DDグループ Research Memo(10):中計の下、ブランド強化や事業領域拡大等によりLTV最大化を目指す(2)
2024年6月25日 12:10
*12:10JST DDグループ Research Memo(10):中計の下、ブランド強化や事業領域拡大等によりLTV最大化を目指す(2)
■今後の成長戦略
3.計数目標
(1) 財務目標
DDグループ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0307300?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><3073></a>は、前期業績が計画を上回ったことを踏まえ、最終年度(2026年2月期)の財務目標(利益目標)についても上方修正した※。連結売上高400億円(年平均成長率7.5%)、連結営業利益40億円(営業利益率10.0%)、ROE20%以上を目指している。注目すべきは、投資の選択と集中による財務体質の強化を図りつつ、利益率15%以上の事業セグメント創出(例えば、空間活用ノウハウやダーツ、ビリヤードなどの装置ビジネス領域、IPコンテンツを生かしたサービス領域等)やストックビジネスの拡充(例えば、貸コンテナやシェアハウスなど不動産ビジネスなど)により、収益構造の変革に取り組む点であり、これまでの外食を中心とする利益率10%未満のビジネスモデルやフロービジネスからの脱却を目指す。1年目の進捗については、BSの改善(D/Eレシオ4.1倍→2.1倍)、PLの改善(営業利益率1.4%→8.7%)、FCF(資本効率)の改善(ROE17.4%→46.6%)などで目覚ましい成果をあげることができた。
※最終年度(2026年2月期)の連結営業利益目標を28億円(営業利益率7.0%)から40億円(営業利益率10.0%)、連結経常利益を27億円から39億円に上方修正した。
(2) キャッシュ・アロケーションの考え方
3年間の営業CFは合計約80億円を見込むとともに、手元資金(運転資金を除く)約100億円と合わせると約180億円の原資を想定している。そこから持続的な成長に向けた投資や、経営体質強化のための有利子負債の弁済にバランスよく配分するほか、中期経営計画の実現とともに株主還元も並行して検討する考えである。1年目については、BSやPLの改善を優先してきたが、一定の目途がついたところで、M&Aを含む成長投資の再開に加え、株主還元も検討していく考えのようだ。
(3) 非財務目標
女性管理職比率は現状水準(24.2%)を維持する計画である。また、気候変動対応については、引き続きCO2排出削減などに取り組んでいく。2024年2月15日には、サステナビリティ推進委員会の設置を決議し、環境や社会課題の解決、ガバナンス向上に向けた取り組みを推進する体制を整えた。今後、各マテリアリティの特定やその対応、TCFDに準拠した開示なども検討していく方針だ。
4. 中長期的な注目点
外食業界は市場の伸びが期待できないうえ、競争の激化や消費者嗜好の変化などに直面し、将来に向けた変革をどう進めるかが重要なテーマであったが、そこにコロナ禍の影響やニューノーマルが重なり、まさに転換期を迎えている。したがって、この難局を乗り切るとともに、先を見据えた戦略をいち早く進めることが、今後の持続的成長に向けて最大のアドバンテージになる。中長期的な視点からは、同社ならではの独自性の高いイノベーションを生み出し、環境変化をいかにプラスに転じるかが、同社の将来を見据えるうえで重要なポイントになると考えている。その意味で、他社保有IPコンテンツの活用ノウハウを有するエスエルディーや、湘南エリアで独自のホテル・不動産サービスを展開する湘南レーベルといった、個性的な連結子会社との連携を含めた、新たな空間価値、付加価値の創出に期待したい。また、中期経営計画で掲げられた3軸のうち、新たなドライバーとなり得る「チャネル(エリア)」(展開領域の拡大)と「ライフスタイル(ステージ)」(拡張領域の推進)については、地方創生を目的とした各自治体や共創パートナーといった外部リソースとの連携がカギを握ると考えられる。今後、成長投資が本格化し、具体的な進展や成果が形となれば、これまでとは違ったドライバーとしてスケールするポテンシャルを十分秘めており、そういった視点から今後の動向をフォローしていきたい。1年目の活動を通じて、具体的な形が見えてきたところもあるが、本格的な動きはBSの改善に一定の目途がつく来期以降になると見ている。1つの判断基準として優先株式50億円※の償還が見えてきたタイミングとする考え方もできるだろう。
※ロナ禍において、財務の安全性を維持するために導入したもの。優先配当は年間2億円となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)《AS》