日本ヒューム Research Memo(10):重点戦略の進捗は順調
2024年6月21日 13:50
*13:50JST 日本ヒューム Research Memo(10):重点戦略の進捗は順調
■日本ヒューム<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0526200?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><5262></a>の成長戦略
2. 重点戦略と進捗状況
(1) 部門別戦略
経営基盤に係る部門別戦略(200年企業に向かうための構造改革)として、営業部門ではマーケティング部門への新化を目指し、組織営業体制強化や情報化武装強化を推進する。技術部門では新たな事業創出も目指し、設計提案営業力強化、事業開発体制強化、BIM/CIMを推進する。技術開発投資では既存技術の改良(地震時入孔側塊目地ずれシート工法、杭頭処理など)、基礎事業の新技術開発・実用化(新工法、ICTツール「Pile-ViMSys(R)」など)、プレキャスト製品の開発・事業化(超大型プレキャスト、「ウェルマン貯留槽(R)」など)、新技術・新製品の開発・事業化(3Dプリンター、低炭素型高機能コンクリート「e-CON(R)」、風力タワー部材など)を推進する。生産部門では環境対応製品増強に向けた設備投資、品質管理帳票電子化等による間接業務IT化推進、設備及び品質管理システム導入等による品質・安全強化を推進する。工事部門では人財育成や安全研修の充実等による安全・品質の強化、採用強化や多能工化の推進によるプレキャスト工事体制の確立、ICT施工管理装置のプレキャスト工事への拡張を推進する。管理部門ではトップによる組織・企業文化の「継承と新化」や新人事制度(2023年4月スタート)等による人財戦略強化、システム導入支援などIT戦略の強化、投資家との対話充実等によるIR戦略強化を推進する。
計画1年目の部門別戦略の進捗状況として、営業部門ではCRM(顧客管理システム)を2023年7月に導入し、2023年12月に本運用開始した。そして2025年3月期はCRMツールの活用により、全部門が有機的につながる組織営業体制の構築を推進する。技術部門では設計提案営業力強化に向けて、PCウェル工法設計ソフトの改良により1件当たり作業時間80%削減の効率化を達成した。またプレキャスト製品の自動割付システムの開発に着手した。本社からの設計支援による各拠点における提案数については2024年3月期に37件を実施し、2025年3月期は60件を目標とする。技術開発投資では2024年3月期に「ViMSys Camera(R)」の開発、PCウェル工法設計ソフトの改良を行った。なお2023年10月には「ViMSys Camera(R)」が信憑性確認及び小黒板情報連携機能の認定を取得した。2025年3月期は創立100周年に向けた開発体制の構築、選択と集中による事業化の加速を推進する。杭頭処理工法の完了予定が2024年10月、杭新工法の完了予定が2024年9月としている。生産部門における環境対応投資としては、熊谷工場でカーボンニュートラル対応のガスボイラーによりCO2の30%削減(2022年3月期比)を達成した。工事部門では「Pile-ViMSys(R)」の全国展開を推進し、常時導入している14現場においては作業時間の61%削減を達成した。2025年3月期は「ViMSys Camera(R)」導入によりPCウェルの施工管理効率化を推進する。管理部門では、全拠点における車座会議開催などトップによる人財育成戦略を推進した。IR戦略強化では機関投資家向けIR面談の回数増加に加え、個人投資家向けIR戦略として株主還元を強化した。
(2) 事業別戦略
事業別の重点戦略としては、基礎事業では売価改善や大型案件の受注等により採算改善と安定化を目指し、同社が強みを持つ排出残土の少ない中堀工法の販売拡大、α値ダントツ化を目指した新工法の開発、ICTツール「Pile-ViMSys(R)」のさらなる改良による施工効率化、コスト増に対する価格転嫁継続、再開発や大型工場など大型案件の確実な取り込みなどを推進する。こうした重点戦略の成果により2024年3月期の営業利益率は前期比3.7ポイント上昇した。また新工法の開発は2024年9月完了の見込みとしている。さらに、ICTツール「Pile-ViMSys(R)」「ViMSys Camera(R)」のプレキャスト工事への適用範囲拡大を推進している。
下水道関連事業では、トータルソリューション増強を目指し、ヒューム管市場でのさらなるシェア拡大、耐震化や管路メンテナンスを軸とする下水道工事の提供エリア拡大、1〜6種にラインナップ拡充した合成鋼管の拡販、下水道工事における建設従事者の積極採用、低炭素型高機能コンクリート「e-CON(R)」の下水道管への普及などを推進する。2024年3月期は前期比で減収減益となったが、これは同社が得意とする雨水浸水対策工事の発注遅延、大型案件の遅延・中止の影響という一時的要因が主因であり、2025年3月期以降は雨水浸水対策工事の発注により大幅増益を予想している。
プレキャスト製品事業では、新たな成長ドライバーと位置付けるコンクリート製品テクノロジーによる高付加価値製品の増強を目指し、都市部再開発案件への「PCウェル」製品等の拡販、低炭素型高機能コンクリート「e-CON(R)」の事業化、道路分野での「EMC壁高欄」の拡販、生産性向上のBIM/CIM、技術開発強化による新製品開発などを推進する。
2024年3月期時点の進捗状況として、「PCウェル」については道路から鉄道やモノレールなどへ用途の拡大を図り、広島県ペデストリアンデッキでの継続採用、大阪モノレール延伸事業での新規採用が決定した。そして2025年3月期の売上高は前期比10%増を見込んでいる。インフラ老朽化対策の下水処理場・ポンプ場更新ソリューションでは、水中施工によるプレキャストコンクリート製隔壁の設置を提案して採用された。プレキャスト製品「バルブボックス」の売上高は2025年3月期に前期比20%増、3年後に100基5億円を目指す。道路用プレキャスト製品は、プレキャストガードフェンスやプレキャスト壁高欄の売上高が2024年3月期に前期比1.6倍に伸長した。3Dプリンティングの導入については、熊谷工場において実製品の製造及び出荷を開始した。「e-CON(R)」については、国土交通省港湾工事において海洋構造物として採用された。重点戦略の進捗状況はおおむね順調と弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)《SO》