マーケットエンタープライズは戻り歩調、24年6月期は上方修正して大幅営業増益予想

2024年6月23日 18:40

 マーケットエンタープライズ<3135>(東証プライム)は持続可能な社会を実現する最適化商社を目指して、ネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開している。中期経営計画では、個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。24年6月期の業績は6月14日付で上方修正して大幅営業増益予想としている。ネット型リユース事業の仕入・販売が好調に推移して粗利率が上昇傾向であることに加え、本社移転費用の一部の計上時期が25年6月期にズレ込むことも寄与する見込みだ。積極的な事業展開で25年6月期も収益回復基調を期待したい。株価は4月の安値圏から反発し、さらに上方修正も好感して戻り歩調の形だ。上値を試す展開を期待したい。

■持続可能な社会を実現する最適化商社

 持続可能な社会を実現する最適化商社を目指し、ITとリアルを融合させたリユース事業を中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。

 23年6月期セグメント別売上構成比(調整前)はネット型リユース事業55%、メディア事業5%、モバイル通信事業40%、営業利益構成比(調整前)はネット型リユース事業27%、メディア事業36%、モバイル通信事業37%だった。23年6月期は全事業とも大幅増益だった。

 なお、大株主だったYJ1号投資事業組合から信託期間満了により保有株式売却の意向が寄せられたことに伴い、市場売却による株価形成への影響を避けるため、22年9月14日付でSBI証券と差金決済型自社株価先渡取引に係る契約を締結した。そして22年9月15日付の立会外終値取引(ToSTNeT―2)によって、YJ1号投資事業組合が保有していた同社株式40万株をSBI証券が取得した。今後の会計上の取り扱いとしては、各四半期末時点で時価評価を実施し、前四半期末との差額を営業外収益または費用に計上する。

■「高く売れるドットコム」と「おいくら」

 ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンターにおける買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。また「高く売れるドットコム」と日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」(19年2月に事業譲受)のシステム連携・送客も強化している。

 24年6月には、出張買取専門サービス「買いクル」などを展開するRCが「おいくら」がと業務提携し、「おいくら」加盟店舗数が66店舗増加した。

 リユースセンターについては、23年9月に広島リユースセンター、大阪リユースセンター東住吉店(大阪府内としては吹田市に続く2拠点目)を開設し、全国16拠点となった。

 24年3月には「Yahoo!オークション Best Store Awards 2023」において、家電部門、PC・スマホ部門、楽器・器材部門の3部門で部門賞1位を受賞し、約2万ストアの中から総合賞4位に選出された。

 地域社会における課題解決を目的として地方自治体との取り組みを推進し、リユースプラットフォーム「おいくら」を導入した自治体の不用品リユース事業は24年1月に福島県伊達市、茨城県龍ケ崎市、三重県亀山市、宮崎県宮崎市、岐阜県可児市、福島県南相馬市、24年2月に愛知県豊明市、島根県江津市、静岡県焼津市、千葉県柏市、神奈川県小田原市、愛知県長久手市、千葉県千葉市、福島県会津若松市、24年3月に東京都大田区、栃木県栃木市、兵庫県伊丹市、兵庫県加古川市、神奈川県横須賀市、茨城県笠間市、茨城県下妻市、静岡県島田市、鹿児島県曽於市、東京都町田市、埼玉県入間市、24年4月に愛知県北名古屋市、愛知県江南市、佐賀県唐津市、高知県いの町、福岡県春日市、奈良県北葛城郡広陵町、広島県三原市、24年5月に静岡県三島市、新潟県長岡市、愛知県新城市、埼玉県和光市、岐阜県瑞浪市、24年6月に千葉県鎌ケ谷市、茨城県築西市、鹿児島県霧島市、山形県東田川郡三川町で導入され、導入自治体が全国で135となった。また24年2月には茨城県県西8市と包括連携協定を締結した。

■中古農機具

 中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材の取り扱いを拡大している。子会社MEトレーディングは20年5月に中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。

 21年10月にマシナリー(中古農機具)ビジネス加速に向けて北関東リユースセンター(茨城県結城市)を開設、21年11月に北関東リユースセンターから中古農機具のEU向け輸出を開始し、中古農機具の取扱量拡大・EUへの輸出強化、拠点での対面販売による新規就農者支援などを推進している。22年4月にはファーマリーが展開する中古農機具の買取・販売事業を譲り受けた。

 なお販売商流の多様化を目指し、カーチスホールディングス<7602>のグループ会社で中古車輸出のアガスタと業務提携した。そして22年12月には、海外向け中古車販売サイト「PicknBuy24.com」を通じて、アフリカへの販路開拓を目的とした中古農機具のテスト販売を開始した。

 23年3月には就農者支援と新規就農促進を目的として中古農機具を用いたリユース連携を開始した。第1弾として福島市と連携した。中古農機具市場の活性化を促進することで、農業の観点からも持続可能な社会形成を目指すとしている。

■メディア事業とモバイル通信事業

 メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。

 モバイル通信関連のメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノ売却・処分関連のメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノ修理関連のメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」、農業に特化した「農業とつながる情報メディアUMM」などを運営している。

 なお「中古農機市場UMM」は、20年4月設立した子会社UMMが、20年5月国内最大級のインターネット中古農機具売買事業「JUM全国中古農機市場」を譲り受け、20年6月に名称を「中古農機市場UMM」に変更した。

 モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。23年2月には「カシモWiMAX」が、カカクコムの「価格.com」内の「モバイル回線プロバイダ 人気ランキング2022年」において、モバイルルーター部門・ホームルータ部門でともに年間1位となり、総合ランキング1位を獲得した。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を公表(21年12月24日付で提出、23年9月29日付で更新)した。中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

 24年3月18日には23年12月末時点での計画進捗状況を公表した。1日平均売買代金については基準に適合したが、流通株式時価総額については基準を充たしていないため、引き続き、中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。

 なお中期経営計画については、23年6月期の業績を踏まえて、23年8月14日付で新3カ年中期経営計画(ローリング方式により見直し、24年6月期~26年6月期)を公表した。そして目標値に26年6月期売上高300億円、営業利益20億円を掲げた。主に個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。

■24年6月期大幅営業増益予想、25年6月期収益回復期待

 24年6月期連結業績予想(2月14日付で下方修正、5月14日付で各利益を上方修正、6月14日付で売上高・利益とも上方修正)は、売上高が185億円(23年6月期は152億57百万円)、営業利益が2億50百万円(同94百万円)、経常利益が55百万円の損失(同2億78百万円)、親会社株主帰属当期純利益が5億20百万円の損失(同2億90百万円)としている。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比18.8%増の132億58百万円、営業利益が169.1%増の1億06百万円、経常利益が2億27百万円の損失(前年同期は89百万円の利益)、親会社株主帰属四半期純利益が6億51百万円の損失(同1億06百万円の損失)だった。

 営業外費用でのデリバティブ評価損(SBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約に基づくデリバティブ評価損益)2億79百万円の計上や、特別損失での減損損失1億90百万円計上により経常・最終赤字だったが、売上面は個人リユース事業などが牽引して2桁増収となり、営業利益は成長投資を増収効果で吸収して大幅増益だった。

 なお営業利益+66百万円の増減分析は、増益要因として増収要因+7億79百万円、減益要因として人件費・採用費増加▲3億71百万円、拠点関連費用増加▲1億16百万円、粗利益率低下▲1億10百万円、その他販管費の増加(業容拡大に伴う荷造運賃・販売手数料等の増加)▲1億15百万円だった。

 ネット型リユース事業は売上高が29.1%増の79億21百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が64.8%増の3億57百万円だった。売上面は個人向けリユース、マシナリー(農機具)、おいくらとも好調に推移し、利益面では第2四半期以降の生産性向上策も寄与した。

 メディア事業は売上高が11.9%減の5億06百万円、利益が21.1%減の2億60百万円だった。Google社が実施した検索エンジンにおけるコアアルゴリズム変更の影響を受けて減収減益だった。ただし第3四半期は回復傾向となった。

 モバイル通信事業は売上高が7.5%増の48億81百万円、利益が16.8%増の3億12百万円だった。新規回線の獲得数が順調に推移した。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が41億06百万円で営業利益が1億54百万円の損失、第2四半期は売上高が44億20百万円で営業利益が1億13百万円、第3四半期は売上高が47億32百万円で営業利益が1億47百万円だった。新規拠点開設などの先行投資をこなしながら、第2四半期および第3四半期の営業損益が改善した。

 通期は前回予想(24年5月14日付の修正値、売上高180億円、営業利益1億80百万円、経常利益1億円の損失、親会社株主帰属当期純利益5億40百万円の損失)に対して、売上高を5億円、営業利益を70百万円、経常利益を45百万円、親会社株主帰属当期純利益を20百万円、それぞれ上方修正した。

 売上面はネット型リユース事業(個人向けリユース分野)の仕入・販売が好調に推移し、モバイル通信事業も需要期の動きを適切に捉えて販売が順調に推移している。利益面はネット型リユース事業の粗利率が買取チャネル最適化策や生産性向上の効果などで上昇傾向であることに加え、本社移転費用の一部の計上時期が25年6月期にズレ込むことも寄与する見込みだ。なお営業外費用でのデリバティブ評価損(SBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約に基づくデリバティブ評価損益)については、第3四半期累計で計上した2億79百万円と同額の想定としている。積極的な事業展開で25年6月期も収益回復基調を期待したい。

■株主優待制度を新設、24年6月末から実施

 5月14日に株主優待制度の新設(詳細は会社HP参照)を発表した。毎年6月末時点で1単元(100株)以上保有株主を対象として、500円分のクオ・カードを進呈する。24年6月末対象から実施する。

■株価は戻り歩調

 株価は4月の安値圏から反発し、さらに上方修正も好感して戻り歩調の形だ。上値を試す展開を期待したい。6月20日の終値は957円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS253円92銭で算出)は約3.8倍、そして時価総額は約51億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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