなど、成長を続ける日本においては当てはまらない話である。EVのリスクについて、バッテリー寿命・交換コスト、航続距離・充電インフラ・充電時間への不安、車体価格の高さ、高金利、補助金カット(または補助金制度の不備)、新型車の不足、需要一巡などが挙げられることが多いが、これこそ中国や欧米でEVが鈍化している理由といえる。なかでも補助金カットや新型車不足、アーリーアダプターによる需要一巡の影響が相対的に大きく、市場のなかでEVの勢いがやや落ちているということなのであろう。補助金のない状態が通常となり価格がこなれてくれば、日本を含めて、マジョリティによる購買が始まると思われる。もちろんそのためには、キーテクノロジーであるバッテリーにおいて進化や量産の面でブレークスルーが必要となるが、全個体電池の実用化が視野に入りつつある今、マジョリティが動き出す日も遠い将来のことではなさそうだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)《HN》

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