パパネッツ Research Memo(7):「建物定期巡回サービス」が引き続き堅調に推移(2)

2024年6月18日 15:07

*15:07JST パパネッツ Research Memo(7):「建物定期巡回サービス」が引き続き堅調に推移(2)
■今後の見通し

3. 同社の成長可能性について
パパネッツ<a href="https://web.fisco.jp/platform/companies/0938800?fm=mj" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><9388></a>は、成長可能性の高い事業は「管理会社サポート事業」であると認識している。

(1) 市場について
「建物定期巡回サービス」の対象となる民営賃貸住宅総戸数は総務省「平成30年住宅・土地統計調査」(2018年)によると15,295,000戸となっている。そのうち、同社「建物定期巡回サービス」の提供戸数は2022年2月期117,170戸、2023年2月期112,360戸となっている。2023年2月期では民営賃貸住宅総戸数15,295,000戸(2018年末時点)の0.76%に過ぎず、同社の開拓余地は充分にあると弊社では考えている。また、前述した賃貸住宅管理業法も追い風になると考えられる。

「レンタルコンテナ点検サービス」では、2020年のトランクルームの市場規模について、同社提供資料によると2008年比2.4倍増の670億円に成長し、2026年には1,000億円規模の市場拡大が見込まれる。また、約20年前と比べ1戸当たりの居住面積は15m2以上も減少したことが示されている。住宅の狭小化が進み、都市部を中心にトランクルームの需要は不透明な経済状況においても力強く、新たな生活様式に即した多様なニーズも生まれつつあることから今後も成長が見込まれる。

「マンスリーマンションサポートサービス」は、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト(日本版O-NET)「jobtag」の「客室清掃・整備担当(ホテル・旅館)」に掲載されているハローワーク求人統計データによると、2021年度の客室清掃の有効求人倍率は1.5倍だった。有効求人倍率は「求人数÷求職者数」から算出されるため、有効求人倍率が1.5倍の場合は求人数が100件のところ求職者数が66人程度しかいない計算になり、44件は募集しても求職者が来ないという状況が推測できる。人手不足の原因としては労働人口の減少、労働環境問題等が考えられる。利用者が類似するマンスリーマンション管理会社においても同様のことが想定され、清掃業務の外注はさらに進むものと考えられる。コロナ禍が一服し、留学生が戻ってくるなどのインバウンド需要拡大も併せて勘案すると、マンスリーマンションサポートサービスは発展するものと同社は考えている。

(2) 同社の取り組みについて
同社は管理会社サポート事業として、「建物定期巡回サービス」「トランクコンテナ点検サービス」「マンスリーマンションサポートサービス」の3サービスにおいて、独自の不動産巡回点検報告書システムである「じゅん君」を開発・活用し、サービスを提供している。自社物件のためのソフトウェアは他社でも活用している例はあるが、管理会社向けに管理ソフトを提供しているのは同社だけであるという。

現在「じゅん君」により、不動産管理会社への定期巡回サービスを提供しているが、長期的にはコインパーキング業者、コインランドリー業者、洗車場業者、太陽光発電業者等の不動産活用業者へ定期巡回サービスを直接展開することで、利益率の向上及び市場の拡大を目論んでいる。近年は、個人所有の不動産について定期巡回の依頼が増加していることから、クライアントの裾野を広げることにより、管理会社サポート事業の規模を拡大することで、今後の成長の加速が期待される。

4. 中期事業計画の経営指標
同社は、中期事業計画において2024年2月期~2026年2月期までの売上高と営業利益の計画を示している。計画では、2024年2月期以降は毎期10%以上の成長を目指している。2024年2月期は売上高で計画値4,373百万円に対し4,491百万円を、営業利益で計画値339百万円に対し337百万円をそれぞれ計上した。加えて、12.1%の売上高成長率と14.9%の営業利益成長率を達成し、着実に成長している。2025年2月期と2026年2月期の売上高と営業利益も順調に成長する予測で、2025年2月期は売上高5,004百万円、営業利益355百万円、2026年2月期は売上高5,500百万円、営業利益400百万円を見込んでいる。

この持続的な成長は、内部の効率化と外部環境への適応能力に大きく依存する。営業利益の高成長は、コスト管理の優れた実行と収益性の高い事業戦略を示す一方で、市場動向や消費者の行動の変化、競合の戦略に注目し、戦略の柔軟な調整が求められると見られる。為替変動や国際情勢の不確実性、コロナ禍のような健康危機の長期的な影響も、今後のリスク要因として挙げられる。同社は外部の変動要因に警戒しつつ内部の効率化を進めることにより、中期事業計画における成長軌道に沿った計画達成が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)《HN》

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