テラスカイ Research Memo(7):ソリューション事業は増収増益、製品事業は損失が継続(1)
2024年6月20日 15:07
*15:07JST テラスカイ Research Memo(7):ソリューション事業は増収増益、製品事業は損失が継続(1)
■テラスカイ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0391500?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><3915></a>の業績動向
2. 事業セグメント別の動向
(1) ソリューション事業
ソリューション事業の売上高は前期比25.2%増の17,643百万円、セグメント利益(営業利益)は同6.6%増の2,074百万円と過去最高を更新した。売上高は、Salesforceを中心としたクラウドサービスの導入開発案件や、BeeXが手掛けるSAPのクラウド移行案件の需要が旺盛だったこと、またテラスカイ・テクノロジーズの派遣事業も未経験者の採用・育成が進み、人員が前期末の195名から320名と1.6倍となり売上増に貢献した。派遣人員の稼働率も9割超とほぼフル稼働に近い状況となっている。利益面では、QuemixやTerraSky(Thailand)の事業立ち上がりが遅れていることや、人件費負担の上昇(新卒社員の増加による未稼働人件費の増加)、不採算案件の発生、サテライトオフィス(秋田市、松江市)開設※のための先行投資費用の計上、相対的に利益率の低い人材派遣事業の成長などにより利益率は前期の13.8%から11.8%に低下したものの、増収効果により増益を確保した。
※秋田オフィスは2024年3月より数名で稼働を開始、2030年に30名体制とする予定。松江オフィスは2024年9月より数名で稼働を開始し、2026年に15名体制とする予定。いずれも自治体と立地協定を締結し進出した。サテライトオフィスは2017年に新潟県上越市に開設しており、合計3拠点となる。
Salesforce関連については、業種・地域を問わず新規顧客だけでなく既存顧客の追加開発案件の引き合いも活発な状況が続いており、売上成長は人的リソースに依存する状況が続いている。競合企業も増えているが、同社が主戦場とする大企業向けに関しては、顧客の多様かつ高度な要望に応えるだけの豊富な知見やノウハウが必要とされるため、同社を含めて対応できる企業は限られており、脅威にはなっていないようだ。
また、同社はSalesforce関連のソリューション力強化のため、提携戦略も積極的に取り組んでいる。2023年6月にはFlosum Corporation.(米国)と「Flosum※1」の国内における独占販売契約を締結した。リセラーパートナー企業を募集して販売経路を拡大するほか、マニュアルやFAQなどを充実させたFlosumWEBサイト「サクセスポータル」の開設、Flosumユーザーコミュニティの立ち上げを進め、3年後に導入社数100社を目標としている。2024年2月にはHardHat Ltd.(オーストラリア)と国内初のインプリパートナー契約を締結し、建設業界向け「HardHat※2」ソリューションの導入プロジェクトに関するパートナーシップについて合意した。今後国内でSalesforceを導入している建設会社向けに共同で営業活動を進めていく。いずれも当面の業績への影響は軽微と見られるが、多様な製品を揃えてソリューション力を強化することがSalesforce分野における競争力維持につながるものと見られる。
※1 「Flosum」はSalesforceのリリース管理やCI(継続的インテグレーション)の運用を効率化するアプリケーションで、Salesforceのリリースやバージョン管理など、開発者・システム担当者にとって負担が大きい作業工数を削減し、Salesforceの活用や内製化を推進する企業に採用されている。
※2 「HardHat」はゼネコンやサブコン向けに開発されたSalesforce AppExchangeで、プロジェクトライフサイクル全体の業務を合理化し、建設プロジェクトの効率性、安全性、収益性の向上を支援する。
子会社の動向について見ると、テラスカイ・テクノロジーズはSalesforce専門人材(主にシステム運用管理者)の派遣ニーズが旺盛でほぼフル稼働状態となっており、設立3年目で黒字化を達成した。業容拡大のため2023年10月よりAWSの専門人材の派遣サービスも開始しており、2026年には100名体制に増強し、売上高で10億円を目標としている。GCPの構築やビッグデータ分析・AIコンサルティングサービスなどを展開するリベルスカイは、2024年2月期末の人員が20名程度とまだ少ないものの需要は旺盛で増収増益となった。今後は人的リソースの拡大が成長の鍵を握ると見られる。
SalesforceのMAツールの導入・運用・定着化支援を行うDiceWorksについては、同社の顧客先に対して営業活動を行うと同時にSalesforceからの顧客紹介案件などもあり、順調に売上が拡大し営業利益も若干ながら黒字化した。従業員数は30名程度となっている。Cuonについては、不採算案件が発生した影響により減収減益となったが、同要因を除けば順調で2023年8月より「生成AI導入支援サービス」を開始したほか、2024年1月よりオープンソースのeコマースプラットフォーム「Spree Commerce」を基盤としたECサイト構築・運用保守サービス「ECO (EC Optimization)」を開始した。迅速なサービス立ち上げと、カスタマイズ機能などの拡張性に優れているのが特徴で、ECサイトの機能を拡充しながら長期運用を考えている顧客向けに拡販を目指している。
量子コンピュータ関連のアルゴリズムやソフトウェアの研究開発を行うQuemixでは、ライセンスビジネスや企業との共同研究を進めているがまだ先行投資段階であり、収益化を実現するビジネスモデルの確立が当面の目標となっている。2024年4月にはCEOの松下氏が東京大学大学院理学系研究科物理学専攻特任准教授に就任し、開発拠点を東京大学に移転したことから、今後の研究開発の加速や企業との共同研究プロジェクトの増加が期待される。
タイの子会社については2019年に設立以降、コロナ禍で休眠状態であったが、2022年夏から事業活動を開始し、現在はエンジニア数名体制で、Salesforceの現地子会社と協業して営業活動を進めている段階にある。ただ、人材の採用が想定よりも進まず、2024年2月期も損失を計上した。今後は人員の増強に加えて資本業務提携先のNTTデータとも協業しながら収益化を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)《HN》